第60話 今回の蘊蓄は算盤です
前話前書きにもかきましたが
元は、前話の中盤部分だったところです
前話を広げに広げた結果、
元は、こっちの方が長かったのに
前話の方が長くなっちゃいました。
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下記は、ネタバレを含む設定資料です。
いくつか項目があるので、ご注意を
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2016/10/13 サブタイトルの話数変更
労働者ギルドを出て、美奈子らとは、そこで別れた。美奈子たちはは屋敷というか工房に戻り、仁は不動産屋「ヲチヂツァ」に向かう。労奴の住む建物を建てようと考えての事だ。出来れば隣接している方がいい。屋敷から見て、右側に店舗や工房があるが、左側が割と広めの広場になっている。そこが買えれば良いくらいの考えだった。屋敷を買った当初は、屋敷内と考えていたが、従者やメイドが増えた現状では不可能。敷地内は工房やオーロラの小城があり、割と頻繁に庭で立食パーティがある為、庭の一部に作るのも不可能。ならば、買うしかない。屋敷の裏手にも建物があり、住民もいるようなので、立ち退きなどさせられないだろうと考えての事だ。
店舗前には見知らぬ男の子が、掃き掃除をしていた。「ここに来ると入り口前を必ず清掃しているなぁ」と思いながら、従業員に声をかける。
「アヒムいるかい?」
「あ、すいません。いらっしゃ・・・ジン様でいらっしゃいますか?」
「そうだよ」
「いつも父がお世話になってます。アヒムの息子、ハヴェルと申します。この度、成人しましたので、正式に採用され、数日前よりこちらで働かせていただいております。商人ではありますが、ジン様の提唱された、『レベルアップしてから本業を』というお考えのおかげで、冒険者登録もしたばかりです。冒険者にもなってみたかったので、本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願い致します。父は店内におります。どうぞ、お入りくだまい」
そんな提唱に纏めたのか
「冒険者は本当に危険だから、気をつけなよ。近場に行くときは、うちのメンバーに声をかけくれれば、一緒に行けないか話しとくから、声かけな」
「本当ですか?!アラウンド・ザ・ワールドの方々と?!ありがとうございます」
「いいよ。俺とギムレット商会の関係は聞いてるだろ?」
「あ、誠に申し訳ございません。主人様にこんな口のきき方をしてしまいました」
「いいって、興奮したら、使い始めたばかりの丁寧語は、吹っ飛ぶよな」
「はい。申し訳ございません」
「どうしたんだいハヴェ、あ、ジン卿、いらっしゃいませ。おっしゃっていただければ、伺いましたものを」
「不動産屋がくる?そんな話聞いたことないぞ?」
「ははは、普通はしませんね〜。でも、ジン卿は、土地を必ず買われるという意思で来られるじゃないですか。事前に、どの辺りを買いたいとお伝え頂ければ、資料を抱えて伺えますから。スリギアからエウロパ全土の土地まで、各種取り揃えてます」
「さすがだ、よく分かってるな。今日買いたい土地についてだが、うちの屋敷の近く、出来れば隣接している土地で、屋敷のそうだな4分の一くらいの土地が欲しい。建物はこちらで作るから、なくていい」
「それでしたら、裏手の住民区はいかがです?」
「人住んでるだろ?」
「今は、殆どいません。あちらは殆どが商業区なので」
「立ち退かせるのか?」
「いえ、家賃滞納者が固まってますので、退去させます」
「あー、あの辺りって、そんなのが多いのか?」
「あの辺りは、ギルドが大通りに移ってくるまで、貧民街だったんですよ。だから、20年前までは、この辺りも寂れてたんです」
「冒険者ギルドとか割と年季があったがなぁ。労働者ギルドもそこそこ年季があって、商人ギルドは、確かに新しい感じだったか」
「冒険者ギルドは、元々あそこですね。労働者ギルドと商人ギルドが20年前に移転してきて、今の魔法士ギルドがある建物が、元の商人ギルドです。魔法士ギルドは元々塔型ダンジョンの近くに有ったんですが、こちらに移転してくる際に、商人ギルドが、商業区方面に移転したんです。ギルド大通りと呼び名がついたのは、ここ数年のことですよ」
