第59話 面倒くさがりは父親似
元々は次話とセットで簡潔に説明した後、
魔王登場だったのですが
次話更新分が、かなり長くなったので、
二つに分け、こちらの話を広げました。
魔王登場回は第5話以降に持ち越しです。
いつも、読んでいただきありがとうございます。
ブックマークも増えており、一定のPVもいただき、感謝の極みです。
本当に励みになります。
誤字や、助詞の間違い等ありましたら、ドシドシお待ち申し上げております。
修正する事で、文が良くなるのです。私にとっては、一字千金の価値があります。
よろしくお願いします。
下記は、ネタバレを含む設定資料です。
いくつか項目があるので、ご注意を
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2016/10/13 サブタイトルの話数変更
魔王来訪まであと3日。本日、奴隷館「コラデガッ」に労奴を見に行った。店前につくと、割と混み合っている。
「入るよ」
「これは、ジン卿」
「え?ジン卿?!」×10程度
来客と思われる者たちが、全員が一斉に振り返る。冒険者もいれば、商人っぽい者たちもいる。
戦奴でも買いに来たかな
という事はあの戦争か
今月の初め、トラビア村から3日ほどのルカータ帝国との国境線沿いで、侵攻してきたルカータ帝国軍とフィルッパ公爵を指揮官とするエウロパ王国軍が激突した。元々カリメイ連合国との二正面作戦だったその合戦は、アッスントの立太子で二正面作戦が頓挫し、カルータ帝国軍の単独侵攻となった。二正面侵攻ではなくなった為、フィルッパ公爵の元に、他貴族軍も多く集まり、フィルッパ公爵が背信する事なく、エウロパ王国の大勝利となった。
カリメイ連合国からは、王弟ヴィルヒリオ外務大臣を大使とし、王弟アミルカル内務大臣を副使とした第二次使節団が、先の使節団の謝罪と快気祝いをしに来た。カリメイ連合国の王弟の2大臣が謝罪にきた時点で、謝罪は受け入れられた。その際、エウロパ王国とカリメイ連合国は不可侵協定が締結されたが、大使ヴィルヒリオをして、「ジン・ミツルギがエウロパにいる限り、カリメイ連合国は不可侵を貫く」と言わしめたとか。この点から見ても、仁の入国が如何に、エウロパ王国に大きな影響を与えているかが分かる。仁の子爵 陞爵の背景には、こんな事情もあり、災害級 魔物の討伐が決定打となった。その協定締結後、2人の王弟は、仁の屋敷に謝罪に来たが、それは語る必要もあるまい。
エウロパ王国は、先の合戦大勝利の結果、戦闘奴隷など含む大量の奴隷を得た。そのうちの一部がギムレット商会に卸されたのだろう。その奴隷たちを買いに来た客で混んでいるようだ。仁に先を譲ろうとする者もいたが、丁重に断り、待合室で待つ事にした。
ようやく、仁に順番が回ってきたので、待合室を出ると、他の客は誰もいなくなっていた。ちょっと気になったので、パウラに聞いてみた。
「もしかして、貸切にしたのかな?」
「お嫌でしたか?皆様、ミツルギ士爵が待っていらっしゃいますと伝えましたら、快く、帰って行かれました」
「あー、別に貸切なんてしなくて良いのに」
「貴族の方には、順番を譲る、貸切にするが常識なので、申し訳ありませんでした」
「あ、そうなの?さっきの人たちに悪い事したな。今度、来る事があったら、なんか値引きしてくれ、10人くらいいたから、金貨40枚分で良いか?」
「そ、そんな。頂けません。また来られるのもいつになるか分かりませんし」
「なら、来た時に、こっちに請求を回せ。スリギアにいれば、俺が来るから」
「あ、いえ、割引については、こちらで何とかします。お金は宜しいです」
「ダメだろ?親からでも子どもからでもお金を取るのが、いい商売人だ。きちんと請求しろよ」
「うう、はい」
「さて、今日はこの前話してた労奴を買いに来た。まぁ、30〜50人くらいかな?そんなにいないだろうから、すぐってわけにはいくまいが」
