表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新停止】流星に当たって、異世界召喚  作者: 八凪 柳一
第1章 冒険者篇
56/92

第43話 アッスントの要望

いつも、読んでいただきありがとうございます。

ブックマークも増えており、一定のPVもいただき、感謝の極みです。

本当に励みになります。


誤字や、助詞の間違い等ありましたら、ドシドシお待ち申し上げております。

修正する事で、文が良くなるのです。私にとっては、一字千金の価値があります。

よろしくお願いします。

 仁たちは、アニバルに来ていた。ちなみに、遅れた分は、問題なく取り返して。今回の馬車は、いつもの幌付きの馬車と、所謂いわゆる貴族用の箱型の馬車二台である。箱型の馬車には、ミツルギ家を表す紋章があしらわれている。シトドラヴは、日本に住んでいた者または、日本にたまたまいた者が、転生してきている為か、ほとんどの紋章が西洋風ではない。つまり、家紋なのだ。


 西洋の紋章と日本の家紋との違いを説明すると、西洋の紋章は「戦いのときに敵味方を区別する為、自分の盾に独自の紋章を描いた」のが起源である。その為、西洋の紋章は盾型となっていて、紋章が持てるのは騎士以上の身分だけである。


 これに対して日本の家紋は、平安時代に「貴族が宮中から退出する時に、貴族を待つ多くの牛車の中から素早く自分の牛車を見分ける為に、牛車に独自の紋様を描いたの起源である。その為、デザインも植物や身の回りの物が多く、優しいデザインの物が多いのが特徴である。


 ちなみに、日本の家紋は丸の中に紋様が入っているイメージだと思われがちだが、そうではない。黎明期(平安時代や鎌倉時代)の家紋には丸が使われていない。分家が増えると本家と区別する為に形を微妙に変えることで、差別化を図ったとされる。


 丸で囲うのも本家との差別化の一環だが、「元のデザインを丸で囲うのが一番単純で家紋の形の変化が分かり易かったから」という理由が定説になっている。その為、丸の付いている家紋は分家に多く、比較的新しいデザインの物なのだ。


 話が逸れてしまったが、ともかく、仁の馬車には、家紋があしらわれている。オータム・リーブスの指輪の紋章をそのまま家紋として、利用した。理由は、エウロパにおいて、その家紋が大きな意味を持つからである。先に、エウロパ王家とアルヒンマキ大公家の家紋を2つに割った図柄を背景に、紅葉の紋様が入っていると述べたが、エウロパ王家の家紋は、日本名で言うところの「陰重ね糸巻」という家紋であり、アルヒンマキ大公家の家紋は、日本名で言うところの「三つ三昧駒」という家紋である。縦に割った理由は、対称となるからであり、真ん中は綺麗な空白ができるからであろう。そこに「違い紅葉」が描かれている。


 オータム・リーブスの家紋になぜ、紅葉もみじなのか。オータム・リーブスはGinベースのカクテルの名前でもあるが、シャンソンの代表的な楽曲でもある。邦題は「枯葉」。仁は枯葉ではなく、紅葉もみじとした。ただ、それだけだ。とは言え、きちんと、枯葉であることも認識していた。自分たちが、作った盗賊団の名前が落葉を冠したのはその為だ。エウロパの歴史書には、オータム・リーブスは、盗賊王シーフキングという称号を戴いている。しかし、実際は、盗賊団「落葉群あきのはたち」の頭目として、悪政を敷く貴族達の金庫を開けて回っていただけだ。一部を民衆にばら撒いたため、義賊として有名になるが、本当の目的は、悪友ラジェスタ・アルヒンマキを支える為、敵の弱体化とアルヒンマキ軍の財政面でのサポートであった。歴史書には、「義賊」の部分と「冒険者」の部分しか出てこないが。


ラジェスタも上手く隠したもんだよ

盗賊団「落葉群あきのはたち」の副頭目だったことも

きちんと墓まで持っていったようだし


 さて、現在、仁たちは代官が駐在する為の屋敷にいる。そして、カリメイ使節団は、先ほど、アニバルの街に入ったようだ。最初にアニバルの街に来た時は、代官屋敷に気づかず素通りだった。オーガ討伐の時は、近くに来ただけで、街に入っていない。だから、今回が初めての代官屋敷入りとなる。まぁ、ただの旅人が代官屋敷に入ることはないので、当たり前といえば当たり前なのだが。このアニバルの街は、エウロパ王家の直轄地である。スリギアを中心とした東西南北の一番近くの街村は王家の直轄地となっている。その為、代官が置かれている。代官は、腐敗の原因となる世襲制ではなく、若手貴族嫡子や中堅内務官が、5年ごとに、交代で受け持つ形式となっている。やる事は決まっているのに、業績によっては、廃嫡や降格があり得るというなかなかハードな業務らしい。あくまで悪政を敷いた場合に限ると、現代官であるドゥシャン・ゾウハルが教えてくれた。


