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狐は幻想の英雄でして  作者: 榛乃チハヤ
第一章 願いの欠片でして
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『願い』が乱れまして

ああもう滅茶苦茶だよ(呆れ)

 「みんな採掘ご苦労様、結果を見させてくれるかな」


 昼の十二時頃、採掘を終え昼食前。

 採掘した鉱石を選鉱場でトロッコから一気に落とす。

 目視でわかるのは輝銅鉱の割合が高いこと、辰砂が目立つこと、マニュアル外の灰重石が大量に採れたことである。

 ちなみに灰重石とは、タングステン酸塩鉱物である。硬い。硬いのだ。


 「タングステンが多い、か」


 「ボーナス! ボーナス!」


 「報酬は一人一万五千メイルだ、お疲れ様」


 「かなり多いな、鉄道買おうぜ」


 二人はボーナスを含めた報酬を受け取り、担当の人間と三人で配給された昼食を食べ始めた。


 「この鉱山のトロッコってケーブルで引っ張るんですね、僕初めて見ました」


 「ケーブルの巻き上げに使う動力はもちろん手製だがな」


 この時点でくれはが背後にウラン鉱石を隠しているのは言うまでもない。

 国王とは15時頃に再び会う約束をしている。

 どうやら家を確保してくれるらしい。


 「じゃあ、僕らは用事があるので失礼します」


 「ありがとうございました」


 「お疲れ様、また機会があったらよろしくね」


 二人は来た道を戻り、石造りの地下鉄駅舎に潜り込む。地下鉄という中に辛うじてある中世感。

 乗り場に滑り込んできた列車はかなり空いている。

 

 『この電車は ウィシュセントラ行きです』


 「くれは、国王と話してこの地下鉄貰おうぜ」


 「頭沸いてんの?」


 「いやだって――」


 「頭沸いてんの?」


 雪斗はここまで乗客が少ない現状を打開するために地下鉄を経営したいと思っている。

 鉄道制覇の第一歩である。

 出来るわけが――


 「まぁ話は国王に直談判してからだ」


 「事後に!?」


 さて。


 「で、地下鉄が欲しいと……」


 「はい! 資料によると営業距離は約十五キロ、全然複線だそうですね」


 「いっそ清々しいな」


 「頂けますか?」


 「只今を持って国営地下鉄ウィシュセントラ線を今市雪斗に譲渡する」


 「マジで二人とも頭沸いてるんですか?」


 ウランの時もそうだが都合が良すぎる。

 ああ、そっか。

 都合が良すぎるまでに『願い』を叶えやすくなってるのか。

 つまり、この都合のよさは『願い』を叶える狐様のお陰というわけか。

 狐マジ神。

 だから願っちゃえば何でもゲトれるわけだ。

 狐マジ神。


 「政策としてはまず現行の電車のリニューアルを行いまして続いて電車の運転間隔を六分おきにして利用しやすくしまして」


 「鉄道の話になると饒舌になるわね」


 「原子力の話になると饒舌になる理系お姉さんどうも」


 「えっと、要するに改革を行うわけです、後でウィシュセントラ駅で演説します、あと――」


 展開が早い。まだ一日も経ってないぞ。

 鉄道もいいが――


 「テンション上がり過ぎてて忘れてた」


 「なにを?」


 「願い、紅葉、原子力……忘れてた」


 資源争い。この異世界に連れて来られた俺ら。都合良く進むストーリー。


 「国王、資源争いって――」


 聞きたかったことをこの時に思い出せて本当に良かった。

 本当に良かった。

 『原子力発電所』を作りやすい環境がこの世界。

 「資源争いねぇ……」


 「『願い』は原子力発電所を作りたい、つまりここでは原子力発電所が作りやすい訳です、意味不明ですけど」


 「私もなんであの時原子力発電所作りたいって願ったか分からないですけど資源争いってなんですか、それによって私達がこの世界に来た理由が分かります」

 


 「原子番号九二番――」


 国王の返答は。


 「――ウラン」


 この世界ではやはり、中世なのにも関わらず、ごく小規模、攻撃などには使えないが魔法があるにも関わらず、原子力を理解する人間がいるということ。

 そして、このヴィシーズ帝国もその原子力エネルギーを獲得しようとしていること。


 そして――


 「ウランで何をするんですか」


 震える声で雪斗が聞く。

 雪斗には分かっていた。

 鉱山で採掘をしている途中に半分は分かっていた。

 

 「――少々、新しいモノを、ね」


 この国が作ろうとしている原子力エネルギーを活用するものが、原子力発電所以外にあるということ。


 史実では20世紀に入るまで存在しなかったはずの。


 「濁さないで言ってください、くれはの『願い』は原子力発電所だけだった筈なのにおかしい方向に進んでいます」


 『願い』はひとつ。つまり、それ以外は大きな出来事は発生しない筈であった。

 

 「申し訳ないが、国家機密なのでね」


 


 少量で足りる原子力発電所の燃料を集めるために、自国にあるウランを採掘する。

 それならわかるが、わざわざ他国に攻めるほど大量に必要なのは。

 そして、硬いタングステンだけがボーナス払いの対象になったのも。


 核爆弾を製造しようとしていることは、雪斗には容易に分かった。

長いだけしか取り柄がない()

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