シャボン
日落ちて あの娘も ほら シャボン吹きを止めた
家路を急ぐ あの娘の肩は 酷く 脅えている
遠くより 近づいてくる 近づいてくる 壊れた西洋の童謡
ほら 耳を塞いだから シャボンを溢した
転がったプリズム液の上空は まるで 戦争画の色づかいで
逃亡の最中 あの娘は 咄嗟に 姫を演じきっていた
並ぶ落葉樹の内 一本は 間もなくをもって裸木
けれども 枝の先に 何か ひとふさだけ 揺れていて
丸みを帯びた 朱色の一粒から 目を離せないでいた
ビュウ と 心無い風が吹いたか
冷えた鼻先を プリズム液の 香り掠めていって