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第7話「おにぎり」

空想語源物語おにぎりの回


****************


大化の改新のおよそ15年前のこと

遣唐使が荒海に旅だち

日本が「ひのもと」と呼ばれた頃の話し



遣唐使は幾度となく派遣されたが

不運にも遭難が度重なり

多くの犠牲をはらっていた


そんな数度目の帰国の航海は

やはり大荒れで危険な状態に陥っていた

船底で右へ左へゴロゴロ転がり

入ってくる海水に腰まで浸かっていた

もはやこれまでかと・・・

使節の紅一点、森野妖子は涙目だった


帰国したら愛を誓った彼と一緒に

尊敬してる卑弥呼のお墓参りに行って

そして墓前で求婚する予定だったのだ


しかし嵐は治まらずとうとう難破して

船はバラバラに壊れ

使節は全員、深く青い海に流された


どれだけ時間が経過しただろうか

妖子は見知らぬ海岸に流れ着き

気を失っていた

ゆっくり目を開けると

青空と白い雲にカモメが飛んでいた

潮の香りの風が気持ちよかった


小さなカニが妖子の指を挟んだ

「痛い・・・」「生きているのね・・・・」


打ち寄せる波音と一緒に小さく

キュッキュッ

ギュッギュッ・・・と音が聞こえた

何の音かしら・・・

痛む背中を起こして振り向いた

砂浜の奥に見える森

その中に誰かいる・・・


あら?


よく見ると妖子のそばからずっと

森まで大きな大きな足跡が続いていた

すると今度は小さな足の子供が

走ってきて椰子の葉に包んだ

いい匂いのする物を持って来てくれた


「これ食べていいの?」「ありがとう」


葉を開くと米飯を丸めた物があった


走り去っていく子供をよく見ると

頭に小さな角が一つ・・・


「え!?あの子・・・ひょっとして鬼?」


鬼が握ってくれた米飯はとても美味しかった


「鬼が握ってくれたから、おにぎり・・かな」


元気になるまで見知らぬ島で

先住民の鬼と暮らした妖子は

鬼たちが作ってくれた船で島を去った


嵐に遭いながらも日本に帰って来た妖子は

おにぎりの話しを皆に聞かせた


そして愛する人と結ばれて

卑弥呼の墓前におにぎりを供えた



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