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タナトス

 《リュウトパーティー》


 そのまま目的地――王国会議の舞台、魔神城へ。

 リュウトたちは敵を倒しながら進軍を続けていた。


 「……!」


 ただならぬ気配に、全員の足が同時に止まる。


 「リュウトっ」


 「あぁ……やっぱり一筋縄では行かないみたいだな」


 ウッドリーワンドが、まるで誰かの指示を受けたかのように広がり、枝を絡ませながらバトルステージを形作っていく。


 そして、その中心に――それはいた。


 「フシュルルルルルル……」


 異様に伸びた後頭部は、骨そのものが外へ突き出したかのように滑らかで冷たい光を帯びている。

 口元には、人間に酷似しながらも噛み砕くためだけに研がれた歯列が並び、長くしなやかな腕の先には、岩すら抉れそうな黒い鉤爪。

 腰の後ろから伸びる細長い尾は鋭く尖ってる。


 「……エイリアン?」


 「なんですか? リュウトさん、その“エイリアン”って」


 「いや、前の世界で有名だった……モンスターの名前だ」


 「なら大丈夫じゃないですか? 知ってる敵ってことですよね?」


 「そうだけど……そうじゃない」


 「?」


 「うまく言えないが……ざっくり言えば、こっちでいうクリスタルドラゴンみたいな存在だ。本当にいるとは思えない、伝説クラスの怪物」


 「なるほど……異世界版のクリスタルドラゴン、ってわけですか」


 「そう呼ぶとちょっと違和感あるがな……みや、どうだ?」


 「うん。種族名は《タナトス》。毒の弱点はなし、再生能力もなし……でも、弱点は“高熱”だよ」


 「そこも同じなのか」


 「どうしてアイツは繋がれてるのでしょうか」


 アカネの疑問に答えたのはアンナだった。


 「周囲のウッドリーワンドの反応といい、他に敵が居ないことを考えると……答えはひとつ。あの魔物は、他と違ってコントロールできない」


 そう言い終えた瞬間――タナトスを拘束していた魔法が解かれる。


 「っ! はや――」


 自由になったタナトスは驚異的な速度でリュウトへ突進。

 反応が遅れたリュウトは後方へ弾き飛ばされ、背中をウッドリーワンドに強打した。


 「ガハッ!」


 「「「リュウト!」」」


 「フシャーー!」


 助けに向かおうとしたその隙を逃さず、タナトスは戦闘力の低いアンナに飛びかかり、両腕を押さえつける。


 「アンナさん! くっ! はぁぁぁあっ!」


 リュウトを助けるべきか、一瞬迷ったアカネは、危険な状況のアンナ救出を優先。だが――


 「シャーー!」


 「っ!」


 鋭い尻尾がアカネの肩を貫いた!


 「くっ!」


 アカネは反射的に尻尾を掴む。


 「みやさん!」


 「【ウォータースラッシュ】っ!」


 上空から放たれた水刃がタナトスの尻尾を叩くが、切り裂くには至らない。


 「っ!」


 「フシュルルルルルルルルル……」


 タナトスはアカネを突き刺したまま、何事もなかったかのように持ち上げ――上空のみやへ向かって投げつけた。


 「うあっ!」


 傷口を無理やり広げられ、肩から血を噴きながら飛ばされるアカネ。

 みやはその勢いを殺さずに受け止めたが、二人まとめて壁に叩きつけられ、地面に落ちた。


 「フシュルルルルルルルルル……」


 「ちょっと! 髪が土で汚れてる上に、そんなグロい顔を近づけないでよ!」


 「フシャーー!」


 「うわっ、涎ねっとり……うわ、もーうキモい!」


 「あーたんきーっく!」


 「シャ!?」


 アンナを襲おうとしていたタナトスは、“急にドームの外から現れた”アールラビッツモードのあーたんに不意を突かれ、横へ吹き飛んだ。


 「ナイスよ、あーたん。でも、もう少し早く来てほしかったわね」


 ウッドリーワンドの性質――中からは出られないが外からは入れる――を利用した不意打ち。

 アンナはその特性を読んで、あーたんに少し後方から接近するよう事前に指示していたのだ。


 「ごめんー」


 「さて、と……アカネ」


 アンナはその場でアカネの傷を癒やし、穴が空いた肩が完全に治った。


 「ありがとうございます、アンナさん」


 「いえいえ。……リュウトも、なーに寝てんのよ」


 そう言いながら、リュウトにも回復を施す。


 「すまない、油断した……みや」


 「ごめんねっ、追加で“魔法攻撃無効”ってのも出てきたっ。こいつも試したら『分析』が出てくるみたいっ」


 「みやの魔眼が使えない状況ってことは……こいつは魔王級って事か」


 「むぅ……使えなくて悪かったねーだっ」


 「フシュラルルルルル!」


 「相手もやる気満々だな」


 「私、グロテスクな見た目のモンスターは嫌いなのよね」


 「アカネを傷つけてタダでは済まさないっ!」


 「私もやられっぱなしで黙ってませんよ!」


 「あーたんもだまってないよー」


 「やってやるです!」


 「「「「ん?」」」」


 混じって聞こえてきたのは、小さな子の声だった。


 「ユキ!?」


 「どうしたんです? みんな驚いて」


 「どうしたんです、じゃない! お前、山亀の魔力補給係じゃ……」


 「あんな洞窟で黒い花を咲かせるだけの作業は嫌です! てことで、あーたんに連れてきてもらいましたです!」


 「あーたん、つれてきたー」


 「……それで私を助けるのに少し遅れたのね」


 「フシャーー!」


 ユキの登場に言いたいことは山ほどあったが、敵は待ってくれない。


 「来てしまったものは仕方ない! 行くぞ!」


 「はいです!」



 

 

 


 

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