「なるほどな。街に歴史ありとは、よく言ったものってとこか。退去までには時間がかかろう。出来れば、魔王が帰った当日か、その翌日までには買いたいんだが。無理そうなら、隣の広場とかどうだ?」
「あの広場は、王家の土地ですので、交渉が必要ですね」
「え?そうなの?何も使ってなさそうだったから、あそこならいいなぁと思ってね。そうか、知らなかった」
「まぁ、空き地のような見た目ですけどね〜。そこを挟んだ奥や向かい側の土地はギムレット商会で押さえているんですけどね」
「なるほどな。退去までどれくらいかかる?」
「半月ほど日数を頂ければ」
「分かった。土地はいつも通りの相場通りで。それと、滞納金は肩代わりする。強制退去のお詫びだ」
「そんな相手が悪いのですよ」
「いや、俺の偽善だ。悪いが付き合え」
「畏まりました。そういうところ、私は大好きですよ、ジン卿」
「よせやい、男に言われても、気持ち悪いだけだ」
「ははは、では、こちらで手配します。ライムント会長も仰ってましたが、魔王接待に際して、お困りのことがあれは、何時でも仰ってください」
「いつもありがとうな。幾らだ」
「少々、お待ちください。板は〜〜」
「あ、これ使え」
仁は、アイテムボックスから、算盤を取り出した。算盤の使い方を教え、実際使ったアヒムは、顎が外れるほど、口を開けたまま固まっていた。
算盤、西洋風に言えば「アバカス」とか「アバクス」とかと呼ばれる物の歴史は古く、起源は諸説あるが、紀元前300年頃にはギリシアのサラミス島で、使われていた形跡がある。珠状の形になったのは、中国後漢の頃の書籍『数術記遺』に「珠算」という言葉がある為、2世紀頃ではないかと言われている。なお、三國志蜀漢の関羽が、そろばんの生みの親という伝説があるが、出来て100年ほどのあまり知られていない物を使っていた為、そう考えらたなどの理由でしかないのかもしれない。日本に伝わったのはいつか分かっていないが、現存する最古の算盤は文安元年のものなので、室町時代には日本に伝来していたのではないかと考える。
「ジン卿、こちらは」
「んー、元の世界にあったものを再現したものだ。そして、ギムレットが使ってたものだ」
「ふぇっ!?そ、そんな貴重な物を!!!」
「使えないってんなら、別の物を作ってやるよ。マピクキチの木かミジヤオポの木かアタゲサボの木の木材を用意すれば、いくらでも用意してやる。だがな、それはお前にやる。次期ギムレット商会会長になって、俺を支えるんだろ?」
「覚えて頂いていたのですか?」
「当たり前だろ?」
「しかし・・・」
「ギムレット商会は実力主義だろ?鼠人族じゃなきゃいけね〜ってこたぁ、ねえんだろ?それとも、ギムレットの血脈を守らないといけね〜んなら、ライムントの娘、何つったかな。ヘリュだっけか?ちょっと、抜けてて歳上だが、ハヴェルの嫁にでも迎えればいいんじゃねぇか?」
「ライムント会長の奥様が、ギムレットの血脈と知ってらっしゃったのですか?」
「いや。ギムレットの母とか叔母に似てるから何となくな」
「凄いですね。ハーフなので、特徴とか分からないものなのに」
「まぁ、首座だった母から引き継いだと聞いたから、そうだろうとは思ってたかな。決定打は、ヘリュだな。あの間抜けさは、ギムレットの嫁の血だ」
「そうなのですね〜。ライムント会長にこちらをお見せして、話してみましょう。しかし、息子が、商会を継ぐわけではないでしょうから、難しいかもしれません」
「そこは、何とかしよう」
「え?ジン卿が?!」
「お前に加護を願ったみたいなことだ。すぐには無理だが、直接俺が、ハヴェルを鍛えてもいい」
「ほわ!!それは願ってもない事ですが、良いのでしょうか?」
「あの提唱の責任もあるからな。店長たちの子どもを預かるくらいは考えても良いかもな。ハヴェルには、才能ありそうだし」
「分かりました。魔王陛下の接待もおありでしょうから、色々決まりましたら、お伺い致しましょう」
「頼むわ」
仁は屋敷に戻っていった。
文安元年は1444年です。
それと
マピクキチの木は「樺」
ミジヤオポの木は「柘」
アタゲサボの木は「柞」です