 王宮には、家紋付きの馬車と家紋なしの幌付き馬車で向かう旨は伝えてあった。その事は、きちんとアニバルの街にも伝わっていたようで、アニバルの街の外門に着いた時に、門番から、代官所へ連絡が行き、案内人が来てくれた。そして、今、ドゥシャン・ゾウハルとお茶を飲みながら談笑している状態なのだ。


 そこへドゥシャンの部下が入ってくる。ドゥシャンは部下に幾つか指示を出し、仁に話しかけてくる。


「使節団の護衛大将が、当屋敷に入りましたので、広間に止め置いております。大使殿もご一緒にお願いします」

「ありがとうございます」

「では、こちらへ」


 広間に行くと、使節団の大使らの姿はなく、護衛の守将、第一近衛軍大将ロッセッラと、副将と思しき男と話していた。ドゥシャンと仁の姿を認めるや、男は素早く部屋の隅に移動した。


「ご苦労、使節団の守将殿で宜しいか?」

「はい。第一近衛軍の大将を任せれております。ロッセッラと申します。代官殿で宜しいのでしょうか?」

「いえ、私は、エウロパ王家より使節団の対応大使を任されております。ジン・ミツルギと申します。官位は士爵ではありますが、使節団への対応においては、カイロン王の代理人となります」


 それまで、右手を胸に当て、貴族への対応をしていたロッセッラは、片膝をつき、顔を下げた。


「大変失礼を申し上げました。ジン閣下には、我がカリメイ王家、王太子アッスントより失礼のないようにと仰せつかっております」


この場で言わせるか

策士だな

アッスント


「アッスント殿下か懐かしい。婚約者エイダ・ニミドカ殿を暴漢から救った際の縁を今でも大切に思って戴いているとはありがたい」


 ロッセッラの言葉を聞いた瞬間、ドゥシャンの顔に翳りが見えたが、今はない。仁の返しに、納得した様だ。ロッセッラの方も、アッスントの策が失敗に終わった事を喜んでいる様に感じられる。


ナスターシャの言う通り

ロッセッラが、協力者か

それにしてもこいつ

スゲ〜精神力だな

こいつもデルフィーナらと同じ物を

装着しているはずだが、全く乱れないな


ここで乱れさせても可哀想か

せっかくの協力者だし


「さて、これからの話をいたしましょう。まず、使節団の方々には、我が屋敷に逗留していただきます。屋敷は、スリギアにある為、我らが同道致しましょう。それから、エウロパ王家の使節団への詳細な対応を話します」

「畏まりました」

「今日はもう、お休みになっても良いですよ」

「ジン閣下、召喚勇者12名が来ております。お会いになっては如何でしょう?」

「そうですね。私には役目がありますので、屋敷に戻ってからと致しましょう。ただ、同道してきた仲間は、会っても良いでしょう」

「そのように致します」

「出立は明朝、それまでは、自由に」


 簡単な対談であったが、これで一旦は終了。広間を出て、葵たちに、美奈子やすみれに会ってきていいと伝える。「仁君は?」と聞かれたが、公的な立場である事を伝え、会って話すのは屋敷に戻ってからである事を了承させた。


 陽斗は別として、約2ヶ月ぶりに全員揃った女子15人はパジャマパーティーに花を咲かせたようだった。


 翌朝、ドゥシャンらに見送られながら、アニバルを立った。ナスターシャの能力下にあるのは、やや違和感を感じる。仁は家紋付きの馬車に乗り、リリシアが馭者をしている。もう一つの馬車は、仁の馬車の前方にあり、凛が馭者で他のメンバーは交代で、周囲警戒をしながら、馬車に乗ったり降りたりを数時間ごとに繰り返している。その後ろに、使節団の5台の馬車群が続く形だ。使節団の馬車群の周りには、カリメイ第一近衛軍の100名の正規兵と召喚勇者が、警戒に当たっている。名目上、使節団のカリメイの紋章入りの馬車には、大使や副使らが乗っている事になっているが、正確には、猿轡さるぐつわをされて、声が出来るだけ外に漏れないようにされた状態で、メイドを含む19人が4〜5人ずつ詰め込まれているという状態だ。


