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『アオイちゃんゲームはーじまーるよー♪』


 『はーい♪みんな注目っ!アオイちゃんだよー☆』


 『ちなみに、馬鹿みたいに弱いモブキャラのみなさんには退場していただきましたー♪パチパチ☆』


 


 「おかぁさん!」


 テントから飛び出してきたユキは、ステージ上に現れたアオイへと駆け寄ろうとする。

 だが――。


 「ユキ……!」


 隣にいたキールが、その腕をつかんで止める。


 「どうして止めるんです!やっとおかぁさんに――」


 


 アオイがマイクを口元へ寄せ、囁くように言った。


 『……眠れ』


 


 次の瞬間。

 ユキは電源が落ちた人形のように、その場で前のめりに倒れ込む。


 「ユキ!」


 『安心して♪眠ってるだけよ?』


 キールが慌てて抱きかかえ、呼吸を確かめる。確かに息はあった。

 だが――。


 『え、ほんとに安心しちゃったの?かわいいなぁ。私が“眠れ”って言ったんだから、つまり“起きろ”って言わないと、永遠にそのままなんだけど?』


 「っ……!」


 『何?言わないと気づかないの?馬鹿なの?死ぬの?』


 


 キールは無視して【武器召喚】を試みる。

 しかし――。


 「なっ!?」


 盾は、現れなかった。


 『アハハ!もしかして《目撃護》で解こうとした?でもざーんねーん、盾出なかったね?キャハハッ!こういう時って、なんて言うんだっけ?あ、そうそう!』


 マイクを通した甲高い声が、場内に響く。


 『ねぇ!今どんな気持ち?ねぇ今どんな気持ち?』


 「貴様ぁ!」


 怒鳴るキール。だが攻撃には移らない。

 理解している――今、この空間を支配しているのはアオイであると。


 


 『はい、みんなお察しの通り!今のアオイちゃんはアオイちゃんであって、アオイちゃんじゃありませーん☆じゃぁどこからでしょ〜う♪』


 「……!」


 『正解は――魔神を殺したあの時からでーす♪』


 ヒロユキの顔が険しくなる。


 『そうそう。あの時からもう“別人”だったの。アオイちゃんの真似、上手かったでしょ?あはっ。気付かなかったなんて残念☆ でも安心して?そこの無能な【神の使徒】達すら分かんなかったんだから』


 


 その言葉に、ルコサが苦笑する。


 「いやぁ、やられたね。キーくんの件といい……まさか君がそこまで力を持っていたとは」


 『ふふっ、褒めても何も出ないよ?ぐーたらめんどくさがり男さん♪ ――ただ、完璧な私を見抜いた人が一人、この中に居たみたいだけどね』


 アオイは、まだ信じられないという顔のリュウトに視線を送る。

 そして――声を張った。


 


 『さて。わたしが正体を明かした理由はひとつ。……そろそろ、白黒つけようかと思ってね?』


 「へぇ……やっぱり君は『そっち』側に付いたのか」


 『……』


 「?」


 『まあ、どう思っててもいいよ。どのみち結果は変わらない。だって私ひとりで、あなた達全員殺せるんだもん♪ ……でも、それじゃあつまらないでしょ?』


 


 そう言ってアオイは、舞台に巨大な映像を投影する。

 ピンクのポップな文字が踊った。


 


 《アオイちゃんげーむ☆》


 


 『名付けて!アオイちゃんげーむ!パチパチパチパチ♪』


 アオイだけの拍手が会場にこだまする。


 


 『ルールは簡単!今からみんなを完全回復させてあげるね。その後、わたしが用意したステージに転移させる。そこで用意した敵を倒せたら君たちの勝ち! もちろん、最後には私自身も含まれるけどね? ただし――私は最後の最後、残った人の中から抽選で一人だけと戦いまーす☆』


 


 「……」


 『異論はないみたいね?あ、そうそう!一応言っとくけど、いま会話できるのは“わたしが許可した人だけ”だからね♪ フフッ』


 


 気づけば、誰も声を発していなかった。

 それは魔法でも魔術でもない、呪いに近い強制力。


 


 『じゃ、みんな――がんばってね?』


 


 その瞬間、全員の足元にピンクの魔法陣が展開され、光と共に姿を消す。


 


 ……誰もいなくなった舞台の中央で。

 アオイは、さきほどまでのアイドル笑顔を消し去り、ぽつりと呟いた。


 


 『……また、食べなきゃいけないのか。……飽きたな』






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