第14話 ダーヴィット、ライムントとの出会い
新しい場所で新しい生活を始めると
いい出会いも多いですよね。
今回は、そんな感じのお話です。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
エロを削除したら、PVが600以上減りました(>_<)
でも、仕方ありません
これが本当の実力でしょうから
それでも、ブックマークは徐々に増えてます
本当にありがたい事です。
これからもよろしくお願いします
2016/10/13 サブタイトル変更
仁たちは、順調に旅を続けた。ティアンルから村から東に馬車で5日進みダンラオの街到着。ダンラオの街からさらに東に馬車で4日進み、ドアラン村到着。ドアラン村から東に馬車で4日進み、アニルバの街到着。アニルバの街からさらに東に馬車で3日進み、スリギアが見えてきた。
エウロパの首都スリギアは、人口30万の大陸最大の大都市である。一番の特徴は、2つのダンジョンによって栄えた都市であること。ダンジョンが、都市にあることは、決して珍しい事ではない。ダンジョンが発見されると、冒険者たちが集まってくる。冒険者たちに商売する者が集まり、村ができ、町が出来、都市が出来る。まぁ、途中で攻略され、ダンジョン機能がなくなる形のダンジョンだった場合、衰退し元の荒野に戻るのだが。世界各地に塔型ダンジョンや洞窟型ダンジョンがある。人族には、あまり知られていないが、種族の里にも、神域型ダンジョンというのもある。それは、さておき、スリギアには、塔型ダンジョンと洞窟型ダンジョンが両方ある。
どちらが先に見つかったのか?という疑問は、スリギアの街の作りを見れば一目瞭然だろう。スリギアの街は、やや歪な楕円形になっている。中心点のうちの片方は王城で、片方は塔型ダンジョンである。王城の北側に洞窟型ダンジョンがあり、塔型ダンジョンは、かなり南に位置する。元々は王城を中心とした綺麗な円型都市であったらしい。洞窟型ダンジョンの恩恵で8万人前後の町であったとか。それが突然、そり立つように、かなり近場に塔型ダンジョンが出来た為、その周りにも町を作り、合併させて街にしたのだとか。考えてみれば、かなり危険な街づくりだ。魔物が溢れ出すみたいな発想がなかったのだろうかと疑問を呈したい。まぁ、街づくりに移行するまでに、200年の時間を有したと歴史書が言っているので、考えがなかったわけでもないのだろう。優柔不断な暗君が何代も続いたのでなければ。
スリギアに到着する日の馭者は、エルナだった。エルナは元々「馭者は私が!」と言い出すだけはあり、かなり操馬スキルが高い。安心して、任せていられる。その日は、たまたま、馬車の中で考え事をしていた。もちろん、これからの事である。旅の途中、色々やりたい事が出てきた。商売をするにしてもしないにしても、拠点が必要であり、それを宿屋にするか、土地を買って、モデストの元屋敷を設置するか。土地を買うにしても、冒険者としての知名度を上げてからの方が良くないかとか、色々と考えていた。その時、突如馬車が揺れる。スリギアの門が近いというだけで、何もなかったはずだが?すると馭者席のエルナが声を上げる。
「げっ」
ナスターシャの父親が来た時みたいな声出して
嫌な予感しかしないのだが
「どした?エルナ」
「あ、ご主人様、すいません。あ、あの〜〜、とても困った事がありまして」
「何があった?」
「いえ、私事なのですが、その〜〜」
珍しい
こんな歯切れの悪いエルナは初めてじゃないか?
「何があった?」
「スリギアの門前に家族が勢揃いしてまして、何か捕獲しようと待ち構えているような」
「何?!」
仁は馬車から飛び降りた。スリギアの街の手前に、いかにも冒険者って感じの20代と40代の厳つい男が2人、剣と斧を構えている。また、いかにも魔導士って感じの10〜20代とアラフォーな女性が2人、杖を構えている。
男2人は、仁を目視すると、駆け出し始めた。女2人は、同タイミングで、呪文を詠唱し始めた。仁も無詠唱で魔法を発動させる。
《ひふみよいむなや
こともちろらね
しきるゆいつは
ぬそをたはくめか
うおゑにさりへて
のますあせえほれけ
『15モーティポベアリア』》
仁の2台の馬車を結界が覆う。男たちは、仁らを見失い迷走を始める。女たちの魔法は、先にタゲられていたせいで、仁たちの馬車に向かってくるが、結界に当たり消失した。仁は、訓練用に作っておいた木刀を手に持つと、迷走中の男たちが、仁たちの脇を通り過ぎたところで、結界を解除し、2人の男を気絶させ、縮地を使い、魔導士の背後に回る。
「チェックメイトです。エルナのご家族の方」
「「ふぇ?!」」
「どうします?続けます?続けるなら、あそこに寝っ転がっている、男2人と同じようにしますが」
「え?あなた?!」「お兄ちゃん?!」
んー、
アラフォーはエルナの母か?