 仁は現在、ロッセッラと対面していた。ドゥシャンの前では話せない内容などもあり、屋敷は屋敷で、いつ誰が来るか分からない状態の為、現在の状況となっている。


「すまないね。こんな場所で」

「いえ、閣下。あの場では話せなかったことです。致し方なきことかと」

「君が、ナスターシャのしもべとなっているとこは、聞いているよ」

「はっ、ありがたき幸せ」

「君にはまだまだ、協力してもらう。残り13人全員とテオルグをこちらに連れて来てもらわなければならないからね」

「はっ、仰せのままに」

「君は、何か望みはないのかい?」

「もし、宜しければ、アレに魔力をいただけませんか?」

「ナスターシャからは貰ってないの?」

「旅の間はくださいませんでした。閣下と無事合流出来たら、閣下から頂く事になっておりました」


ナスターシャめ


「分かった。では、後であげよう。その前に、ドゥシャンの前では話せなかった内容に移ろうか」

「はっ!まず、アッスント殿下よりお手紙がございます」

「うむ。これは、俺宛でいいんだよね?」

「はっ」


 仁は、手紙を開き内容を確認。溜息を着いた。手紙によれば、こちらの背信はバレているだろうということが書いてあった。もし、バラしていないのであれば、バラしておいて欲しいともあった。使節団がダンラオの街に着いたら、ロッセッラが、カリメイに連絡を送る事になっているので、その到着後、前第一・第二王子並びに前軍務大臣の悪事を公表、同罪として第一王女を含む使節団メンバーが流刑になったことを公布すると書いてあった。公布後、正式な使者を送るとも書いてある。


「ロッセッラ、既にカリメイに連絡は取ってある?」

「はい、閣下」

「ち、踊らされたな」

「申し訳ありません」

「いや、ロッセッラを責めていない。気にするな」


 さらに、手紙には続きがあった。大変申し訳ないが、大使・副使ら全員をお願いすると書いてある。なお、お礼として、女勇者12人をお渡しするとも書いてあった。


大使・副使ら全員って

デルフィーナとサトゥルニアはいらねーんだが


 仁は、ロッセッラの顔をじっと見つめた。ロッセッラは、徐々に顔を赤らめていく。仁は、単純に、ロッセッラの親愛度と忠誠度を確認しただけだったのだ。親愛度は、割と高かったが、忠誠度は、ナスターシャのしもべのせいか、半分を切っていた。しかし、ユニークスキルの影響で、1分間で4ずつ上がる。100を超えるのに、少々時間を要した為、しばらく見つめる結果となった。ロッセッラは、我慢が出来なくなったという風に聞いてくる。


「私の顔に、何かついておりますでしょうか?」

「いや、アレに魔力を注いだら、お前がどうなるのかと考えていた」

「まぁ、嬉しゅうございます。あ、体が喜びを感じてしまいました。申し訳ありません」


 むわんと室内に雌の匂いが広がる。


ジュリア並みに体が引き締まっているいい女だ

さすがは、将軍というところか


「構わないよ。さて、手紙の内容だが、了承し兼ねる。女勇者らは元々、こちらに招く予定だったもの。それを早々と送っていただいた点には、感謝するが、礼としてと書かれると、傲慢さを感じてならない」

「彼女らは放逐なさると?」

「全員ではないがね。デルフィーナ殿下とサトゥルニア殿下は放逐かな?どうしてもというなら、ロッセッラ、お前も礼として、欲しいが」

「嬉しゅうございますが、それでは、閣下の計画に支障がでるのでは?」

「出るな。だから、後日請求させていただくと伝えておいてくれないか?」

「全員が合流した暁には、私をと取ってよろしいですか?」

「俺の妻は、現段階で47人の予定だ。まだ増えるかもしれん。それでもいいならな」

「構いません」

「ありがとう。先ほどの話は、それで、了承だ。他には何かあるか?」

「ございます。こちらは、ナスターシャ様に、お借りしていたものですが、閣下に合流後、お渡しせよと仰せつかってございます」


 ロッセッラは、三つの「魔力の宝珠」を取り出した。ロッセッラは、元冒険者らしく迷宮系スキルの宝物庫アイテムボックスが使えるようだ。この宝物庫アイテムボックスとユニークスキル「アイテムボックス」との違いは、レベルにより最大量が決まるのか、魔力により最大量が決まるのかの違いと、内容物の時間停止機能の有無である。ロッセッラの宝物庫アイテムボックスのレベルは5。最大800個収納できるようだ。


 「魔力の宝珠」をそれぞれ裏返すと、10個の透明の突起が、7つ白色になっているものが1つと、6つ白色によりなっているものが2つある状態だ。罪人の証と連動している状態で、間違いないようだ。


「これの設定は?」

「すべて弱だと聞いています」

「ふーん。分かった。これは受け取っておく」

「ありがたき幸せ。これで、お役目は終わりでございます。そ、その、私のアレに、その」

「分かっているよ」


 仁の乗る馬車がさらに、雌の匂いが濃くなったのは、仕方ないことである。仁は身悶える姿を見て楽しんだ。ロッセッラは馬車に乗ったまま、スリギアの仁の屋敷に連れて行かれた。勿論、車内はナスターシャの能力で消臭済みである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