「年齢や性別、種族にこだわりは?」
「若くて丈夫であればいいな。特に性別や種族には拘らないぞ」
「それならですね。先の合戦で、8〜12歳の戦争孤児から労奴になることを決めた子どもたちを50人ギムレット商会で抱えているのです」
「8〜12歳たぁ、また、若いな」
この世界のルールでは、労奴は8歳から働かせて良い事になっている。こんなところで、なんて過酷な世界なんだと感じてしまう。勿論、平民の12歳から可能というのも、「ここは平安時代か!!」と思う部分もあるのだが。まぁ、日本の成人が20歳からで、義務教育が終わるのが15歳になる年だと考えれば、それが数年前倒しになっただけなのだ。そもそも、元服や裳着で成人だと考えられていた時代からすれば、緩くなったのだろうが、現代の子どもたちの成人を早めたらどうなるかと考えると反対も賛成も出来ない。無理な奴には無理だろうし、出来る奴には出来る。それは、仮に社会人になってる者でも同じだからだ。
「そうなんですけどね。戦争孤児の多くは、だいたいそうなりますからね。神殿が経営する教会や孤児院では、入りきらない数の孤児が出たらしくて、初めから奴隷となった子もいますが、そうでない子どもたちの決断ですからね〜。ギムレット商会としては、出来るだけ多くの子どもたちを預かったのですよ。各国に振り分けてもエウロパ王国だけで、50人いるという現状ですね」
「分かった。買おう」
「え?見なくていいんですか?」
「いや、いいよ。その代わり、相場定額でお願いしたい。奴隷教育はあるんだろうが、販売管理費とか含まない程度でな」
「勉強させて頂きます」
現状、労奴の子どもたちはいないので、入り次第、屋敷に来てもらう事にした。とは言え、数日で来られると部屋がないので、早くても魔王が魔族領に帰還した後にしてもらった。ちなみに、魔王の滞在予定は未定だそうだ。マデレーンの話では、おそらく長くて1ヶ月だろうとの事。2ヶ月と2日後には、魔族領で4年に一度の武道大会がある。その準備もあるはずだから、1ヶ月と考えたらしい。
武道大会については冒険者ギルドでは、すでに出場受付が開始されている。ルヴィータは出場するようだ。仁は出場の考えはなかった。「これ以上、予定を狂わされてたまるか」とは思うものの、妹に頼まれたら、どうなるか自信がなかった。端から見れば、ごく普通の兄妹なのだが、仁からすれば、兄バカだと思っていた。陽斗のように近くに住んでいた者でないと分からないくらいの甘さだ。葵など長年の付き合いがある者でも、稀にわかる程度なので、他の者に分かるわけがない。
さて、コラデガッを出た後、一旦屋敷に戻り、美奈子たちを労働者ギルドに連れて行く事にした。彼女らの登録のためだ。彼女らを労働者ギルドに登録するのは、労働者ギルド規定の各職種条項にある「○○で□□を営む者または、ギルドが定める等級の製作者」(○○には職種、□□には業種が入る)の「ギルドが定める等級の製作者」に該当するためだ。試作段階ではあるが、彼女らは、揃って伝説級の作品を作り上げた。
あんな短期間で作りやがって
自信なくすぞ
杏に至っては
1%未満の確率を引きやがって
どれだけ強運なんだ
まぁ、杏の場合は
裁縫師だから関係ないんだけれども
衣類の世界には、面白い事に、粗悪品か一般級がほとんどで、希少級が出来たら貴族や豪商に売り込むから、希少級以上の品物がある事を知られていない。仁は杏のユニークスキルの獲得のパターンから、付与師や鍛冶師の変則パターンではないかと踏んでいる。そうなると、最終的に創世級が作れるようになるはずだ。ならば、杏は労働者ギルドの規定変更させ得る偉業者になるのではないかと思われる。まぁ、そこまでレベルを上げればだが。
