第38話 エウロパ王家とオータム・リーブス
2016/08/13 10万PV突破記念投稿
19時25分頃10万PV突破致しました。
明日の予定でした本話数を前倒しで投稿します
本日12時にもいつもの投稿がありますので
もし、お読みで無い場合は、戻るを押して、読んでください。
この話の前置きなので、読まなくても筋は通ってますが。
感謝感激雨霰!!
そんな気持ちの記念投稿です!!
誤字や、助詞の間違い等ありましたら、ドシドシお待ち申し上げております。
修正する事で、文が良くなるのです。私にとっては、一字千金の価値があります。
よろしくお願いします。
2016/10/13 サブタイトルの話数変更
SSSランク昇格の翌日、朝8時頃、屋敷に、ゾウハル家の馬車が来て、セバス・チャンを名乗る執事が迎えに来た。セバス・チャンを応接室に通す。
このセバスの事は、日本生まれの自分としては、かなり怪しく思ったのだが、名前の由来はもっと眉唾ものだった。この蛇人族の老人、第三十代セバスさんは、数十年前にあった「第三十回、執事による執事の為の、名譽ある執事を決める大会」に優勝し、チャン士爵家を継いだという。それまでの名前を捨て、セバスと名乗ることになったというのだ。
怪しすぎる
本当のことなら、
初代は絶対日本からの転生者だろう
「ジン様には、お礼をと思っておりました。お会いできて、嬉しく思います」
「セバス殿?本日から同位になるとはいえ『様』付けは、おかしいのではないですか?」
「いえいえ、孫の命を助けた者に、『様』を付けるのは当然です」
「孫?!」
「はい。マフレナは私の孫でございます。立場上、私の血族には、大会を経、息子が優勝せねば爵位を譲れません。勿論、継いでもらうため、執事の技は伝えておりますが、私以前の二十九代の間に、血族で継いだ者はおりませぬ。それ故、血族には、執事以外の道も作ってはありますが、さすがに孫娘となると、どうなるか分からず、自由にさせて参りました。その結果、ジン様とそのご友人を襲い、殺されても仕方ないところを奴隷として生かして頂いております」
マヂで大会があんのか
「な?!マフレナが、セバス殿の孫?!奴隷解放を・・・」
「いえいえ、それは孫の罪、罪は報いねばなりませぬ。孫の立場は、そのままで結構です。罪を報いたと思った時に解放頂ければ、結構です」
「なるほど、それで、奴隷を望んだのですね。セバス殿の教育の賜物だったわけですか」
「いえ、私の教育では、『女子たる者、己が責にて、奴隷となるようならば、性奴隷としてでも、生き延びるべし』として、房中術を仕込んであります。性奴隷になれぬ者は、私の教育が行き届いているとは言えませぬ」
お前の仕業か!
「なるほどですね。却下したのは私です。女性奴隷はなぜか私の性奴隷になりたいようですが、そうすれば、他の女性従者から殺され兼ねません。それ故、性奴隷にはしないのです」
本当はちょっと違うけどな
女性全員が性奴隷を望んで
全員を性奴隷にしなきゃいけなくなりそう
なんて言えるか!
「なるほど、そういう理由でしたか。望みはしたのですね。良かった」
良かったって
普通の反応じゃねぇーよ?
あ、そういう教育したならそんなもんか?
いやいや、毒されるな俺
孫が性奴隷になる事を望むのは
おかしいだろ!
