ユキ起床!
月も入れ替わり、太陽が顔を出す頃。
病院の周りは静かで、そして――少女は目を覚ました。
「……私は……助かった……?」
その問いに答える者はいない。
いや、“いない”というより――隣のイスで寝ていた。
「ヒロユキさん……」
ユキはヒロユキの寝顔を見て、ふっと安心する。
「ヒロユキさんが生きてるってことは、あの怪物をやっつけたんですね。……良かった」
「……ん」
「おはようございます、ヒロユキさん」
ユキはにっこりと笑顔を見せた。
だがヒロユキは、いつもの真顔のまま。
「……起きたか。待ってろ、今医者を呼んでくる」
「む。そこは安心して涙を流す場面じゃないですか?」
「……安心した」
「涙を流すってところはスルーですか……。
まぁ良いです。医者を呼ぶ前に、ヒロユキさん。上手く身体が動かないので……身体を起こしてもらっても良いですか?」
「……わかった」
ヒロユキはユキに近づき、身体を起こそうとした――その時。
ユキは、そっとその距離を詰め、ヒロユキの唇に――キスをした。
「____っ!?!?」
バッと勢いよくヒロユキは離れる。
その顔には珍しく動揺が走り、赤くなっていた。
「へへ。嘘ですよ♪ 身体は動きます」
「……ど、どういうつもりだ」
「ふふ♪ 女の子の気持ちも知らないヒロユキさんが悪いんです♪
減るもんじゃないし、良いじゃないですか~♪」
「……医者を呼んでくる」
「はい♪ 呼んできてください」