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人間嫌い!

 《世界樹 指令室》


 


 モニターに映るのは、目の前まで迫った“山亀”。


 


 だが――

 それが今、無数の【土塔】によって持ち上げられていた。


 


 「……見事じゃ」


 


 静かに、そして確かに、女王が呟いた。


 


 「山亀を持ち上げ、弱点である腹をさらけ出させるとはな……

  ――よし、【最終生命破壊砲】の準備はできておるか?」


 


 「はい!第10番隊から、発射準備完了の報告を受けております!」


 


 【最終生命破壊砲】――

 それは【零式対山亀砲】をベースに、人間共が魔法工学でいじくり回し、

 さらに強化された“超大型対魔獣兵装”である。


 


 今ごろ、第10番隊の隊長が待機し、

 後は発射用の魔皮紙に魔力を流し込むだけの状態のはずだ。


 


 「ところで――モニターの方は大丈夫なのじゃろうな?

  もう次はないぞ?」


 


 「はっ!全て回復済みです!」


 


 ……そう。

 あの時、“あの存在”が映った時――


 


 モニター全体が突如、ブラックアウトした。


 


 【零式対山亀砲】を発射し、結界を貫通し、直撃。

 確かに手応えはあった――が、その瞬間、すべての映像が途切れた。


 


 ――異常な現象だった。


 


 だが、復旧は完了した。

 そして、あの美しすぎる獣人の姿も、今はもうどこにも映っていない。


 


 ならば――“消えた”のだ。


 


 手応えは、あった。

 殺せた。確実に。


 


 であれば――


 


 あとは山亀を仕留めるだけ。


 


 


 ――これを撃って。


 


 すべてを、終わらせるのじゃ。


  「――発射せよ!」


 


 「了解ッ!! 10番隊、【最終生命破壊砲】、発射!!」


 


 ――しかし。


 


 魔法は、発射されなかった。


 


 


 「……どうした、10番隊隊長!?なぜ撃たぬ!!」


 


 {……私は――この魔法を発射したくありません!}


 


 「「「……!?」」」


 


 一瞬で、司令室の空気が凍りついた。


 


 「な、何を言うておる……!?

  準備は済んだのではなかったのか……気でも狂ったか!!」


 


 {女王様こそ……お気づきになっていないのですか!?

  この【最終生命破壊砲】は、“人間”の技術によって作られた兵器――

  もしこれで山亀を倒せば、手柄は人間共のものと化すのです!!

  ならば、我ら獣人だけの力で――}


 


 「愚か者がァア!!」


 


 声が響いた。

 ――いや、怒号だった。


 


 女王が、産まれて初めて見せたほどの激情で吠えた。


 


 「この状況が分からんのか!!

  今、山亀を逃がせば全てが終わるのじゃ!!

  貴様と討論しておる余裕など、どこにもない!!」


 


 {……ですが私は……どうしても撃てません……!!}


 


 {……10番隊の元隊長、“キング”様は――

  私を、奴隷商人から庇い、人間の手によって奴隷とされ……

  それでも、私を恨まず、助けてくれたのです。

  その恩を私は、どうしても裏切ることができない――!!}


 


 「黙れッ!! なぜ今さら貴様の昔話に付き合わねばならん!!」


 


 こいつは――正気か!?

 この土壇場で、何を言い出すんじゃ!!


 


 {……ならば、我ら10番隊はここにて――反乱を起こします。}


 


 


 「…………………………は?」










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