第68話 失敗はしょうがない、フォローするよ
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2016/10/14 サブタイトル話数変更
スタヴを配下にした3日後辺りから、深夜に仁を訪ねる客が増えた。元は盗賊団なのだから、夜客で間違い無いのだろうが、意味合いがだいぶ違う。それでは、盗賊団ではなく強盗団である。
それはさておき、まず3人の客から始まり10日ほどの間に150名ほどと面会し、「落葉群」を強化をはかった。スタヴ曰く、ようやく半分くらいらしい。だが、残りは辺境にいるとの事だったので、来月中頃まで待ってもらうことにした。
「落葉群」の党員には、スタヴに絶対の忠誠を献じるように伝えおいた。仁に対してはスタヴの主人ではあるものの、7〜8割くらいの忠誠で構わぬことを託けている。党員たちは、言いつけを守ってくれたようだが、違う忠誠を献じられた感じが否めない。神に対する信仰のような感じがした。
さて、仁の興す商会の発足日は、翌月2日とした。1日は王宮関係の何かが舞い込む事が多い。そのことを鑑みて1日延期した。開業を8日後に控えた日の午前中商人ギルドに登録に向かう。ランクはC。現在、従業員が60人中54人が奴隷の為、登録は従業員6名。仁は会長登録だが、Cランクでは店長扱いとなる。登録料合計8000Rと年会費40000Rを払う。ちなみに、この金額は、既に王室御用達を得ている為の減免済みの金額である。さて、税金だが既に述べた通り、仁は免除となっている。その為、美奈子ら従業員分のではあるものの、ギルドの大前提「税金は16歳になってから」が適用される。ここが地球と違って面白いと仁は思っていた。なお、生年月日は、召喚された日になったようで、仁ら30名は一律エウロパ統一歴4521年(ラジェスタ歴1001年)第8の月21日が誕生日である。14歳の奴もいたにもかかわらず、全員15歳スタートであった。
続いて登録名に触れよう。商会名は「ミツルギ商会」。店舗名は「雑貨屋『ザニニプフ』」。ザニニプフはシトドラヴ人種古語で、大地という意味の「ザニニ」と球体という意味の「ニプフ」を合わせて、地球という意味にした造語である。発足日も仮登録しておく。仮登録の場合、登録した地の商人ギルドに、登録日までに延期や前倒しの連絡をすれば、変更可能なのだ。逆に、延期や前倒しがあるのに、連絡しないと仮登録翌日に自動的に本登録となってしまう。
何も無ければいいが
何かありそうな予感があるのはどういう事か
屋敷に戻ると、エルナがスタヴからのメッセージを伝えてきた。中立派の大物が釣れたと言う。本日暗くなったら、共に伺うとの事だった。
早すぎないか?
出来るだけ早くとは言ったが
年単位で見てたから
2年はかかると見ていたが
奸計の可能性もあるか
まぁ、いい
それならそれで食い破る
夕食後、スタブはとある貴族を仁の屋敷に誘ってきた。
確かに大物だ
ホセア・ツァハ伯爵
仁の子爵叙任以来エウロパ王国の派閥図は大きく変わったと言っていい。元々は親王派と反王派と中立派であった。それらは平均的であったと言える。ところが、現在の派閥図はミツルギ派、反ミツルギ派、中立派に分かれている。ミツルギ派は、王家、親藩家など仁と関わった貴族。反ミツルギ派は今すぐにでも仁を排斥したい貴族たち。反ミツルギ派はフィルッパ公爵の派閥とヘイカスネン辺境伯の派閥に分かれている。フィルッパ公爵家は、元から反王派でもあり、なるべくしてなった感じだ。しかし、ヘイカスネン辺境伯家は権益の問題で反ミツルギ派を謳っている状態だった。なお、中立派は、親密になるには関係が薄く簡単には信じられないという考えの貴族たちが主である。他にも、どちらかと言えば反ミツルギ派に近いが、排斥するほど過激にはなれないという考えの貴族たちの集団でもある。そして、中立派には侯爵以上の貴族がいない。だが、三巨頭と呼ばれる3伯爵が中立派を運営していると言っていい。それは、以下の3人。
ヤロブアム・ジェデク伯爵
ホセア・ツァハ伯爵
レヴィン・ドヴォジャーク伯爵
仁が子爵に叙任される前は、それぞれ違う派閥に属していた3人だ。ヤロブアム卿が中立派、ホセア卿が親王派、レヴィン卿が反王派である。三巨頭から抜けやすい立場なのは、元々親王派のホセア卿だろう。しかし、ハマりすぎてて違和感が半端ない。
《鑑定スキルを発動させました》
なるほど
安く見られたものだ
調略出来ていない
親愛度がマイナスじゃねーか
しかし、マイナスとはな
反ミツルギ派じゃなく、中立派?
