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狐は幻想の英雄でして  作者: 榛乃チハヤ
北国行脚でして
22/25

日本人でして

 日本。つまり二人の異世界転移前にいた場所。

 この少女はその日本から、二人のように異世界転移したというわけだ。

 中世の、特にこの異世界では両親が亡い、あるいは失踪といったことで一人になってしまった子供が六割を占める状況で、多少は理解できた。

 しかし異世界から来たということには流石に驚きを隠せなかった、ただしそれはくれはだけである。


 雪斗はというと、なにか自信に満ちた表情でかざりに話しかける。


 「君、大阪人だよね」


 「バレたっ!?」


 苗字にある枚方というのは、大阪府にある枚方市のことだろう。

 

 彼女の目線にあわせて話を続ける。思いっきり顔を近づけて話を続ける。

 雪斗は枚方出身で、彼女が大阪人だと確信をもっていたのだ。そして、親近感が湧いたこと、容姿からも完全に日本人と確信し、そして旅へ誘った。


 「今の旅はね――」


 「今の旅は?」


 「北国、現代でいうシベリアを通ってね、日本へ行こうと思うんだ」


 異世界とはいえども完全に中世の地球である。コピーされた世界と言うとわかりやすい。

 

 雪斗がくれはと新たに仲間に加わることとなったかざのに提案する。


 「ヴィシーズ地方が現在のドイツだと仮定する。まずはモスクワに向かう」


 今三人が向かっているウィーストはウクライナにあたると考え、原子力機関車を完成させ次第世界を巡り逃げながら――


 「そしてヴィシーズの国王を倒す」


 雪斗は最終的に紅葉の聖地であるカナダに到着後、伝説として語られている『願いを叶える紅葉』に願いを込めて闘うという。それまでに世界中を巡り地盤を固める。

 普通の紅葉だと願いを叶える手伝いしかしない紅葉。しかしカナダの紅葉は最後まで完璧に願いを叶えるらしい。これに狐が関わってるのは明確で、きっとどうにかしてくれるはずだ。

 

 「すいません雪斗さん、食事の準備をしてきます」


 雪斗がゲス顔で頭を撫でると、かざのは逃げるように部屋を出ていった。


 列車は東へ進む。仲間が増えてからまず行くウィーストで原子力機関車に原子炉を搭載するが、構造が簡単なのですぐに完成できるはずなのだ。しかし絶対誰かやらかす。絶対やらかす。

 制御棒折ったり、制御棒の遮蔽能力薄めたり、制御棒折ったり、制御棒折ったりする。絶対折る。

 原子力なんて危険な分野に関わるときは不安しかない。

 でも、まだ放射能は出てこないはずだからそこはセーフ、かもしれない。


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