第70話 親ミツルギ派の発足
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下記は、ネタバレを含む設定資料です。
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2016/10/14 サブタイトル話数変更
仁は子爵叙任の時に着ていた伝説級の礼装で身を包み、ルガンボについて大広間に向かっていた。ルガンボは、武術の心得があるのだろう一分の隙もない。それでいて所作は優雅である。心にも一分の偽りもないということだ。偽りがあれば、動きにやや違和感が生まれる。その違和感がツァハ伯爵を靡かせるきっかけになった。そう考えれば、ツァハ伯爵は毎日ルガンボの所作を見ている。ツァハ自身の所作の手本が目の前にいるようなものだ。
この人が手本なら
自身の所作に気づかれた際の反応が
やや滑らかだったのは頷ける
ホセア卿自身も
分かる者には分かってしまうという
自覚があったのだろう
「ジン卿、こちらから入られれば、壇上に続きます」
「ありがとう」
「では、ご武運を」
壇上では、ツァハ伯爵が、仁の事を話していた。会場全体から歓喜の声が響く。壇上の緞帳の端から、会場の一部が見えている。前方に三巨頭の2伯爵が見える。両伯爵ともに親密度100になっている。特に元々マイナス100だったドヴォジャーク伯爵の喜び様が凄い。その後ろに、反ミツルギ派の7名がいるが、ドヴォジャーク伯爵と反応がほぼ同じである。上がり幅が多いから、反応も過剰なのだろうか?
「では、ジン・ミツルギ子爵。どうぞ、こちらへお越し下さい」
《学術系スキル「礼儀作法Lv.10」を発動させました》
《学術系スキル「社交Lv.10」を発動させました》
2スキルの効果には、全てのスキルのスキルレベルをLv.5底上げする称号「全技能者」の効果が上乗せされている。つまり、この世の誰よりも優雅な所作を見ることになる。会場全体から、先ほど違い感嘆の声が漏れている。仁が壇上の中央に立った。全体を見回す。そして、スキルを発動させた。
《攻撃系スキル「覇王の威圧Lv.10」を発動させました》
会場全体から「ザッ」という音がし、男全員が片膝をつき、女全員が両手でスカートを摘み礼をする。このタイミングで、ナスターシャが全員の脳内に、それぞれの声で「ジン卿に忠誠を捧げます」と囁かせる。すると、全員が声を合わせて言う。
「ジン卿に忠誠を捧げます」
うん
全員の親愛度が忠誠度に変わった
仁は右手を上げ、臣従のポーズを解くよう示唆し、挨拶をした。仁の存念と意向、目指すべき事を述べる。「王統を守ること」「マデーレン王女の意向に従い、望まれれば王位に就くこと」「皆が望めば、ジンラードの時に同様天下統一をすること」。最後に、世に言う「ブラドの思想」に被るが、「誰もが争わず、豊かになる世界を目指す」と締める。
仁の言葉を皆が噛み締めた後に、怒涛のような忠誠の言葉が、会場全体から多く聞こえた。
フリーメク男爵は言う。
「ジン卿の敵は、全て私が食い止めます!!」
ポンパ男爵は言う。
「ジン卿の敵は、全て私が討ち取ります!!」
ツァルダ子爵とアンドリーセク男爵は言う。
「「我らが連携し、ジン卿の敵軍を打ち破りましょう」」
ガジ男爵が言う。
「ジン卿の軍事作戦は私にお任せを」
オプレタル男爵とラッスカ男爵は言う。
「「ジン卿の率いる軍の補給は、我らが担います」」
他にも様々な声が響く。ところで、ツァハ伯爵は、感動に打ち震えているようだ。「これが徳だ」「これが歴史の再現だ」と呟いている。
いや徳じゃないからね?
