逃亡火山ツアーでして
異世界転移二日目は初日より慌ただしくなる予感がする。
二人は宿で朝食を済ませ、まだ登りきっていない朝日の下を馬車で駆け抜ける。
馬車の運賃が意外と安かったため一気に北上することにした。
「くれは、ニヶ所目の火山の名前は」
「グランジバレー」
流石に国外に出れば安全なはずだ。
火山でひたすら硫黄を採掘して金にすればウィシュノースに簡単にたどり着ける。
『着きましたよ』
運賃を払い、平べったい火山に登る。
高さは数十メートルしかないのか。
噴気孔が多く、大量の硫黄を採掘できる。
下にある街は家が数軒、鉱石の精錬所が一箇所という非常に寂しいものだった。
イースタンマインのときと同じように、硫黄を採掘しては精錬所へ、採掘しては精錬所へ持ち込むという作業を繰り返し、良質な硫黄を大量に採掘して八千五百メイル獲得した。
「くれは、ちょっと遊ぼうぜ」
「なになに?」
「その下にある硫黄がついてない石を火山ガスにあててみ」
ガスを若干平べったいにあてると。
「黄色いのが……えっ硫黄ができた」
「俺が知ってる数少ない科学的な知識、硫化水素とか二酸化硫黄が冷えると単体の硫黄を入手できる。これをうまく活かせば効率いいかもしれない」
「なにもない所に突然黄色い物質がくっつくって不思議な感じね、面白い」
二人はすぐ効率が悪いことに気づき、無言で馬車に戻るのであった。
「つぎはウィシュノースまでふっとばす」
「正気!? ここから三時間はかかるわよ?」
「結果的に時間を足せば三時間になる、もう国を出よう」
馬車はそこそこのなんとも言えないスピードで火山を離れる。