第39話 三兄弟との手合わせと王女たちのお相手
いつも、読んでいただきありがとうございます。
ブックマークも増えており嬉しい限りです。
8/9あたりからPVがズガンと増えて驚いております。またノクターン寄りになっているのでしょうか?そんな意識は・・・、少しだけあります。
無意識に訴えかける程度の技法ですが。
ともあれ、たくさん読んでいただき感謝の極みです。本当に励みになります。
誤字や、助詞の間違い等ありましたら、ドシドシお待ち申し上げております。
修正する事で、文が良くなるのです。私にとっては、一字千金の価値があります。
よろしくお願いします。
2016/10/13 サブタイトルの話数変更
仁は、大公や王女らと昼食を取っていた。食事をしながら、話した産業の事は、皆真剣に、耳を傾けてくれた。さすがは、カイロン王が信頼する貴族たちと言ったところか。カイロン王は、第三王女溺愛の親バカ王としても有名だが、民衆を慰撫し、各種ギルドと連携を保ちつつ、労働や産業に力を入れて、国家安寧を保っている智王と言える。
そして、第一、第二王女殿下も真剣だった。初めは、少し所在なさげに聞いている風だったのだが、この世界にない技術を説明する過程で、イメージ映像を立体魔法で、絵であったり、動画風の映像であったりと見せはじめた辺りから、真剣さが増した気がする。
「ジン殿、質問をしてもよろしいですか?」
「なんでしょう、マデーレン殿下」
「先ほどの木綿工業ですが、労働者の職を奪わないのでしょうか?」
「奪いますよ。特に、高性能の機織機ができるほど。そこは、別の職を用意するか、保証する為の政治などが必要になります。ただし、全て無くなるとは思っておりません。機械で作ったものと手織りの物と、良し悪しはまた別物です。才能の高いもの達は残るでしょう。そこについては、商業ギルドと労働者ギルドに、スキル向上の手段を伝えております。うまく立ち回れば、被服職人の失業を出来るだけ少なく出来ると考えております」
「ふむふむ。避けられぬなら、その対処法も考えておく方が良いということですね」
「そうですね。良策を用いるつもりなら、それを上回る策を10は用意して行うべきだと思いますよ」
「それは、産業だけではないですよね?」
「勿論、政治にも軍略にも謀略にも通じます、所謂、先読みですね」
「あ、あの私も質問があります。その先ほどの産業とは異なる質問なのですがよろしいでしょうか?」
「何なりと、マーガレット殿下」
「私には、魔法の才能が乏しいのですが、ジン殿は、生まれた時から、才能に優れていらしたのですか?」
「ご存知かと思いますが、私は、召喚者。召喚元の世界には、魔法がございませんでしたので、この世界に来てからですよ」
「世界10傑の方々で、唯一魔法をお使いにならないのは、たしかブロンクス様だけですが、それはなぜなのでしょう?村人だったから、あえて使われなかったのでしょうか?」
「う、申し訳ありません、それは、説明できかねます」
「あ、ああ、謝らないで、ごめんなさい。絶対に聞きたかったわけではないのです。ジン殿と仲良くなりたくて、その、何かを聞かねばと切羽詰まって、ごめんなさい」
「落ち着いてください。深呼吸して。はーい。落ち着きました?」
「はー、はー、はい」
「マーガレットやるわね。先ほどの魔法なのですけれど、私もやや魔法の才能が劣るのですけれど、ジン殿のパーティは、魔法属性に優れた方ばかりと伺っております。皆様も、ジン殿と同じように、人生を何度かなさってきたのですか?」
「いえ、私だけですよ。仲間が、優れている理由はちょっと大きな声では言えないので、マデーレン殿下、お耳をお借りしましてもいいですか?」
「はい(喜)」
「(小声で)私の鑑定では、その人に眠る魔法の才能を見ることかでき、その才能の開眼を促せるからです」
「本当に?私にもして欲しいですわ」
近い近い近い!
おっほ、胸当たってる!