って事は、40代男が父親で、
20代の男が兄か
40代の男の方が先に目覚めたようだ。仁を睨んでいる。しかし、見ようによっては、妻と娘が人質だ。諦めたように、大笑いを始めた。
「ガッハッハ。負けだ負けだ。あんた強いな。おい、クンツ起きんか。それでもAランクか?」
「ふぅ、どうぞ、御心配でしょうから、お兄さんの方へ」
「「え?いいの?」」
「いいですよ?何の勝負かは知りませんが、決着はついたようですし」
「「ありがとう」」
エルナが気まずそうに近づいてきた。エルナを安心させるように、頭を撫でる。エルナは心地よさげに目を細めた。はっと気づくように謝ってくる。
「家族が、ご迷惑をお掛けしました」
「ん?いいよ。心配だったんだろ?大事な末娘が、どこの馬の骨ともしれない男に連れられて来たから」
「あ、はい。それもありますが、その〜、手紙のせいかもしれないです」
「そう言えば、手紙出してたなティアンルで。まずい事書いたのか?」
「仕えるべき主人という意味で、運命の人に会ったと」
「あー、仕えるべき主人の部分は?」
「書いてないです」
「なるほどね。仕方ないんじゃないかな?エルナだし」
「ご主人様ぁ」
エルナが頽れた。
ちょっと、お仕置きが過ぎたかな?
エルナが、家族と話し合った後、二斧装備の厳つい父親ダーヴィットが、話しかけてきた。後方に、正座したエルナと申し訳なさそうなエルナの母、兄、姉がいる。
「ジンさん、すまねーな。聞けば、親父もあんたに仕えたって言うじゃねーか。うちの色ボケ娘のせいで、変な風にあんたを見ちまった。申し訳ねー」
「構いませんよ。あなた方にとっては、大切な娘さんを雇ったどこの馬の骨ともしれないやつでしょうし」
「そう虐めてくれるな。そうだ、ジンさん。あんた、このスリギアで何かしたいもんでもあるか?無いなら冒険者にならないか?ソロでも、あんたの仲間とでも十分やっていけるだろう」
その言葉にエルナの兄クンツは大きく頷いているのに対し、エルナの母ナディヤとエルナの姉ニコルが噛みついた。
「あなたずるいわ!ジン様は、お義父様が心酔している賢者マジク・ジンの生まれ変わり、先ほどの魔法も見たことも聞いたこともない稀有な魔法!是が非でも宮廷魔導師に迎え入れたいわ!」
「そうよそうよ!宮廷魔導師とは、いかなくても、魔法士ギルドに参加して、魔法の研究や後進の育成に寄与してもらいたい!出来るなら、私を弟子にしてほしい!」
「弟子なら、私もしてほしい!」
「あー、高い評価ありがとうございます。魔法士ギルドは別に加入しても構いませんが、今の所、研究や後進育成はいいですかね〜。また、宮廷魔導師にもあまり興味無いので、今回はお断りします。弟子は、落ち着いたら考えましょうかね。そうですね、今は冒険者になろうかと思ってます。ただ、いずれは、こういったものを売り出す為、商人も考えていますが」
仁はアイテムボックスから、紙3種類と鏡を取り出した。やはり、エルナの家族にも大好評だった。その日は、エルナの実家(豪邸)に泊まらせて頂いた。お詫びの意味を込めて、ご招待されたのだが。
翌日、ダーヴィット氏と共に、不動産へ。不動産従業員さんは、元SSランクで、現冒険者副ギルド長が一緒に来たせいか。かなりいい物件を提示してくれる。いずれ、商売を始めることも考えて、商業区と工業区に近いところを希望する。出来れば、土地だけを。まぁ、過疎化の進んだ町や村じゃ無いのだから、大概は家付なのだが。王城近くに絞らなければ、あるにはあるが、仁にとっての最良物件とは言えなかった。仕方ないので、一番大きな家付の土地を買いたいと伝える。
「ここですか?」
不動産従業員は渋い顔をして、土地の資料と仁の顔を見、さらにダーヴィットを見る。おそらく、支払い能力を考えて無理だと判断した為だろう。仁はそんな事はお構い無いしに聞く。
「いくらだ?」
「いやー、無理だと思いますよ?あなたがどれほどの能力や財力をお持ちかわかりませんが、普通250年ほど分割しないと無理では?」
「庶民の1ヶ月の生活費が小銀貨3枚として、
15000000Rという事でいいですか?」
「え?庶民の生活費は間違いないですが、ちょっと待ってくだい」
不動産従業員は木の板を取り出すと、何度も何度も、木の板に計算を書いていく。15分ほど計算して、驚いたように仁を見た。
「合ってる。なぜそんなに早く?」
「私の出身地では、12歳の子供でもこれくらいは、暗算でできますよ」
「暗算とは?」
暗算が分からない?!
何を馬鹿な?!