「いつになるか分かりませぬが、解放しましょう」
「孫が望めば、そうしてくだされ」
こいつ、分かってやがるな
望まないだろう事を
おれも薄々そう思っているが
「さて、ジン様、談笑もそろそろ終わりにしましょう。衣装はどうなっておりますかな?」
「一応、あるにはあるのですが、王の御前に上がる物としては、やや力不足なのではと。エルナ、衣装を」
「はい」
仁は、セバスの目の前に、2着の衣装を出す。
「いい衣装ではないですか。ふむ。人気被服職人の作ではないですな。うむ。やや、流行より古いが、なかなかシックな感じですな。こちらのお衣装は、流行に沿った作りですが、作りとしては、やや男性向けではない感じですかな?前者は男性が作って、後者は女性が作った感じでしょうか?」
「さすがですな。前者は私が作ったもの。後者ははエルナに作らせたものです」
「なんと?!ジン様は、被服も?何でも出来ると聞いてはいましたが、ここまでとは。うむ。このままでよろしいと存じます。それでは、早速着替えていただき、エルナさんも連れて、王城に向かいましょう」
エルナは、仁が作ったメイドドレスに身を包み、馬車に乗り込んだ。王城に着くと談話室に通された。ギルマス、ダーヴィット夫妻、ゾウハル伯爵を始めとする、数名の貴族がいた。元々、内政官や武官として、王都にいた数名らしい。そのうちの一人、教科書に出てくる、銅像や西南戦争の政府軍総裁の時の大久保利通のような髭をした壮年の貴族が近づいてくる。
「初めましてかな?ジン殿、噂はかねがね、各方面から聞いているよ。以前は、息子イーフォを助けてくれてありがとう」
この人がアルヒンマキ大公アダルベルト卿か
「初めまして、アルヒンマキ閣下。私はジン・ミツルギ、本日より、貴族の一員となります。どうぞお見知りおきを」
「あ、いや、しもうた。名乗りを忘れてしまうとった。すまなんだ」
「いえいえ、大公ほどの方を存じあげねば、エウロパの貴族にはなれますまい」
「はっはっは、面白いの。ライムントが気に入るわけよ。ルヴィータが敬うわけか。うむ、気に入った。ところで、バルトロ卿に聞いたぞ、いつか、商売を始めるとか、あの品は凄いのぉ、商売を開始するならうちにも欲しいぞい」
「畏まります。ただ、まだどれ位の量が出来るか分からぬもの。しばらくお待ちいただく事になりましょう」
「アルヒンマキ閣下、我らとて、あれは欲しいものですぞ」×5
アルヒンマキ大公の後ろにいた5名が、声を上げる。ブラホスラフ・ズィーカ侯爵、フゴ・ヴィトラチル伯爵、ヨゼフ・ウルバネチル子爵、クレメント・トゥピー男爵、クリトリアーン・ドゥーマ男爵。いつぞやの貴族パーティの父親大集合である。
「息子から手紙で聞いておる。イーフォ殿の手前、失礼な態度であったとか。息子に変わり、お詫び申し上げる」×5
あれ?
もしかしてイーフォ以外は
いい人たちだった?
しまった偏見で見てたよ
「あ、いや、申し訳ありません。純貴族主義の方々かと思っておりました。私も失礼な態度でありました。お詫び申し上げます」
「こりゃー参ったな。ワシの息子のせいじゃろ。ルヴィータに聞いたが、あやつはダメかのぉ」
「ルヴィータがそんな事を?!」
「いや、ルヴィータは言わんよ。じゃが、親だからの分かるわい」
「左様でしたか。ここで会ったのも何かの縁、先ほど話に出た商品1月分を皆々様に、おすそ分けいたしましょう」
アイテムボックスから、ティッシュ箱詰めを取り出す。販売用として、木箱を作っている。木箱は、初回に限り、サービス品として付いてくる。勿論、何かあったときのために、木箱ごと欲しいと言われれば、売れるように用意はしてある。二回目以降は、詰替用での販売になる。たて218mm×よこ204mm 枚数400枚(200組)が入っている。