「マデーレンお姉様にだけずるいです!私も私も!」
「では、マーガレット殿下、お耳をお借りします。 (同じ内容を小声で)」
「まぁ、凄いわ!私もお願いしていいかしら?」
あはっ、腕を挟まないで
気持ちいいけど
「教え方が少し特殊でして、ここでは憚られます。我が屋敷に、逗留可能なら、お教えできるのですけれどw」
女の子は、魔力を通すと
喘ぐんだよなぁ、色っぽく
王女が泊まりに来ることは無いだろうし
これくらいの軽口はいいだろう
「「まぁ、いいのですか?」」
「え?本当に?」
「少し、宜しいか?」
「アラン、殿下らのお邪魔をするな」
「しかし、父上」
「アラン、ちょっとこっちへ」
≪聞き耳スキル発動させました≫
「アラン、マデーレン殿下との婚約は解消になる可能性がある」
「そういう事は、早めに言って下さらないと困ります。ジン殿の不興を買うところでした。嫌ですよ。イーフォに続き、アルヒンマキ家の子どもたちは英雄ジンと相性が悪いとか、変な噂が流れたら」
「それは、困る!うちからもアポレナ辺りに身の回りの世話をだな・・・」
わー、なんか嫌な話してるよ
婚約解消?!
マデーレン殿下とアラン卿が?!
それってもしかしなくても俺のせい?
でも、ここで聞いたら、失礼になるから
マデーレン殿下には聞けないし
「ジン殿?何か難しい顔をされて、どうされたのです?」
「お姉様が、あんまりくっついているから照れているのでは?」
「マーガレットこそ大胆ね。前はあんなに」
「やめてください、お姉様。ちょっと偏見を持っていたというか、同い年で才能豊かなジン様にヤキモチを焼いていただけなのです、あ!あわあわあわ、ごめんなさい。ごめんなさい」
あ、マーガレット殿下って可愛いかも
俺の周りにいないタイプだ
「マーガレット殿下、落ち着いてください。こんな事を言っては失礼かと存じますが、 (小声で) マーガレット殿下は可愛いですね」
「え?はぁ!ほ、ほ、本当ですか?むぎゅ〜っ」
うはっ!胸が!!
予想どおりのリアクション!
いいよ〜!!
「む、マーガレットに負けている気がする」
あー、綺麗な人が焦ると隙が出来て好きかも
「マデーレン殿下、お綺麗な方がそんな顔をされたら、困りますよ」
「え?あ?はい」
顔真っ赤
年上なのに可愛いとか思っちゃうよ
「(小声で) マデーレン殿下も可愛いんですね」
「はぅ!そ、そうかしら。あら、嬉しいわ」
手!そこに手はヤバい!
色々バレてしまう!
「マデーレン殿下、ここでは」
「あ、はい。この後、マーガレットとともにお屋敷に伺ってもいいかしら?」
ほわ!だから、そこに手はヤバいって
なぞらないで!!
「勿論、歓迎致しますよ」
「「本当?!嬉しい〜〜」」
「二人とも、大胆だね。兄としては困ってしまう」
「エンキドゥお兄様、もうお時間ですの?」
「うん、そうだよ。申し訳ないねジン君。これから、我ら三兄弟と手合わせをしてもらう。といっても、弟たちは、負け確実なんだけど。僕は、武術でも魔法でも無い戦いだからね。これくらいは勝たないと」
エンキドゥ王太子の言葉を皮切りに、大盤パノラマの地形図が用意された。所謂、戦略将棋と呼ばれるものである。古代中国の戦記物などに出てくる軍師たちがよくやっているあの遊戯だ。古代中国の戦記物だと、地面に四角を書いて、その中で、それぞれがだいたい20個前後の小石を動かし、仮想合戦をするというものが描かれる。だが、シトドラヴの戦略将棋は一味違う。魔法で、兵に見立てた人形たちを動かす。無属性魔法で動かすため、村人でない限り誰でも楽しめる遊戯である。ただし、軍事関係者が行うと、ただの遊戯とは異なってくる。シトドラヴの合戦の場合、この遊戯合戦の結果が、軍師を決めたりするのだから面白い。
さて、今回用意された遊戯盤の地形は、シトドラヴの歴史上でも有名な合戦の地形である。シトドラヴ統一戦と呼ばれた最終合戦の地形であった。
ふむ
俺は魔族側と
王太子が人種連合軍をするのか
さて、あの合戦には攻略法があるのだが
分かっておられるかどうかだな
エンキドゥ王太子はよく研究しているようで、うまく合戦を再現していた。
再現だけではダメですよ
「な?!その陣は車懸か!!うまく扱えなければ、自滅を・・・。しないか!!まずい、引かねば、負ける。んん?なぜ、こちらの後軍が動かなない?何?裏切りだと?バカな戦略将棋において、裏切り誘発は、最難関技巧。あ、まずい中軍か元 後軍に押されて、ああ!前軍が魔族軍に。仕方ない、四方に霧散して再集結を。なぁにぃ?!八卦陣いや、八陣の中心に魔法兵が、これは九陣?いや、八陣が回転している?!ということは、九陣車懸か?!あはっ、負けたぁ」