狡猾な謀略だから
徳にはとっても遠い行為だから
歴史の再現ではあるけれども
元中立派と元反ミツルギ派の7貴族は、元々の中立派を改名して「親ミツルギ派」を名乗る事にしたようだ。最初からミツルギ派であった王家などを憚ってのことだ。ツァハ伯爵の話を聞き、全員が末息子と末娘を仁の人質とする事としたようである。勿論、仁は息子は徒弟家臣から直臣に、娘はメイドだが家族同然の扱いをすると約束する。その事が、その場にいた全貴族を感動させたらしい。年若い貴族、特に元反ミツルギ派の面々は、王家への人質以外に子がいない為、「お嫌で無ければ、貴方がたが直臣でも良いですよ」と冗談を言って、さらに喜ばせた。子が少ない家には、甥姪を養子とし、代替する事を許可する。勿論、実子が成長して追加する事も可能と伝えておく。
この一事で、エウロパ王国の派閥図はさらに変わる事になった。ミツルギ派9貴族(王家を含まず)、親ミツルギ派27貴族、反ミツルギ派27貴族。しかも、反ミツルギ派のうちヘイカスネン派には、親ミツルギ派予備軍と成りうるロト・ハバークがいる。さらには、これから数年かけて調略して、丸裸にするつもりでいる。
さて、どれくらいの抵抗があるものか
親ミツルギ派の代表は、暫定的にツァハ伯爵になった。なぜ、暫定的なのかというと、ロト卿に憚っての事だ。今のところ、全員が忠誠度100になっている。全員の共通認識として、ロト・ババーク侯爵がヘイカスネン派を離れたいと思っている事を共有させた。すると、ガジ男爵とオプレタル男爵とラッスカ男爵とが、フィルッパ派の調略を行う事を提案してきた。「任せる」と即答した上で、失敗したらフォローするし、責任は俺が負うから自由にするように言っておいた。それぞれの貴族の魔法属性に合わせて、妖精を召喚し契約させて、妖精情報網に追加した。その場にいた貴族たちは、神を見るような目になったのには、やや頭が痛い。
ところで、「親ミツルギ派」暫定代表のツァハ伯爵は最後の挨拶で、やや嫌な発言をした。いや、悪い事ではないのだが、仁の内心は「ヤバい、また予定が狂う」とドキドキしていた。今月初めに伯爵叙任がなかったのは、賛成が9貴族しかおらず、王家の意向が承認されなかった結果だという。伯爵以上の爵位叙任には、全貴族が認めるような王家への貢献と過半数貴族の賛成が必要なのだとか。つまり、ここにいる親ミツルギ派全員が賛成すると発言し、全員が了承したのだ。これで早ければ来月1日に叙任される。
あの予感はこれか!!
このエウロパ王国では、貴族全員が領地を持っているわけではない。太祖ジャージョの頃からの貴族は男爵でも領地持ちだが、それ以外は爵位と王家からの年金で生活している。勿論、役職としての給与もあるし、代官として赴任していれば、軍を持つ事も可能だ。だが、それは男爵・子爵の話だ。伯爵となれば、必ず領地が与えられる。町ないし村5つ程度が標準的な伯爵の領地だ。だが、仁の場合、王家が預かっている領地があるという。大公位を譲る準備もあると言う。いきなり全領地が来る事はないだろうが、その一部となりそうだ。
可能性があるのは、アニバルの街以西で、ヘイカスネン辺境伯領を除くどこか。なぜ、可能性があるのかというと、アルヒンマキ大公の領地とちょうど逆側で辺境伯の領地があるからである。四大貴族はほぼ辺境に広大な領地を持っている。外敵に備える意味合いが大きいが、そのうち東は海に臨むと言うのに、大公とハーパサロ辺境伯が抑えている。という事は、カリメイを抑える要としての大公があるのではないかと考える。フィルッパ公爵家は太祖ジャージョの時代からの公爵家である。大公に匹敵する重きをなしている。エスクロース公爵家は、ラジェスタ王の頃、取り潰された何とかという大公家の領地を引き継いだ。こちらはこちらで重きをなしている。という事は、王家とヘイカスネン辺境伯がカリメイを抑えている地域をオータム大公にとラジェスタが考えた可能性が高い。
だから、ヘイカスネン辺境伯が
あんなに反発していると考えれば納得出来る
ヤバいなぁ〜
ヘイカスネン辺境伯との
戦いが近い予感しかない
頭が痛いと思いながらも、仁は終了した親ミツルギ派の会合会場を後にきて、屋敷へ戻っていった。




