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昼休憩

 午前中の競技も終わって、昼休み。

 俺はルカと人気のない屋上に並んで座り、風を感じながらお弁当を食べていた。


 ……と言っても、俺の箸はほとんど動かない。


 「ねぇ、ルカ」


 「ん? もぐもぐ……なんなのじゃ?」


 「……すひまるちゃんのこと、どう思う?」


 「む? あのぽっちゃりしてて美味しそうな娘なのじゃ?」


 「その“美味しそう”って表現はどうかと思うけど……まあ今は置いとくよ」


 ルカの言葉に、少しだけ肩の力が抜ける。

 でも聞きたかったのは、そういう意味じゃなくて――


 「で、どう思ってるの?」


 「どう、も何も……あやつが隣におるだけで害はないじゃろ? むしろ時々お菓子くれるし」


 「……そっか」


 俺は小さく頷いて、視線を落とす。


 「でも……なんだろう、僕たちって、クラスで特別扱いされてるような気がするんだよね」


 「ふむ? まあ……少し、浮いておるのは確かじゃな」


 「そう、良い意味で、だよね……実質悪いようには使われていない……でも、だからこそ、その奥で影が見えてなかったのかな」


 「のじゃ?」


 「きっと、みんなもそんなつもりは無いと思うんだけど、相手によっては嫌な気持ちのまま、我慢してるとか……」


 実際そうだろう。

 俺も中学で女性恐怖症になる程、女子にいじめられていた時、我慢しかなかった。


 自分が何かをすれば目立つし、そんなの嫌だから我慢。


 我慢我慢我慢我慢__そして、学校に来なくなった。

 

 「ふむ、だとしてもワシの知ったことじゃないのじゃ」


 「っ……」


 ……そうか。

 うん、そりゃそうだよな。

 “関係ない”――みんな、そう言うんだ。


 本当に“こっち側”に立ったことのない奴らは、それがどういう意味かも知らない。


 仲良くしてる他の子たちに嫌われたくないから、関わらない。

 正義感って何? 偽善だよ。

 関係がない? そもそも関わりのない奴? 知らない?


 ……は、笑わせんな。


 


 本当、くそくらえだ。


 


 言ってやりたい。


 「他のみんなから嫌われたくない?」

 ――大人になってわかるぞ。

 学生の頃のクラスメイトなんて、ほとんど二度と会わねぇよ。

 だったら、せめて一回くらい“誰かを助ける側”に立ってみろ。


 「偽善?」

 ――バカか、偽善でも“善”なんだよ。

 お前の中にあるその中途半端な正しさを、まず“行動”に移してみろや!


 


 ……っと。

 ちょっと熱くなりすぎた。

 ふぅ……感情が昇って、落ちて――賢者モード。


 「どうしたのじゃ?」


 「ま、まぁほら、まだ推測だしね……もしもそんな場面見たら教えて? 一応、僕クラス代表だから」


 「クラス代表も大変じゃのぅ」


 「まぁねぇ……」


 そう、実際いじめられてるのかなんて、まだわからない。

 けど、もしそうだったとしても――

 その場で「いじめよくないよ!」って言えなかったら、せめて遠回しにでも無くすように努力すればいい。


 だって、


 「……いじめは、一生の心の傷になるからな……」


 「む? 何か言ったのじゃ?」


 「いや! なんでもない! それより午後からの準備しよー!」


 「うむ、いよいよ午後はクラスごとの競技なのじゃ! 最初は……?」


 「えーっとね」


 俺は競技が書かれた魔皮紙を確認して、午後のプログラムを読み上げる。


 


 「《物運び》だね。じゃ、みんなと合流して、最後の打ち合わせしよーう!」







 





 

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