労働者ギルドに着くと、何やら騒がしい。時間帯的に昼前だから、こんなに騒がしいはずはないのだ。労働者ギルドは基本的に日の出から日没をやや過ぎた時間帯まで開いている。閉まった後は、夜間部入口で対応しているが、労働者ギルド所属している業種店舗などが閉店を迎える時間には、労働者ギルドも営業終了する。その為、早朝と日没前後が一番混むのだ。案の定、会員が多くて騒がしいのでは無いようだ。ギルド職員が、やや騒めいている感じだ。仁は受付にいたシモナに聞いてみる事にした。
「やあ、シモナ。今日はどうした?何やら浮き足立っている感じだが」
「あ!ジン卿、今はまずいです。個別対応室に行きましょう」
「なんで?」
「ジン卿に会わせろって、エウロパ王国労働者ギルド本部長が来てて、ギルマスとサブマスが頑張って押さえているんですよ」
各ギルド内だと
ギルマスとサブマスと言う呼び方なのね
「父さんが?いいよ。会うよ。会いたかったし」
「えええ???本部長の息子さんなんですか?ジン卿は」
「元の世界でね」
「あ、ああ。ジン卿は召喚者でしたね」
「仁が来てるって聞こえたぞ」
「「本部長待ってください!!」」
「やあ、親父相変わらずか?ブチ切れると周りに迷惑かける癖、こっちに来ても同じとか、最悪だぞ」
「あ、すまん」
「謝るのは、俺に対してじゃないだろうがよ。それとも、元の世界みたいに、身体に恐怖を刻み込もうか?!あっちじゃ、母さんの役目だったけど、俺だって、今じゃ、災害級くらいなら数太刀で倒せる力はあるぜ。生かさず殺さずでヤレるぞ」
「さ、災害級を数太刀で?!gkbr・・・。皆さん、申し訳ありませんでした」
「本部長が謝った!!?」×20程度
「てか、親父、何で村人なんてやってる。隠蔽偽装Ⅶで隠したつもりか知らんが、魔法適性あるじゃねーか。そのステータスとスキルなら、適正は魔闘士か魔法槍士か?しかもそのレベル。この世界の常識覆せる存在じゃねーか。」
「えええ??!!!」×20程度
「おまっ!?勝手に鑑定するな!!しかも、俺のユニークスキル突破しやがって」
「うっせーよ。どうせ、面倒くさいって理由で村人になったんだろうが。その癖、USAランク並みに魔物は倒してないとそのレベルにはなれんだろうが。嘘つきは嫌いだったんじゃないのか」
「あう。ごめんなさい」
「なんだ、図星かよ。昔から嘘が下手だったからな。どーせ、そんなにユニーク持って生まれたから、人生を謳歌しようとか考えたんだろ?」
「仰る通りです」
「はぁ、仕方ねーな。父さん、家族はいるか?」
「あ・・・ああ、妻と子どもが・・・5人いるよ」
「それについては、咎めね〜よ。こっちではこっちでの人生があるしな。母さんみたいに探そうとしなかったのか?」
「す、すまん。近隣にはいなかったから」
「まぁ、普通いるとは思わんか。ならいいよ。ギルドの皆様、この事については、どうぞ、内密にお願いします。責任はこのジン・ミツルギが持ちます。ただし、もし、本人が言ってなくて、どこかからその話が流れた場合、私を敵に回すと考えて下さいね」
「gkbr」×20程度
「いいのか?仁」
「親父には、親父の生活があるだろう?いいよ。気にすんな。だが、きちんと各関係機関には、謝れよ。隠してるところは、言っても言わなくても構わねーよ。どうせ、レベルのことは、USSに成るとしたら、俺のレベルで、公表するつもりだったし、今日連れてきたこいつらがすでにJOBLv.131になってるから、こいつらが良ければ、公表するさ」
「Lv.131?!」×20程度
「あ、美奈子ちゃん、すみれちゃん、杏ちゃん久しぶり」
「「「おじさま、お久しぶりです」」」
美奈子たちは、全員Aランクに登録された。ギルド規定については、杏の作った衣類を納入し、審議されたのち改定に成るだろうとの話だった。ちなみに、レベルについての公表は無しになった。みんなの希望は、仁が必要性を感じた時に、公表すればいいということだった。その後、旧交を温めたあと、親父は、ランフスの街に帰っていった。