表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

ばあちゃんの葬式(2)

ばあちゃんは仏間に横たわっていた。

部屋中に線香の匂いが充満している。

従兄弟達もちらほら来ているが、こちらから話しかける事はなかった。

正月に会う親戚以外にもたくさんの親族らしき人達が来ていた。

こんなに親戚がいるなら、お年玉がもっともらえて、ばあちゃんのお年玉でがっかりすることもなかったのに、と思った。

試しに父に「あの人は誰か」と聞いてみるが、回答率は30%くらいで、答えがあっているかどうかもわからない。

質問しておきながら、覚える気も全く無かった。

その場に居辛くなって来たので、散歩に行く事にした。

そう父に伝えると、そういうと思った、と言いたそうな顔で小さくうなずいた。


ここは、はっきり言って田舎だ。

歩いて15分以内に行ける距離に店が無い。

子供の頃は、夏休みに1週間くらいばあちゃん家で過ごしたこともあるが、今思い返せば、何をして過ごしていたのか、何が楽しかったのかが謎だ。

その頃よく行った小さな商店に行ってみる事にした。

道順や距離はなんとなく覚えているが、脳内でシミュレーションしても面倒臭いと思えるくらいに時間がかかる。

子供の足でよくあんな所まで歩いていったな、と子供だった自分に感心する。

途中、川を眺めたり、田舎の空気の清々しさに気づいて立ち止まったりしたせいか、目的の店までは30分くらいかかった。

店は、もうかれこれ数年前には廃業したであろう姿だった。

もし開いていても買うつもりもなかったから、そのまま帰ることにした。

ここから先には子供の頃も行った事がなかったし、探検しようと思う気分でもなかった。


ちょっと歩いたせいか小腹が空いてきたので、ちょうど外に出て来ていた母を呼び止めた。

どうやら夕食はお寿司らしい。

めでたくないのにお寿司なのか?と聞いたら、この地域ではそういうものらしい。

父の実家のほうは焼肉を食べる地域だといいな。

独り言が母に聞こえたらしく、荷物運びの仕事を手伝わされるはめになった。

軽トラから謎のダンボールを何箱も家に運び込む。

最後の1箱を運び入れるとき、母に聞いてみたら、通夜に来てくれた人に渡すものらしい。

参加賞みたいなものか。

運び終わった後、食事のある大広間に行ったら、好物のイクラとウニが一つも残っていなかった。


お坊さんが来た。

これからお経をあげるらしい。

座る場所は血縁の近いものから順番に座るようだが、小さな子供達は部屋の隅のほうで空気も読まずに遊んでいる。

自分もその近くに座ることにした。

まだお年玉をもらっているくらいだから、子供のカテゴリーでも問題ないだろう。

それにあんな畏まった状態で正座に耐えられそうもない。

前のほうでお坊さんがなにやら話した後、全員が礼をしたので、慌てて真似をする。

子供達も、真似してお辞儀した。

どうやら少しは空気が読めるみたいだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