ばあちゃんの葬式(2)
ばあちゃんは仏間に横たわっていた。
部屋中に線香の匂いが充満している。
従兄弟達もちらほら来ているが、こちらから話しかける事はなかった。
正月に会う親戚以外にもたくさんの親族らしき人達が来ていた。
こんなに親戚がいるなら、お年玉がもっともらえて、ばあちゃんのお年玉でがっかりすることもなかったのに、と思った。
試しに父に「あの人は誰か」と聞いてみるが、回答率は30%くらいで、答えがあっているかどうかもわからない。
質問しておきながら、覚える気も全く無かった。
その場に居辛くなって来たので、散歩に行く事にした。
そう父に伝えると、そういうと思った、と言いたそうな顔で小さくうなずいた。
ここは、はっきり言って田舎だ。
歩いて15分以内に行ける距離に店が無い。
子供の頃は、夏休みに1週間くらいばあちゃん家で過ごしたこともあるが、今思い返せば、何をして過ごしていたのか、何が楽しかったのかが謎だ。
その頃よく行った小さな商店に行ってみる事にした。
道順や距離はなんとなく覚えているが、脳内でシミュレーションしても面倒臭いと思えるくらいに時間がかかる。
子供の足でよくあんな所まで歩いていったな、と子供だった自分に感心する。
途中、川を眺めたり、田舎の空気の清々しさに気づいて立ち止まったりしたせいか、目的の店までは30分くらいかかった。
店は、もうかれこれ数年前には廃業したであろう姿だった。
もし開いていても買うつもりもなかったから、そのまま帰ることにした。
ここから先には子供の頃も行った事がなかったし、探検しようと思う気分でもなかった。
ちょっと歩いたせいか小腹が空いてきたので、ちょうど外に出て来ていた母を呼び止めた。
どうやら夕食はお寿司らしい。
めでたくないのにお寿司なのか?と聞いたら、この地域ではそういうものらしい。
父の実家のほうは焼肉を食べる地域だといいな。
独り言が母に聞こえたらしく、荷物運びの仕事を手伝わされるはめになった。
軽トラから謎のダンボールを何箱も家に運び込む。
最後の1箱を運び入れるとき、母に聞いてみたら、通夜に来てくれた人に渡すものらしい。
参加賞みたいなものか。
運び終わった後、食事のある大広間に行ったら、好物のイクラとウニが一つも残っていなかった。
お坊さんが来た。
これからお経をあげるらしい。
座る場所は血縁の近いものから順番に座るようだが、小さな子供達は部屋の隅のほうで空気も読まずに遊んでいる。
自分もその近くに座ることにした。
まだお年玉をもらっているくらいだから、子供のカテゴリーでも問題ないだろう。
それにあんな畏まった状態で正座に耐えられそうもない。
前のほうでお坊さんがなにやら話した後、全員が礼をしたので、慌てて真似をする。
子供達も、真似してお辞儀した。
どうやら少しは空気が読めるみたいだ。