「のほー、さわり心地が堪らんのー」×6
「ありがとうございます」
「これひとついくらで売るのかの?」
「予定では、小銀貨5枚ほどでしょうか?」
「な?!そんなに安く?!」
「こちらの平民バージョンが小銀貨1枚ですからだいぶ高いですよ」
と言っても日本円にしたら、10万円だ
チリ紙一箱10万円ってどんだけ高いんだ
「チリ紙はチリ紙で良いものよの〜。そっちも幾らでも買うぞ!」
「今渡したものが1人分です。出来ればもっと安くしたいのですけどね。ライムントと相談の上、市場価格を設定しますよ。もっと安くするかもしれません。ただ、まだ量産体制が整っておりませんので、机上の空論でしかないのですが」
以前述べた、平民の1ヶ月小銀貨3枚での生活と言うのは、最低限度の生活基準である。100人程度の村でも、毎日農作業に勤しんでも、小銀貨5〜6枚にははなる。ただし、行商人が来ないと、小銀貨3枚以下に落ちてしまうが。そういう意味での、最低ラインなのだ。
各街村島には、少なくとも労働者ギルドと冒険者ギルドがある。労働者ギルドにさえ登録してあればギルドから行商人が来る連絡は入るので、その日までに作物等を納めていれば、月末までには、収入を得られる仕組みだ。僻村や島は何があるか分からないので、絶対に行商人が来るという保証はない。ちなみに、スリギア規模の街であれば、商品流通が滞ることは、ほぼ無い。この「ほぼ」と言うのは、災害級または災厄級の魔物の出現によって、齎される流通の滞りを指す。
さて、大公らとしばらく談笑していると、セバスが現れた。王の準備が整ったという。まずは、大公ら数名の貴族が謁見の間へ向かう。続いて、ギルマスらギルド関係者が向かい、最後に仁が謁見の間へ向かう。謁見の間の前で、エルナは待機する。
謁見の間に入室すると、数歩進むとダーヴィットらの少し後方に、片膝をついた状態で、俯いた。数分ののち、王が仁に向かって言う。
「冒険者ジン・ミツルギ、表を上げよ」
謁見の間には、カイロン王を中心に左右に第一王妃マルグリット、第二王妃アンヌが座り、マルグリットの右側に第一側妃ジャンヌが、アンヌの左側に第二側妃マドレーヌが座っている。さらにマルグリットとジャンヌの右側に王太子エンキドゥが座り、アンヌとマドレーヌの左側に第一王女マデーレンが座っている。カイロンの次男で宮廷魔導師のラドカーンと三男で近衛第二軍所属のキュクレインは、エンキドゥの横に立ち、第二王女マーガレットと第三王女エリシアは、マデーレンの横に立っている。
壁際に並ぶ貴族たちは、右側にアルヒンマキ大公、話したことのない初老の男性貴族、ゾウハル伯爵、ウルバネチル子爵、ドゥーマ男爵の順に並んでいる。左側には、ズィーカ侯爵、ヴィトラチル伯爵、話したことのない男性貴族が2人、トゥピー男爵が順に並んでいた。
王の顔を直視するわけにはいかない為、仁は、視点を王の手前に、鼻か口を見ているような視線にしていた。顔を上げる前、仁は右手の中指を見ていた。仁の右手中指には、とある指輪がされている。それは、約1000年前のオータム・リーブス時代に交わした悪友から送られた家紋を示す指輪である。その悪友の子孫に正式に会うのだ。この指輪はしなければならないと思った。その悪友の2つの家紋を真っ二つに割り、真ん中同士をくっ付けた中心に、紅葉を象った家紋がある。
カイロン王もさることながら
息子たちにも悪友の面影があるな
お前は何年続くか分からないと言ったな
1000年続いているぞ!
お前は中興の祖だぞ!
ラジェスタ!
