表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
525/644

【神殺の毒】

 

 「ぐ、ぁ……」


 魔神の手から剣が滑り落ち、ガランガランと乾いた音が響く。


 「これは……」


 魔神の胸には、小さな針が突き刺さっていた。


 「【神殺の毒】……私が作れる毒の中でも、最も強力で残酷な毒よ」


 「貴様……」


 声のした方から現れたのは『みや』。かつて魔王であったが、今はリュウトの仲間として共に戦う存在だ。


 「が、は……」


 魔神が膝をつく。


 「なるほど……最初からこれが目的……」


 リュウトは、みやに肩を貸されながら、その言葉を否定する。


 「いや、これは最終手段だ。俺はこの毒に頼らず、お前を倒すつもりで全力を出していた……だが、敵わなかった。完敗だ」


 「ぐ……」


 「こんな形で決着をつけてしまってすまない。だが俺も……負けるわけにはいかなかった。どんな手を使ってでも」


 「貴様はそれでも!」


 「……あぁ、今日限りで【勇者】を名乗るのはやめる。元々、俺には大層すぎる肩書きだった」


 「っ!!!」


 リュウトとみやは、ヒロユキの元へ歩み去る。


 「ぐ、がぁぁぁぁあ! ぁぁぁああ!」


 魔神を襲う激痛――魂がヤスリで削られるような拷問。

 肉体を変えれば耐えられるというものではない。脳と心臓に負荷がかかり、全身が痙攣する。

 思考は霧散し、視界は真っ白に染まっていく__


 「こんな……! こんな事でぇっ!」


 魔神の身体が見るも無惨に溶け始める。


 「ぐわぁぁぁあ! あ! あ! ぁぁぁああ!」


 魔神は身体を変える――だがすぐに同じ症状が再発し、また変える。


 「バカな!我が……! こんな……!」


 毒は魂に作用している。

 身体を変えた所で意味がないのだ____


 右から断末魔が響いては消え、左からも悲鳴が響き、四方八方に現れては苦悶し続ける魔神の姿が見える。


 「……」


 「これが……【神殺の毒】……」


 「うんっ……私の中にあった全ての毒を使った、究極の毒っ」


 「すまない……俺の力が足りなかった」


 「ううんっ、いいの」



 ふらつくリュウトの足に合わせ、三人は出口へと向かう。


 「がぁぁぁぁあ! あ! ぁぁあああああああああ!」


 背後で、なおも叫び続ける魔神。

 あまりにもおぞましい光景に、三人は振り返らず、背を向けた。




 だが――それは、誤りだった。


 見届けるべきだったのだ。

 魔神の“最後”を。




 ドンッ!


 みやは背中から、何者かに突き飛ばされた衝撃を受ける。


 「えっ……」


 「みや!?」


 「……!?」


 リュウトに肩を貸していたみやは、その勢いで前に倒れ込み、足腰の弱ったリュウトも一緒に崩れ落ちる。


 「あ……あれっ」


 ――みやの背中には、“魔神の大剣”が深々と突き刺さっていた。


 


 「【目撃封】……寄越せ! 貴様の力を!」



 大剣が禍々しく光を放ち、みやの魔眼の力が封印された。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