第10話 大公との出会い、モデストとの出会い
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下記は、ネタバレを含む設定資料です。
いくつか項目があるので、ご注意を
http://ncode.syosetu.com/n0441dk/
2015/07/15 大幅修正
2016/07/30 誤字修正
2016/08/21 前書き修正
ルルルエサバドを発って3日目朝、出発前に貴族家長女以外の全員を揃えて話し合う。その際に、インディア紙、ティッシュペーパー、ちり紙を出しながら、エウロパに着いてから始めたい商売について説明。幼馴染は、大した反応はしないが、エレナらは違う!やっばいくらいに反応した。
「ジ、ジン様、これは異世界のアイテムでしょうか?」
「違うよ。エルナこの世界の素材をこの世界の技術で作った字を書くためのものだよ。ほら、ペン貸すから、何か書いてみ」
「ほわわわわ!なんですか?羊皮紙ではないのに、羊皮紙よりも滑らかで!書きやすくて!!」
「こ、こ、こ、この手触り。これはなんなのでしょう」
「ケレブリン、それはちり紙だね。鼻をかんだり、お尻を拭いたり、お化粧を落としたりするものだよ。触り心地なら、こっちのティッシュペーパーの方がいいよ」
「ひゃ〜〜。これは神様が使う道具でしょうか?!」
仁は幼馴染に振り返って言う。
「どう?これがこの世界の普通の反応だ。地球の当たり前は、この世界じゃ、ありえないほど高級な何かなんだよ。インディア紙は、本作りとか、芸術分野などで使う趣向品にしよう。地球じゃ、辞書や聖書はこの紙だしいいだろう。ちり紙とティッシュペーパーは、生活用品。で、ちり紙が平民用、ティッシュペーパーが貴族用だね〜。まー、最初は平民っても、豪商とかしか買わないかもね」
「でも、仁くん。作り方大変じゃない?すみれに聞いたことがあるんだけどパルプ?とかいるでしょう」
「さすが製紙工場の娘だな、すみれは。いないけど。ところが、この世界には地球にないものがある。それは魔法とスキル。今回は、スキルの方ね。地球なら、原材料から加工などの多段階工程を経て作られるけど、こっちだと素材を集めて、適量でアイテム作成すればいい」
「え?まぢで?!でも、素材が高いんじゃ?」
「ところがどっこい、それらの素材は、何にも役に立たないって言われている雑草だったり、ゴミにしかならない石だったりする」
「うっそ!やばいボロ儲けじゃん?あ、そのスキルが覚えにくいとか?」
「俺はある一定数の親愛度、忠誠度がある奴にスキルを与えられる」
「ジン様は、本当は神様なのでしょうか?」
「エルナ、ちげーから」
「神獣を従えて、スキルの数は人智を越え、魔法の才能は伝説の魔導師以上。その上、戦闘技術は世界最高峰。それを人は何と言うでしょう?」
「う、凄い人?」
「違います」
「すいません。神様ですかね。でも言い訳させて下さい。神様見習いの亜神には誘われましたが、まだなると決めてないです」
「神になれと誘われたんですか?!いつ?」
「召喚前のことです。てか、リリたちは知ってたろ?」
「すいません。多分、その時は、ルルルエサバド周辺で待機している頃です」×4
「ああ、なるほど。ま、だから、まだ神じゃねーんだが、神に近いと思っといてよ。エルナとケレブリンは、俺主人に当たるんだからさ。「ご主人様は神様です」くらいに考えといて」
「はい!」×2