仁が物思いに耽っていると、さらに王が言う。
「ジンよ。前へ」
仁はダーヴィットらより少し前に進み、また片膝をついて、俯こうとした。
「もそっと前へ。顔は上げたままで良い」
これ以上は、叙勲の際に近づく位置だ。一瞬戸惑いつつも、前へ進む。
「そこで良い」
仁は、顔を先ほどのような視線にして、片膝をついた。大公ら貴族は感心したように頷いている。大公のすぐ隣にいる初老の男が言う。
「ジン・ミツルギ、王の御前に進め」
「はっ」
「ジンよ。汝に聞きたいことがある。そなたは己が世界10傑が、生まれ変わりと言った。エウロパにとって、10傑の内、オータム・リーブスは大きな意味を持つ偉人。それを示・・・、そ、その指輪はぁ!!」
あー
あいつと色々やらかしたからね〜
「直言失礼致します。これは、我が友に貰いし、家紋入りの指輪にございます。この身は、15歳なれど、魂はシトドラヴに12000年ほど前より移ろいておりますれば、1000年前の指輪にも思い出はございます」
謁見の間が騒めく、アルヒンマキ大公が仁の前に進み出た。
「王よ、失礼致します。ジン殿、指輪を見せてもらえぬか?」
仁は指輪を抜き、アルヒンマキ大公に差し出す。
「間違いない。これは伝説の指輪!我がアルヒンマキ家と王家の家紋を足した背景の真ん中にオータム・リーブスを示す紅葉の紋様が!!!」
「うむ。ジンよ。そなたには、王家とアルヒンマキ家が1000年の間預かってきた領地を渡す。また、爵位の用意もある故、後日、式典を執り行いたいが、どうか」
「私はしがない冒険者。しばらくは、冒険者を続けたく存じます。また、爵位につきましては、どの程度の地位が用意されているのでしょう?」
「オータム・リーブスは、我がエウロパ王家の大恩人。大公家を用意しておる」
「いきなり、大貴族が頭の上に来ては、乱を起こす貴族があるやも知れませぬ。徐々に上げるというのではいかがでしょうか?」
「なるほど。何か掴んでいるということか?分かった。どんどん仕事を任す故、励め」
「はっ」
叙任式後、大公らと幾つかの産業についての話をする。まず、農業について、堆肥の作り方、畝の作り方と間隔、農耕馬の導入、鉄製農具の導入、3周期輪作(ホズホメジ→モドハオウ→ダシヤメピまたは、ボヅジガコ→モドハオウ→ダシヤメピ)、4周期輪作(ニペペクヴ→ヘライメチ→ダシヤメピ→モドハオウまたは、ホズホメジ→ナヒニモリ→グオサヲン→リピゥォグ)、牧場経営の導入を伝えた。以前、述べたかもしれないが、この世界の文明は、魔法に頼りすぎていて、色々劣っている。少しでも効率化する為、また、預かってもらっている土地の収入を上げる為であった。5年10年の計画が必要であることも伝えてある。なお、輪作の所で出てきた作物だが、シトドラヴ人種語の為、日本語訳をつけておこう。
ホズホメジ:トウモロコシ
モドハオウ:小麦
ダシヤメピ:クローバー
ボヅジガコ:煙草
二ぺぺクヴ:カブ
ヘライメチ:大麦
ナヒニモリ:大角豆
グオサヲン:燕麦
リピゥォグ:綿
続いて工業については、木綿工業として、紡績技術、織布製造法、魔法及び魔石を使った蒸気機関作製法、綿工業に必要な機械や製鉄技術、また原料としての鉄鉱・銀鉱・金鉱・諸鉱脈の採掘技術、坑道掘削技術、現段階ではゴミ扱いになっている石炭の利用方法。さらには、それらの原料や製品を市場に運ぶための交通機関の改良(運河と蒸気船の利用、鉄道と機関車の作製法)などを伝えた。
商業ギルドで進めている銀行システムもおそらく、役に立つはずだ。ちなみに言うと、上記内容は、魔族領では、すでに行われていることでもある。その事も大公らに伝えた。魔族領との交流は、貿易のみで、産業技術は、全く入ってこない。それは勿論、仁がジン・ブラド・レイ時代に構築した技術流出防止システムの成果である。