表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/644

ヒロユキパーティーの裏話!


 《ミクラルギルド・数時間前》


 


 ヒロユキが席を外していた間、

 ユキはたまこを人目のない場所に呼び出していた。


 


 「どうしたの~? こんな所に呼び出して~」


 


 口調はいつもどおり緩やか。

 けれどその目は、しっかりと“敵を見る目”になっていた。



 「すいません、たまこさん。お忙しい中……まずは、お礼を言わせてください。助けてくれて、ありがとうございました」


 


 「いいのよ~。……それだけの話なら、こんな場所に呼び出さないわよね~?」


 「えぇ、その通りですよ……【六英雄】のヒーラー担当のたまこさん。」


 「…………どうして知ってるのかしら。医者たちは、上手く記憶を消したはずなんだけど~?」


 


 「もしかして助けた人の誰かが、たまたま覚えてた……とか?」


 


 「そんな嘘が通じる相手だと思ってるの~?」


 


 ピッ、とたまこが指先を弾く。


 空中に魔方陣が展開される。それは攻撃の魔法ではない。

 記憶操作――医師たちにも使用した“情報隠蔽”用の術式。


 


 「……使わないんですか?」


 


 「…………」


 


 「私の身体、見ましたよね。訊きたいこと、あるはずです」


 


 「……そうね~……確かに。あなたの身体、複雑な魔方が何層にも絡み合って繋がってた。

 一度、自分自身が魔力に分解されて、もう一度再構築されたような……転送魔法の事故にでも遭ったのかしら?

 とにかく、“今の魔法理論”じゃ再現不可能な状態だったわ~。

 生きてるのが、そもそも“奇跡”。それを、私が治しきった……それだけでも異常なのよ~」


 


 「さすがですね。でも、それだけじゃありませんよね?」


 


 たまこの視線が鋭くなる。


 


 「……身体を治している時に、私の魔方の痕跡がいくつかあったの。しかもそれは“ごく最近の”ものだった……。つまり、あなたは――」


 


 「――そこまでです。

 いつ、どこで誰が聞いているかわかりませんから」


 


 「…………」


 


 「今は、全部を話すわけにはいきません。

 でも、これから先――私たちに付いてきてくれたら、きっと何か“思い出す”はずです」


 


 「……ふふ。勧誘かしら~?

 情報を渡す代わりに、私の力が欲しい~って?

 でも残念ね~。私の力はね、パーティー一つには“余りある”のよ?

 そこら辺のヒーラー拾ってきた方が、まだバランスは取れるかも~?」


 


 「……あなたの“想い人”が、このままでは死ぬとしたら?」


 


 「……っ!?」


 


 その一言で、たまこの表情が凍る。


 ――誰にも話したことのない、“大切な誰か”。


 


 「……その人、今どこにいるの……?」


 


 「さぁ、どうでしょうかね」


 


 「…………」


 


 ふたりの間に、長い沈黙が落ちる。

 どちらも簡単に“信じる”ようなタイプじゃない。

 それでも、どこかで――似た空気を感じ取っていた。


 


 やがて、たまこがゆっくりと口を開いた。


 


 「……いいわ~。乗ってあげる」


 


 魔方陣が消え、代わりに、たまこが手を差し出す。


 


 「交渉成立ですね」


 


 ユキもその手を握り返し、ふぅと息を吐いて汗をぬぐった。


 ――それほど、ユキにとってもこの話は“賭け”だったのだ。


 


 「では、ヒロユキさんを呼んで、どこか美味しいお店で話しましょう。

 今は若者の間で【ピコナッツミルク】が人気らしいですし!」


 


 ふたりの握手の余韻を残しながら――

 ユキはたまこを、正式に“パーティーメンバー”として迎え入れた。



 そして何も知らないヒロユキだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