さて、昨日半日分しか進んでいないため、少し急ぐことにした。今日の訓練は模擬戦だけ、経験値は少ししか入らないが、一回の魔物との戦闘で、他の人より10倍も20倍も経験値が積めるので、それはそれでも構わないと仁は考えている。地水火氷木金の6属性魔法で、ゴーレムクリエイト。それらと対戦する。模擬戦1回ごとに改善点などを話し合う。30〜40分かかる。それが終わったら、馬車に乗り込み、出発する。
ナスターシャの予言通り、グウルイア村の西に位置する街を含む3村2街を領有している大公家の馬車とすれ違った。カリメイ王の次男アッスントを擁しての、上洛といったところか。仁たちは、だいぶ、草原の方に避けて、通り過ぎるのを待っていたが、大公家の馬車は、感謝の為に、一旦止まって、挨拶をしてきた。集団の主が仁で、未成人であることを知ると、わざわざ大公閣下とアッスント殿下が、挨拶に馬車から降りてきた。そのタイミングで、助けた貴族公女たちと引きあわせる。2人は大変喜び、ルルルエサバドで、お礼をしたがった。丁重に断り、盗賊の話をし、他の2名に優位に動いてはと提案してみる。さらに、興味を抱いた大公らであったが、拠点をスリギアと語ったことと、ルルルエサバドから退去した事を話した為、大変残念がっていた。アッスントも、大貴族跡継ぎ候補から、王家跡継ぎ候補になった人物とは思えないほど柔和で、大公の教育が伺われる。兄とはだいぶ違うようだ。いや、環境のせいかもしれないが。アッスントが王になれば、仁が滅ぼしかけたカリメイ連合国も立ち直るかもしれない。30分前後の会談を経て、出立されて行った。出立前に大公閣下と王子殿下からそれぞれ、もし、カリメイに来る機会があればと、印章付きの文書を賜った。
その後、かなり急いだ為か、残り半日の行程を残して、日が暮れる。みんなで弁当を取り、就寝となった。
ルルルエサバドを発って4日目、あと、4時間くらいで、アクドルエの街に着くため、今日は訓練なし。代わりに、全員で、ステテケ草 (地球で言うところの麻の原料)とリンター草の実(地球で言うところの綿の原料)とブロウショの木の皮草 (地球で言うところの楮 )とクリサンサ草(地球で言うところの三椏 )を採取する。陽斗とタイカッツォは、採取場所近くに廃坑があったので、鉄屑石という10万トンくらい集めたら1kgくらいの鉄が作れるという噂のある石を集めてもらう。
これらの素材が、スリギアではじめようという商売の原料である。ルルルエサバドで、インディア紙については少し触れたが、付与師ジンビールの頃にアイテム作成の練習をして作ったものだ。ジンビールの名は、クラスチェンジした後の錬金術師で、今は滅んでしまった王国の王から、準貴族に陞爵されたあと、マグヌス姓を名乗り、有名になる。
インディア紙は、リンター草の実45%とブロウショの木の皮45%と鉄屑石10%の割合でアイテム作成すると出来る。ちり紙は、ステテケ草50%とブロウショの木の皮50%の割合でアイテム作成すると出来る。ティッシュペーパーは、クリサンサ草50%とブロウショの木の皮50%の割合でアイテム作成と出来る。先に集めといて、損はない。仁のアイテムボックスは、ほぼ無限に入る。何万トンでも集めたいだけ集められるのだ。
お昼の15時になったので、タイカッツォに念話し、戻ってきてもらう。みんなには、採取したそれぞれを分別し、仁のアイテムボックスに納入する。お弁当を食べ、街へ向かう。夕方20時くらいには街に入れそうだ。街に入る直前に、大荷車を魔法で作り、盗賊団の遺体と幾つかの首を氷漬けにして、載せる。荷車は、タイカッツォに牽かせた。
そうこうしているうちに、門前についた。そこそこ大きな街なだけはあって、門は結構並んでいた。30分ほど順番待ち。門番が話しかけてきた。
「やあやあ、遺体があるな。何事だい?」
「私、代表をしております、ジンと申します」
