第3話「格好いい」
「格好いい(かっこいい)」の回
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1823年(文政6)
シーボルトが長崎にて鳴滝塾を開いた時の出来事
教室には西洋の最新の学問、思想を学ぼうと
大勢の若者が集まりました
ある日のこと
シーボルト先生が黒板にスラスラ~っと
オランダ語や英語を交えて
話しながら書いていました
賢明に紙に清書する生徒たち
「今なんて言ったのかしら?
よく聞こえなかったわ」
弥生が口をへの字にして言った
隣の席からも
「聞き取れないな~」と声が聞こえた
早苗という生徒が前の席の背中を叩いた
「あの・・・教えて欲しいのですが、あの記号の読み方」
早苗はこの教室で一番の秀才と噂の生徒に
恐る恐る声を掛けてみた
「ああ、あれは、カッコイーって読むんだよ」
爽やかに答が帰って来た
「ありがとう、さすがですね」
密かに想いを寄せていた早苗は
惚れなおした
そう早苗たちが読めなかった記号は
(E)だった
授業後、早苗は他の読めなかった女子に
カッコイーと読むんだよと教えてあげた
秀才男子の容姿も男前だったためか
女子の間でさらに話題になっていった
「へ~凄いねカッコイーなんてなんだか素敵な読み方ね」
翌日からその秀才のあだ名が
カッコイーになった
いつの間にか教室はおろか長崎では
頭の良い人をカッコイーと呼ぶようになった
いつしか全国に「格好いいね」と広まった