どういう事だ?
それにしても、スタヴ気負い過ぎだ
が、期待に応えてぇって気持ちも分かる
こりゃ小一時間ほどじっくり話さね〜と
親愛度100に出来ね〜な
仁は応接室で、スタヴとホセア卿とを出迎えた。すぐに、スタヴには席を外してもらう。
《ユニークスキル「親愛度・忠誠度上昇極大」を発動させました》
「ツァハ伯爵閣下、この度はこのような賤臣の屋敷にようこそおいでくださいました。王家を憂う卿にとっては、排除の対象でありましょうに、こちらの意向に沿ってお越しいただけた事、ただただ感謝するばかりでございます」
「う、うむ。しかし、排除の対象とは言葉が過ぎぬか?」
「ツァハ伯爵閣下の所作を見ますに、異心を感じられます。何か思うところありて、こちらにて来られたのではと推察いたします」
「ぬぬぬ。そなたは、心が読めると?」
異心ありと言っているようなものだよ
それ
「心と身体が一体でこそ、行動に美しさが増します。ツァハ伯爵閣下ほどの方が、それを意識していないわけはなく、それゆえ違和感を感じました。決して心が読める訳ではございませぬ」
「行動の美しさか。古えの貴族を連想させる事を言うのだな?古代の賢臣や大貴族とはそうであったと聞く。ふむ。そなたの噂は眉唾であったが、本当の事なのやもしれぬな」
おや?
親愛度か50まで上った
一気に上がり過ぎじゃね?
違う理由があるな
何だ?
なるほど
虚偽を嫌う人か
それでマイナスだった?
「なるほど、虚偽がお嫌いな方でしたか。やや所作に美しさが戻りましたな」
「うむむ。ジン卿は怖いお方だ。少しの動きで、全てが読まれる。すまぬ、疑ったっていた」
「構いませんよ。いきなり現れたオータム・リーブスの家紋を持つ冒険者上がりの賤臣を信じろと言うのが無理な話です。私は末裔でも何でもないですからね。オータム・リーブスの末裔というなら、ここにあなたを誘ったスタヴこそが本物の末裔ですから」
「なんと?!あいや、ワシは見る目がない。彼が英雄オータム・リーブスの血脈を保つ者か」
「はい。私も驚きました。前々世の時の姿に瓜二つで、どの子どもの子孫か見当がつかなかったくらいです」
「誠か?!なるほど、彼の肖像画を書かせてもらえぬか」
「申し訳御座いませぬ、閣下。彼には諜報を任せております。肖像画は勘弁願います」
「あ、そうであったな。私は調略された立場だったな」
ようやく58というところか
「調略は、されていないでしょう?ははは、所作が乱れましたよ?何か考えがあっての事でしょう?」
ツァハ伯爵は、まず謝ってきた。調略されたのではなく三巨頭で話し合い、仁の存念を聞くだけのつもりであったのだ。しかし、ツァハ伯爵本人としては、「信じてもいい」気持ちになったと言う。ツァハ伯爵は、こちらに来る前、関わりのある貴族や士族、冒険者たちに仁の人柄を聞いて回ったという。仁と話した事のある者は全員が、「信じれる」と太鼓判を押したのだとか。俄かには信じられない事だったが、話せば話すほど仁の人柄に惹かれ始めている自分に気づくと、恥ずかしそうに語ってくれた。
「一つ問いたい。王統はどうしたい?カイロン陛下はどうなる?」
「私としては、王位を簒奪するつもりはないのです。禅譲されるようなら受けますが、王統は守るつもりでおります」
「ふむ。王位は望むという事かな?」
「いえ、ジンラードだった時もそうでしたが、第一王女も妻に迎えた時に、第一王女の希望に沿って行動した結果、龍人族の王となりました。今回も同じです。マデーレンは王妃になりたいとか。ならば夫として、徳を積み、王位を譲って頂けるような人格を形成せねばならぬと思っております」
「徳とな。ならば、まずは、人を率いねばな。うむ。大公閣下らはどのように?」
大公閣下は娘だけだが、他の8貴族は息子と娘を一人ずつ人質として遣わされたと説明する。仁自身彼らとは仲が良い為、人質ではなく、息子らは徒弟家臣として迎え、娘らはメイドとして雇い入れた事を話した。
「徒弟家臣か。その者らの教育は?」
「私が直に行っております」
「なぬ?!ジン卿自ら?彼らをどうしたいと考える?」
「いずれは直臣に。メイドはすでに直臣ですけどねw」
親愛度82か
あとは、「忠誠」を誓わせれば
調略完了だが・・・
黙っちまったな〜〜
ツァハ伯爵は、考え込んでいる。近くにいるから、考え込んでいても、ガンガン親愛度は上がる。あと4分半で親愛度100になる。先ほどから、鑑定しっぱなしの状況なので、15秒に1ずつ上がっている様は、見ていて気持ち良い。「あと4かぁ」と仁が思った頃、ツァハ伯爵は、話し出した。
「ジン卿、私の娘や息子もそなたに預ければ、直臣にして頂けようか?」
キタ━━━(≧∀≦)ノ━━━ !!!!!