「おや、君がかい?未成人だろう?」
「はい。未成人ではございますが、諸事情により、数年、代表を務めております」
「お、すまんすまん。悪い事を聞いたな。それで、これはどうしたことだ?」
「旅の途中、盗賊のアジトを見つけ殲滅致しました」
「ほぉ」
「道中、大公家の方々と話をする機会があり、その方々に縁のある方が捕らえられていたので、盗賊たちをお渡ししたかったのですが、断られてしまったので、こちらに運んだ次第です」
「何?大公閣下と話したのか?証拠は?」
「もし、カリメイに戻ることがあれば、示すようにと文書を賜りました。中をお見せするわけには参りませんが、印章だけでもよろしいですか?」
「構わないよ」
「こちらでございます」
「ほぉ!本物だ。しかも、アッスント殿下の印章まであるではないか!君は、昔から縁があるのかい?」
「いえ、昨日が初めてでございます。少しお話をさせていただきましたところ、別れ際に賜った次第です」
「君は優秀なんだね〜。大公閣下に印章付きの何かを賜るなんて、この国では大変な出来事だよ」
「左様でございますね。畏れ多くて困ったものです」
「分かった。問題ないとは思うが、これも決まりなので、念のため、罪歴の宝珠に手を翳してもらえるか?」
「勿論でございます。犯罪者を街に入れるなどあってはなりませんからね」
「そうだな。はっはっはっは」
全員が問題なしとなったので、入街料の33000Rを払った。そして門内に入ろうとすると、門番が待ったをかける。
「ちょっと待ってくれるか?近衛隊長を呼んでくる。我々は、この街の領主の近衛隊でもあるんだ」
10分もしないうちに、先ほどの門番より1つ上くらいの等級の鎧を纏った、ナイスミドルなおっさんがきた。丁寧に確認すると、報奨金を渡したいので、このまま近衛隊幕舎に来て欲しいとのことだったので、ついていく。幕舎に着くと、かなり身綺麗な格好をした、ちょーっと頭が残念になりつつあるおっさんがいた。
「おお、領主様、いらっしゃいましたか。これから、報奨金を渡すところです」
どうやら、近衛隊長とは別に報告を受けていたようだ。近衛隊長の話を聞いてから、昼行燈のような素振りが消え、眼光を鋭くした。そして、わざと蔑むような目に変えて、聞いてくる。
「そのような若造がか?たまたま、仲間割れか何かで共倒れした盗賊団を拾っただけではないのか?」
うーむ。何というか
ダメ領主を演じているつもりみたいだが
先に眼光を鋭くしたらダメだろ
近衛隊長もニヤニヤしながら
試したいみたいなオーラを出してるし
この2人相当切れ者だろ?
演技下手すぎだ
「しかし、領主様。彼は大公閣下や王子殿下から印章を受けるほどの人物。どうでしょう。近衛隊で、力試しをしてみては?」
あー、演技まだ続いてたのね
やっぱ、そういう流れか
「領主様、近衛隊長殿、どちらで力を示せばよろしいでしょう。さすがに往来というわけには参りますまい?」
「ほほぉ、いける口か。何人対何人を希望する?こちらは近衛隊長1人対そちら全員でも構わんよ?」
「そうですね。私としては、盗賊団を単独撃破したのですが、そう仰るなら、隊長殿とサシでも構いませんよ?」
「な?!単独だと?大きく出たな。近衛一番隊、二番隊訓練場に集合だ。俺が率いて、この小僧の鼻をへし折る」
「隊長、一番二番隊では50人です。いかに熊爪団を倒したと虚言しても多くないですか?」
こいつも役者か
チラチラ見んな
それにしてもあの盗賊どもは
熊爪団というのか
微妙なネーミングセンスだな
「身の程を弁える術を教えてやるのよ。何、手加減はしてやれよ」
「はっ」
「どうだ小僧。謝るなら今のうちだぞ」
