ばあちゃんの葬式(3)
お経が始まった。
テレビやコントなんかで出てくる“お葬式のフレーズ”が聞こえる。
南無阿弥陀仏とかそういうやつだ。
今まで考えた事もなかったが、お経は一体何のために唱えるのだろうか。
当然、唱えることでばあちゃんが生き返るわけではない。
ばあちゃんが天国に行けるように、おまじないの言葉を唱えているのだろうか。
漠然と身体に染み付いていることは、人は死んだら、天国か地獄に行くらしい。
善人は天国、悪人は地獄。
それと生まれ変わり。
死んだら、いつの日か新しい命を授かりこの世に生まれる。
天国に行った人だけ生まれ変わるのか、地獄に行った人は“人間”として生まれ変われないとか。
何かで読んだのか覚えていないが、今改めて考えると、筋が通っていない。
そもそもこの問題に答えは無いはずだ。
なぜなら確かめようがないからだ。
この世界にはたくさんの宗教が存在していると思うが、その数だけの死生観があるのかもしれない。
ばあちゃんの宗教はどうなのか。
こっそりスマホで調べてみる事にした。
読めば読むほどわからない事が増える。
念仏を唱えれば極楽に行けるらしい。
極楽という言葉は聞いたことがある。
悟り、仏、涅槃・・・。
短時間で理解するには情報量が多すぎる。
しかも、これは一つの宗教の一つの宗派だから、他も調べると途方もない時間がかかる気がする。
この二日間の暇な時間を潰すには持ってこいなのかも知れない。
周りの人たちがお辞儀しているので遅れてお辞儀をした。
どうやらこれで通夜のお経が終わったようだった。
これから夜通し、ばあちゃんの側の線香を絶やさないように交代で火の番をするらしい。
酒好きの人達はどうやら酒盛りをするようだ。
自分達は、母が実家にいたときに使っていた部屋で寝る事になった。
まだ寝るには早すぎる時間だ。
未開封のパソコンの設定をして、さっきの調べごとの続きをする事にした。
ただ、全ての宗教を調べ上げるつもりは全くおきない。
宗教は昔の人が考えた“生とは”、“死とは”、“死んだらどうなるか”の答えである。
ネットで調べても端的に答えが書いてあるわけでもなく、調べるほどに調べる候補の言葉が増えていくのだ。
宗教について考えるのはやめて、自分なりの答えを出す事にした。