側近となるかは実力次第だが、息子をいずれ直臣する事は約束した。娘は、メイドとして手ほどきをさせる期間が3ヶ月ほどあり、その後、家族同様の待遇の上で、平民の約15ヶ月分の給与を払いを約束する。その待遇に絶句したようで、ツァハ伯爵は固まってしまった。
おお、親愛度が忠誠度に変わった
ツァハ伯爵が、「家族同様の待遇」の詳細を聞いてきたので、妻にするという事ではない旨を伝える。妹とか姉とかくらいの扱いであると。まぁ、水面下で側妃になるための争いのようなものもある事は伝えておく。必ずそうなるとは限らないので、政略結婚の意味合いではとらないで欲しいと念を押した。
側妃争いについて、突っ込んだ質問をされたので詳細は不明とした上で、正妃候補と側妃候補を説明する。正妃候補のマデーレン姉妹や龍王の娘、サクヤについて少し触れた。葵たちやメイドなどは、なぜ正妃になる為の争いをしていないかを説明すると、「なるほど」と頷きながら、ツァハ伯爵笑ってくれた。
サクヤの話をしたら
あの尻尾をモフりたくなった
「ふははは。ジン卿、私も麾下に入れてくれまいか。正直者故、謀略とかは苦手だが、内政のみならば、バルトロ卿に遅れは取りませんぞ」
「ほぉ、王佐の才をお持ちか。ありがたい」
「いや、そんな王佐ほどの力はありません。ですが、王佐の才を持つ者を紹介は可能です」
「中立派の?」
「いえ、中立派は現在切り崩しにかかっているところでしょう?」
中立派の攻略方法について、ツァハ伯爵に少し説明をする。簡単に言うと、大魔王ジン・ブラド・レイが魔族統一時に行った方法である。ツァハ伯爵は、一夜にして魔族の過半数を麾下にした話を知っており、「見たい」と言う。勿論、一人麾下に入った者が居ないと出来ない作戦だから、必ず連れて行く旨を伝えると喜んでいた。ただし、詐謀のような内容なので、ツァハ伯爵の心が離れないか心配だと言うと、一度従った限りは、どのようなことがあっても、離れぬと言われてしまった。
「中立派ではないとすると、反ミツルギ派しか考えられませんが。どなたなのでしょう?」
ツァハ伯爵の出した名前に仁は仰け反る事になる。ツァハ伯爵の王都士官学校時代の学友であるロト・ババーク侯爵てあった。
ヘイカスネン派の筆頭だと?!
聞けば、代々ババーク家はヘイカスネン辺境伯家に随臣している。ロト卿は、金と権力にのみ強い執着を見せるヘイカスネン辺境伯家に嫌々ながら従っているのだと言う。実は、ロト卿は先代ババーク侯爵の3男で、兄たちが早逝しなければ、爵位を継ぐはずではなかった。父や兄たちは、ヘイカスネン辺境伯の性情に何も思わなかったらしいが、ロト卿は気に入らないらしい。だから、親王派か中立派に変わりたいという意向を前々から示していたのだとか。
「ホセア卿、ババーク侯爵については、後日引き合わせて頂けるとありがたいです」
「承りましょう」
「中立派の会合などありますか?」
「明後日の予定ですが、それが何か?」
「では、中立派をこちらに引き込む作戦について、説明しましょう」
仁はスタヴを呼び、夜半まで話し合いを重ねた。