第1話「血眼の語源」
空想語源物語 第一話
「血眼」の回
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★主要登場人物
○漁師
○漁師仲間
○アメリカ人レストランオーナー
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大正時代の熱海の港町での話し
「今日はやけにナマコが多いな~」
「こんな浅瀬で網を仕掛けるんじゃなかったよ」
漁師は網からナマコを外して
海に捨てて帰った
翌日も沖に出たのだが
やはり網にはナマコが
何百匹も入っていた
「ちっ!なんだよ!またナマコかよ!」
漁師はナマコを海に投げ捨てて港に帰ってきた
ちょうど港には外国人が視察に来ていた
「なんだよアメリカ人か?」
「また別荘とか買いに来たのか?」
港に着くと外国人は珍しそうに船を覗きこんだ
「あいにく今日は何も穫れてねーよ」
ところが目をキラキラさせて船の中を見るではないか!
「オー!コレハ ナマコ デスネ~」
「なんだよ おい ナマコが珍しいのか?」
「こんな気持ち悪の食えねーだろ」
捨てたはずのナマコが船にいくつか転がっていた
「ナマコを知らないのか?」
「こんなもの欲しけりゃいくらでもやるぞ!」
「え~とここには3匹しかないな・・・」
漁師はナマコを手渡した
「アリガトウ ゴザイマス」
「ゼヒトモ カワセテ クダサイ」
「何?!!買う?ナマコをか?」
なんとナマコは外国人の祖国では高級食材だったのだ
どうやらレストランを開くらしく
食材として大量に欲しいらしい
しかも普段獲っている鯛や平目よりも高く
買うと言ってきた
漁師は翌日から今までナマコを捨てた場所を探した
「ちっくしょ~こんなことなら捨てるんじゃなかった~」
そんな漁師の姿を仲間たちは
「ちっ!ナマコか!って言ってたくせにな~」
やがて いつしかナマコを探す必死な姿を漁師の間では
「ちっナマコ」が変化していき
「血まなこで探してると言うようになった」