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魔王の力!

 「ほう……」


 魔神は腕を失った痛みなど意にも介さず、一歩、二歩と後退し距離を取った。


 「今だ! ランス!」


 その一瞬の隙を見逃さず、リュウトは手を伸ばし、黄金の槍を呼び戻す。


 「なるほど……世界の理に干渉する力――魔王の力か」


 切断されたはずの魔神の腕が、淡い紫の光を帯びて再び形を成した。


 「ヒロユキ! もう一回行くぞ!」


 「あぁ」


 掛け声と同時に、ヒロユキの姿が空気に溶けるように消えた。

 リュウトは一直線にランスを構え、魔神へと突進する。


 「はぁぁぁぁぁあ!」


 「……」


 ランスが閃光のように突き出される。だが魔神はそれを見切り、最小限の動きで右に、左にと滑るようにかわす。


 「どうした! 避けるだけじゃダメだと言ったのはそっちだぞ!」


 「そうだが?」


 「はん! この状況もわかってないのか?」


 リュウトは攻撃の手を緩めない。だが、魔神の瞳には余裕が宿っていた。


 「状況……? それはどれだ? 貴様が囮となり、幻覚で姿を隠した仲間が我の隙を狙っていることか?

 それとも――貴様が自分の攻撃が通っていると“錯覚”していることか?」


 次の瞬間、魔神は再生した装備のない腕を差し出し、指二本だけでランスの穂先を止めた。


 「なっ!?」


 「貴様の武器はランス。突きが届いた瞬間に発動する性質……ならば、このように先端を押さえれば――ただの棒だ」


 「くっ!」


 リュウトは全力で引き戻そうとするが、ランスはびくともしない。


 「貴様の武器は、相手が大きければ強い。だが――小さければ小さいほど、致命を与えるのは難しい」


 魔神は口の端を吊り上げ、そのままリュウトをランスごと蹴り飛ばした。


 「ぐぁっ!」


 「そして――隠れていても、我が隙を見せねばお前は動けん。……お前の言う状況を説明してやったぞ」


 「はは……こりゃ困ったな……全部お見通しってわけか!」


 リュウトはランスを魔神に向けて投げ放ち、そのまま全力で突撃する。


 「今度は何を見せてくれる?」


 飛来するランスを魔神は半歩でかわす。

 槍は背後の支柱を貫通し、真っ直ぐと飛んでいく。


 「はぁぁぁあ!」


 ランスを投げたと同時に走り出していたリュウトは、その瞳に【キャンサーの紋章】が浮かび上げ、両手が巨大な鋏へと変化させた。



 そのまま刺股の様に使い魔神の腰を挟み込み動きを止めた!


 「今度はキャンサーか」


 「どこまで余裕が持つかな!」


 リュウトの片目に【サジタリウスの紋章】が輝く。


 「……!」


 遠くに逸れていたランスが、まるで呼び戻されるかのように軌道を変え、180度振り向きそのままの勢いで迫ってくる。


 「お前を倒せるのは、この武器だけなんだよな!」


 「これではお前も死ぬぞ?」


 「――魔神を倒せるなら本望だ!」


 次の瞬間、黄金の穂先が魔神の背を貫き、その先のリュウトも貫通した。


 「……」


 「……」


 「ガハッ……!」


 魔神の胸には、大きく穿たれた風穴が空く。

 しかし同時に貫かれたはずのリュウトの身体は、水飛沫のように崩れ、再び人の形へと収束していった。


 【ピスケスの紋章】――大量の魔力を代償に、身体を液体化する能力。

 リュウトは槍が自分を貫く瞬間、それを発動させたのだ。


 「はぁ……はぁ……ヒロユキ!」


 「……任せろ」


 幻覚の中から姿を現したヒロユキが、日本刀を抜く。

 斬撃が魔神を襲い、その巨体は無数のブロック状に切り刻まれていった。


 「…………」


 「…………」


 「……終わった、か?」


 足元に広がるのは、血の溜まりだけ。


 「……手応えはあった。だが……」


 「あぁ……なんだ、この胸騒ぎは」


 二人の背筋を冷たい悪寒が走る。


 ――そして、それは的中した。


 「____ほう、気付いたか」


 「!!」


 支柱の影から現れたのは、先ほど倒したはずの魔神。

 血に濡れるはずの身体は、まるで初めから傷などなかったかのように無傷だった。


 「いい顔だ……その表情、もっと見せろ。お前たちに――さらに深い絶望を与えてやろう」




  

 


 

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