棒読みじゃねーか
「分かりました。こちらも手加減いたしましょう。私の職種は、魔法剣士ですが、魔法は使わないようにしましょう。あ、盗賊に対しても同じでしたので、そうですね、木剣を2本お借りしても?」
「さらに、大きく出たな。今すぐにでも、へし折ってやるわ」
だから、棒読みだって
ほら、うちの連中も気づいてて
ニヤニヤしてんじゃねーか
練習場に向かい、51対1の対決が今始まろうとしている。隊長と一番二番の隊員が何か話している。聞き耳スキルは使わない。作戦なら、聞かないほうがいいだろう。面白くないし。だが、作戦ではないようだ。ザッと音がする感じで、隊員たちはこちらを睨む。蔑みの目はない。
何を話したのだろう
スキルを使っておけば良かったかも
ま、いっか
さっきの門番が開始の合図をするようだ。交代の時間だったのだろうか?練習場は、ちょっとした牧場のような作りになっており、周りは木の柵が囲んでいる。その柵の外に、領主や他の隊員、うちのメンバーらがいる。
戦闘開始だ。まずは武器系スキル「片手剣Lv.10」をいつものように発動。続いて物理戦闘系スキル「双剣流Lv.10」を発動、そして、運動系スキル「縮地Lv.10」で、近衛隊の目の前に移動した。相手がギョッとしている隙に、物理戦闘系スキル「手加減Lv.10」発動。同じく物理戦闘系スキル「連続攻撃Lv.10」の六十四連撃にて、51人を瞬殺した。
「終わりですよ」
戦闘開始の合図をした男に言う。
「え?いやでも?」
「いや、終わりで間違いねーよ。すげ〜な。一瞬で全員気絶とか。初めてみらーな。これで本気じゃねーんだろ?小僧」
「え?領主。え?みんな気絶?立ったままですが?え?」
「見てみな」
「うわぁぁぁ、本当だ!!はっ!勝者ジン殿!」
「いえいえ、奥義級のスキルを2つ3つ使いましたよ」
「ほぉ、そうかい。でも、スキルレベルは、達人クラス以上だろ?その若さで、すげ〜な。黒目黒髪だ、あんた、差し詰め、召喚勇者の1人じゃねーか?」
「さぁ、どうでしょうね?召喚勇者は、王都でしょう?こんなところにはいないでしょう」
「ま、そういう事にしとこうか。王都でも、召喚勇者を侮って、王族壊滅って話だしな。おそらく、大公も殿下も知ってて印章を渡したんだろうよ」
「さあ、存じませんな。大公閣下からも王子殿下からも侮りや恐れは感じませんでしたから、あの方々が、そう思っていらっしゃったのなら、カリメイは安泰でしょうね」
「そうだ、泊まるとこ決めてねーんだってな。うちに泊まってくかい?」
「褒賞として、ありがたく受け取りましょう。」
「本当かい?こんな安くていいんなら、いつまででもいてくれや」
「まー、二、三日は、滞在する予定でしたし、お言葉に甘えましょう」
「おう、俺はモデストってんだ。爵位は男爵だがよ。元はSSSランクの冒険者だ。堅苦しいのは無しだぜ。それとそこで白目むいてるのは、ルドヴィーコ準士爵。冒険者仲間だった奴だ。これでも守りの要だったんだがよ〜。鈍ったのかね?いや、違うか。あんたが強すぎんだな」
「ほぉ、あなたが英雄モデスト卿、近衛隊長が鉄壁ルドヴィーコ卿でしたか。知らぬとはいえ、失礼を」
「やめろっての、本物の強さを持ってる奴に言われても、痒いだけだ」
仁ら一行は、モデストの屋敷に向かった。そして、その後は、特に問題が起こることもなく、予定の期間を過ごし、少しだけ足りなくなりそうな弁当を、135食分追加して、アクドルエの街を出た。
ちり紙ってもうほとんど生産してないんですね〜。大学3年まで、書道の講義とか受けてたんで、今まで知らなかったっす。っても大学生の頃ってもう20年前くらいですけどね〜