エピローグ(次は多分双子の話に続きます)
そして月日が「あっ」と間に過ぎていた。
私の愛する銀髪のウィザード様はというと。父さまに交際を認めてもらってから一年になるけれど変わらず私を大切にしてくれていた。時々、勢いでベットへ私を押し倒してそのままピーーーーでピーーーーーーなことになるけどね。(笑)
きっと、父さまと何か約束を交わしているようなので結局の所。最後はギュぅっと私を抱きしめて必死に理性を保っているようだった。
母さまのお腹に宿っていた弟妹たちは、もちろん無事に元気に生まれて。スッカリそこら中を元気に駆け回っている。どうやら父さまの血を濃く受け継いだ双子の悪魔は、すでに乳母や世話係を悩ませているようだ。
そうそう、妹の名前は、ミーア。弟はイーヴィル。と、名付けられイーヴィルのほうが先に生まれたので兄とされていたけど、気の強いミーアはそのことを認めていないらしい。ミーアは真っ直ぐな行動派で、女の子なのにとても力強さを感じる。イーヴィルは慎重な思考派で、とてもずる賢くて無駄な行動をしないミーアよりもかなり性格は悪そうだ。
この年齢になって気付いたことなんだけど。私には、どうやら母さまの血が濃く受け継がれていて考え方がどうも人間に近いようで悪魔らしくない。しかし、私とは反対でミーアもイーヴィルも見た目も行動もとても悪魔らしかった。
まず、気に入らないことがあると魔力を使ってそこら中のものを壊したり、世話係を怪我させたりするので、毎晩のように父さまからこの二人の小悪魔たちはお仕置きをされていた。それでも、なかなか小悪魔たちは懲りてくれなくて……。ある日。ミーアが世話係を魔力で吹き飛ばしてしまって、瀕死に追いやってしまったの。その時は、母さまが本気で怒っちゃってね。ミーアもイーヴィルもかなり怖い思いをしたらしくって、やっとのことで大人しくなりつつあった。
「かあさまのねー。あかいひかりのたまはすごいんだぜ! ねえさまー」
「こーんなにちっちゃくってもね。ビリビリーーーーって、すぅっごくこわかったんだよ! ねえさまー」
二人の小悪魔たちは、その時の様子を目を大きく開いて身振り手振りで真剣に私に説明してくれていた。
「とうさまはさぁー! おきゅうってやつをするんだけどね~。さいしょはあつくてすっごくいやだったけど。もうなれたからへいきよねー♪」
「オレはさいしょからへいきだったぜ! ミーアはさいしょはあつい! あつい!ってないてたけどな! へへへ♪」
イーヴィルが意地の悪い顔をして、ミーアを指差して笑うとミーアは口を尖らせてふくれっ面をしてすねてしまった。
「それで? 母さまとの約束は? ちゃんと二人とも憶えたのね?」
「はぁーーい!」
「はぁーーい!」
元気よく私の問いかけにミーアもイーヴィルも手をあげて返事をしていた。
「一つは魔力で物を壊さない。二つ目は乳母や世話係に怪我させない。三つ目は兄妹ゲンカで魔力を使わないだったよね? ほんっとにミーアもイーヴィルも約束は守らなきゃダメだよ!」
「はぁーーい!」
「はぁーーい!」
元気よくもう一度返事をしてから、二人はキャッキャと騒ぎながら部屋を出て自分たちの部屋へ帰って行った。
「あの二人を見てると子供を産むのが怖くなるわ……」
「フフフ。大丈夫ですよ! 私とサラの子なら、もう少し控えめな子が生まれるでしょうから」
ルークはクスクスと不安に駆られている私を笑いながら、優しく後ろから抱きしめて宥めてくれていた。そして、私を椅子に座らせて跪いて真剣に私を見つめると話を始めた。
「実はね。魔王さまに昨夜お部屋へ呼ばれて、サラと結婚の儀式の段取りをそろそろ進めてはどうだと言われたのですが、サラはどう思いますか? 進めても宜しいですか?」