学術系スキル「算術」があるじゃ無いか
仁はアイテムボックスのフォルダ名「人種星金貨No.28」から、星金貨1枚とフォルダ名「人種白金貨No.58」から白金貨5枚を取り出しながら言う。
「あなたのように書くのではなく、頭の中で計算する事です。そうですね。魔法で言う所の無詠唱でしょうか?」
「ええええ?!」
「そもそも、職種『商人』ならば、算術スキルがあるでしょう?また、商人ならばLv.20で、鑑定スキルが身につくのですから、自身に対し鑑定すれば、算術スキルのレベルも分かるでしょうに」
「ジンさん、いやさ、ジン様。ちょっとお待ちいただけますか?」
「はい」
不動産従業員は、商談部屋から奥の部屋へ駆け込んで行った。その間、ダーヴィットが話しかける。
「ジンさん、ギルド職員にならないか?」
「ギルド職員にはならないですね〜。自分の性格柄、向いているとは、思うのですが、まだ若いですし、冒険者として、色々見てから、最終的にそこに行き着くなら、その時考えますよ」
「向いていると分かってて、ならないか。うん、これからもエルナをよろしくたのむ」
「なんか嫁に出す父親みたいですよ。ははは」
「まー、あんたなら娘2人とも任せられそうだな」
「やめて下さい。そういうの」
「おや?やはり異世界の人は、妻は一人って感じかい?」
「一夫一妻じゃないとって考えでは無いですよ。うちのメンバーを思い出してください。あれだけの候補者がいる可能性があるんです。ん?異世界人ってそうそう、多いものですか?」
「そうか。娘2人の件は考えておいてくれ。異世界人なぁ。まー、いなくは無いな。うちのギルド長なんかは、異世界からの転生者だからな。あらぁ、すげ〜ぜ。」
ほぉ、俄然興味が湧くな
そんな話をしていると、不動産従業員は、恰幅の良い社長を連れてきた。ダーヴィットに目礼をし、仁を見て言う。
「君がジンさんか?」
「そうですが、あなたは?」
「すまん。ワシはライムント。この不動産を含め、スリギアで手広く、商売をしておる。ギムレット商会の会長だ。そして、エウロパ王国商人ギルド本部長でもある」
えらい大物が出てきたな
それにしても、ギムレット商会だと?!
同名でなければ、俺がチュートリアル中に作った商会だぞ?!
「一つ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「構わんが?」
「ギムレット商会は鼠人族にもありませんかね。あなたは人種ですし、同名の商会という事でいいのでしょうか?」
「ほぉ!ギムレット商会の成り立ちをご存知とは、すごい。血はかなり薄くなったが、ワシには、鼠人族の血が流れておる。まぁ、見た目では分からんがな」
「なるほど、そうでしたか。それでは、ギムレット商会はずっと続いていたのですね。知らなかった。申し訳ない」
「いや、いい。それは仕方ない事。商人でもなければ大商人ギムレットの名も、ギムレット商会の名も知らぬが道理。それで、こいつから聞いたが、職種についての考察があるとか」
「考察なんて、そんな大層なもんじゃ無いですよ。私も冒険者ギルドのギルド長と同じ穴の狢ですからね」
「ほぉ、異世界の方か。その若さで、その知識、元から記憶を持っていたか、もしくは、召喚者か。うむ。確か、カリメイで勇者召喚をしたらしいな。未成人を召喚したが、一人の召喚者の能力を見誤り、一時は壊滅の危機にあったとかなかったとか。その時出奔した召喚者が、ジン・ミツルギ。そうか、君か」
おっほ、すげ〜情報網だ
流石と言うべきか
「そんなに危険人物扱いなんですね」
「あ、いや、失礼。そのような意味ではなかったのだよ。先日王太子となったアッストン殿下や宰相に着任されたニミドカ大公閣下が、父や兄らの所業を嘆いていたと小耳に挟んでな。エウロパ王国に、ジン殿が向かっていると聞いていたので、お近づきになりたいとは思っていたのだ」
「ほぉ、アッストン殿下が王太子に。それなら、カリメイも安泰か」
そうなると、ほかの勇者らが抜けにくくなるか?
「ところで、ここには土地を買いに来られたとか?」
「はい、そうですね。150000000Rの土地の資料を見せていただいておりました。はい、星金貨1枚と、白金貨5枚です」
「「「なっ!一括?!」」」
「値切りスキルを使って、半額ぐらいまで落としても良かったのでしょうが、2ギルドの上層部との繋がりができたと考えるなら安いものでしょう」
「君のスキルなら半額に出来ると?」
「まぁ、値切りスキルだけでというわけでは無いですけれども」
「ほぉ、面白い。幾つか話を聞いてもいいだろうか?」
その後、ダーヴィット、ライムントの3人は、スキル、スキルレベル、職種レベル、身体レベルについての仁の考えを聞き、ますます、仁に魅了されるのだった。