そう、あの合戦は、魔族からの埋伏兵が軍内にかなりの数紛れ込んでいた。だから、ジンラードはうまく裏切り誘発を避けなければならず、かなり苦慮した事を覚えている。
魔族と言っても見た目は人種だからな
「もう一戦お願いしてもいいか?」
「どうぞ、逆にします?それとも、別の合戦の兵科をこの地形でやります?」
「逆で願したい」
「分かりました」
数分後。
「また、負けた」
「次いきます?」
「あ、ジン君。兄上は、初めての2連敗で凹んでいるようだから、外で、魔法戦と行かないか?」
「分かりました。そちらは一人です?連結を使われても良いですよ?」
「一対多を望むのか?いや、一対一でお願いしたい」
「分かりました。うむ。結界が弱いので、強化しました。これて、私の魔法に耐えられるかと」
魔法には属性と系統がある。属性とは、大魔導師ギブソン・ネグローニ・ルシアンが定めた無属性を含む攻撃14属性と生活魔法または、生活魔法まで含めた15属性を指す。系統とは、どのような形状をしているか。ボール系、ニードル系、アロー系、ブレイド系などものの形や武器の形から、ウォール系のように守りに使えるものまで多種多様にある。
仁はユニークスキル「同列魔法」と「並列魔法〈全属性〉」を組み合わせる事で、一度に14000発の攻撃魔法を使える。今回のラドカーンとの手合わせには、アロー系14000発を宙に浮かべて対峙した。
「すいません。参りました」
「「キャー!ジン様すご〜い」」
あれ?
ついには様付けで呼ばれるの?
これは、マヂで、嫁に貰わないと
ダメなパターンでは?
仁は手を上にあげて左右に振り、宙に浮かべたアロー系14000発をキャンセルする。そして、近づいてきたラドカーンに頭を下げ、話しかける。
「申し訳ありません、殿下。魔法戦を望まれていたのでしょうが、魔法戦にさせない戦略をとりました」
「いやいや、それも作戦ですよ。しかし、素晴らしいです。やはり、伝説の通り全属性が使えるのですね」
「はい。全属性使いたいですか?」
「本音を言えばそうですが、扱いきれるか不安です」
「なるほど。使いたいと思われたら、言ってくださいね。『王宮級全属性の指輪』というアイテムをお貸ししますよ」
「そんなものが?」
「遊びで作ったものですけどね、アラウンド・ザ・ワールドメンバーの為に。あまり使い勝手が良くないんですけどね」
「うーん。いや、良いでしょう。分不相応な気がする。さて、次が最後です。最後は弟キュクレイン。先日まで剣聖の弟子だったんですけどね。マフレナさんがあなたに負けてしまったので、称号を失った状態です。武器も使われるとか。魔法ではなく、武器でお相手をしてあげてください」
「分かりました。お怪我を負わせるわけには参りませぬので、木刀でお相手しましょう」
「いざ!尋常に、勝負!!」
勝負は一瞬で終わる。仁は走り寄ってきたキュクレインの真横に縮地で寄せ、側面からキュクレインの剣の鍔に合わせて、唐竹割りによる武器破壊の一閃、剣の重みを失い、バランスを崩して、キュクレインがよろけたが持ちこたえる。ザッとキュクレインは後ろに飛び、2本目の剣を抜こうとする目の前に、縮地で寄せ、剣を抜こうとする手を左手で押さえて、右手に持った木刀を首筋に当てて聞く。
「続けますか?」
「参りました」
「ありがとうございました」
あまりにもあっけない三兄弟との手合わせに、武官らが渋面を作っている。魔法戦は目に見えて、結果が分かったから仕方ないとしても、エンキドゥ王太子はエウロパ元帥であり、キュクレイン殿下は近衛兵でもある。エウロパの顔を潰されたようなものだ。だが、この三兄弟に、それぞれの分野で、右に出る者はいない為か、「自分が」とはならなかった。
「いやー、ジン殿は強いな」
「陛下、恐れ入ります」
「しかも、本気ではなかろう?」
「ええ、まぁそうですね」
「神種召喚も無しで、その強さは恐れ入る」
先ほどまで渋面を作っていた武官たちが、ハッとした顔をした。仁には神種召喚があった事を失念していたようだ。その後、数時間、戦略や陣形、魔法、武術について話をし、帰途に着いた。
軽口のつもりだったのに
仁はきゃいきゃい言いながら、抱きついてくる両殿下と馬車に乗り、真向かいにやや睨んでくるエルナから目をそらしながら、後悔していた。