「え? 父さまが? そうなの? やっとお許しが出たのね……。もちろんよ! 凄く嬉しい♪」
突然のルークからの嬉しい知らせに、私は跪いているルークにすぐに抱きついて喜んでいた。腰まで伸びたルークの真っ直ぐな銀色の髪が、サラサラと私の手に触れてとても心地良かったので、そのまましばらく離れないでいると私の頬にルークは触れて、私の赤い髪をかきあげると顔を近付けてそっと唇を重ねていた。
「私も少しは大人になったでしょう?」
「そうですね~。これくらいのことで、顔を赤らめてくれなくなったのは私としてはとても残念なことなのですがね。フフフフフ♪」
私がルークにキスをされても動じずに腰に手を回したままでいると、私の腰まで伸びたウェーブのかかった赤い髪をルークは優しく撫でながら、耳元で甘い声で甘い言葉を何度も囁いてギュッと強く抱きしめてから、もう一度優しく唇を重ねていた。
そして、私とルークは結婚の儀式を半年後に行うことに決めて、準備を進めることになった。母さまの勧めで、私はその日から岩盤浴とオイルマッサージをしてもらって、二日置きにサウナにも母さまと一緒に入って身体に磨きをかけていた。一緒にサウナに入った時に初めて見た母さまの身体は、とても双子を産んだ後とは思えないほど若々しくピッチピチで、胸なんて私なんかよりもずっと大きくて、どうしても触りたくなって私は母さまにお願いして少し胸を触らせてもらったりもした。
その出来事を赤裸々にルークに私が話すと、さすがにルークも顔を赤らめて返す言葉に困っていたので、それがとても面白かった。準備を始めてからあっという間に半年が過ぎて私とルークは結婚の儀式の日を迎えていた。
魔界中の父さまの配下にあたる。悪魔や魔物や魔法使いたちが集まり。儀式は速やかに執り行われて、私とルークは夫婦になった。魔王の赤毛の姫と銀髪のウィザードが夫婦になると、魔界中では誰もがとても驚いていたようだった。ウィザードと悪魔が結婚するなんて、魔界では今まで無かったことなので、驚いていやがるんだと、父さまは何食わぬ顔をしてケラケラと笑って、その様子を楽しんでいるようだった。人間の母さまと結婚した父さまにしてみれば、こんなことで驚いているほうがおかしくて笑えるとも言っていた。
そして、儀式の夜にルークはベットの中で私の隣で身体を半分起こした状態で私の顔をジッと見つめていた。
「魔王さまからはすでにお許しは頂いたんだけどね。必ずことを進める前にサラの気持ちを確かめるようにと、魔王さまに強く命じられたので……あえて問うのだけれども。今夜サラは、初夜を迎える覚悟は出来ているかな?」
「も、もちろんよ! ちゃんと覚悟は出来ているわ!」
少し返事にとまどってしまったけれども、私がルークを受け入れる気持ちでいると答えると、ホッとした様子でルークは無邪気な笑顔を見せていた。
「これはだね。ここだけの話なんだけれど……。魔王さまはお妃様の気持ちを無視してことを運ぼうとして、一度お妃様にお城を出て行かれたそうだよ。フフフフフ♪」
「まぁー! そんなことがあったなんて……私はちっとも知らなかったわ!」
父さまと母さまの昔話に驚いている私を、ルークは微笑みながら見つめると優しくギュッと私を抱きしめてから、何度も何度も甘い言葉を耳元で囁いて激しく唇を何度も重ねそして灯りを消して、そしてそして。わたしたちは、生まれたままの姿になり……その夜。二人は無事に結ばれることが出来たのでした。
【完】
最後まで読んで頂きありがとうございました。
2014/8/26サラとルークのツーショットのイラストを読者様より頂きました。