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『恋と私と過保護な魔王』


 私の護衛になる魔法使いがお城へ上がる儀式が行われる当日になって、何やら城内がザワザワとして落ち着かない様子だった。突然、父さまのいる応接室から大声で怒鳴り声を上げている父さまの声が聞こえてきた。


「オイオイ! オレ様は聞いてねえぞ! サラの護衛の魔法使いが、お前の甥っ子だったなんて」

「そうでしたか? 確かに。ご報告させて頂いたはずなのですが? 何か問題でも?」


 会話の内容から、どうも私の護衛になる魔法使いがオースティンの甥っ子であることが、父さまは気に入らないようで。かなりのご立腹の様子だった。


「ルークは優秀なウィザードでございますよ。何も問題はございませんが?」

「やっと、サラがお前のことを吹っ切れたようなのに。お前と同じ銀髪のウィザードの若造に側にいられたら、また。同じようにサラが悩んじまうかもしれねえだろうが!」


 父さまは、私が恋をすることに反対なのか? オースティンと同じ銀髪のルークを警戒しているようだった。私が気になってドアの隙間から覗いてみると、そこへ母さまが二人に割って入って、父さまに母さまはクスクスと笑いながらタップリと嫌味を込めて言葉をかけていた。


「魔王ってサラのことになると途端に過保護なバカ親っぷりを発揮するのね。(笑)フフフ♪」

「べ、別に過保護ってわけじゃねえからな! まだまだ、サラは子供なんだからオレ様がしっかり目を光らせてやらねえと……。ろくでもない男に惚れられたらあれだし……だろ?」


 少しモジモジしてる父さまの顔を母さまは覗き込んで、ふ~~~~ん。と笑って背を向けた。


「それで? どうなさいますか? もうすでにルークはいつでもお目通り頂けるように待機しておりますが?」

「わ、わかった。一応会ってみねえとな! 会うから今すぐここへ呼べ!!」


オースティンはニヤリと笑うとすぐに指を鳴らして合図をしていた。


「お呼びでございますか? オースティン様」


合図とほぼ同時のタイミングで、ルークは現れてオースティンのすぐ横で跪いていた。


(すごい。なんだか以前よりも落ち着いた雰囲気で大人っぽくなってる♪)


「おぉ!! すげえな。早えじゃねーか! こりゃ~確かに使えそうだ。さすがお前の甥っ子だけのことはあるな!」

「おやおや。あれだけ警戒されていたのに……。お気に召されましたようですね。では、ルーク! 魔王に御挨拶をして差し上げて下さいね」


 ルークの素早い行動に、父さまが好意を抱いた様子を見せたので、少しオースティンは嫌味を交えながらルークに父さまに挨拶するよう命令していた。


「今日より姫君のサラ様の護衛を命じられました。ルークと申します。この身に代えましても姫様をお守りすることを魔王さまにお誓い致します」

「ああーーーー! 仕方ねえなー。わかった。わかった。しっかりサラを護衛しろよ!!」


 父さまはルークを気に入ったらしく、両手で自分の頭を掻きながら半分投げやりな感じだったけど。ルークを私の護衛として認めてくれたようだ。私は慌てて自分の部屋へ帰って、儀式の支度を世話係に手伝ってもらって赤い髪も綺麗に纏めて化粧もしてもらって、滅多に着ることのないドレスを着て私は部屋でジッと待機していた。私が待ちきれなくなって、まだ来ないのだろうかと立ち上がったその時だった。


「サラ様! お時間でございます。これより広間の方へご案内いたします」


 ドアが開いて、私付きの執事が迎えに部屋まで来たので手を引かれて広間へ向かった。広間へ入ると、たくさんの魔法使いたちと兵士の幹部たちに悪魔の幹部たちも身なりを整えて集まっていた。


 まずはお城へ上がることになった魔法使いたちにオースティンから、新しいローブと杖を贈る儀式から始まって。幹部に昇進した兵士たちには父さまから金塊が贈られていた。儀式は着々と進んで、やっと心待ちにしていたルークと対面してルークが私の前に跪いたその時だった。我慢しなくてはと頭では思っていてもルークを目の前にして、私はどうしても我慢出来ずにルークに思いっ切り抱きついてしまった。


「逢いたかったわ。ルーク」

「サラ様。私もです。この日をどれだけ待ち焦がれたか……。しかし、今は儀式の真っ最中でございます。そろそろ離れて頂かないと……」


抱きついたままで、なかなか離れようとしない私にルークは駄々っ子でも扱うかのように。そうっと身体を離して私をなだめていた。


「オイオイ! サラ! もしかしてコイツと顔見知りなのか? オースティン! どういうことだ?」

「違うわ。違うの……。少し気分が優れなくてルークに寄りかかってしまっただけよ」


私が父さまの前で、フラフラと気分の悪いふりをするとルークもそれに合わせるように私を後ろから抱き抱えてくれていた。


「サラ様はお人酔いされたご様子なので、どこかで休んで頂いたほうが宜しいかと思われますが」

「まぁー! サラったら、緊張したのね。ルーク! そのままサラをこちらへお願い出来るかしら?」


母さまが助け舟を出すかのように父さまを無視して、ルークに私を長椅子まで連れてくるように命令していた。


「そ、そうだったのか。気分が悪かっただけなんだな? オレ様はてっきりお前たちが、すでに顔見知りというか……マジで出来てんのかと冷やっとしたぜ!」

「ちょっと! そんなことあるわけ無いでしょ? 会ったことも無いのにどうやって出来ちゃうのよ? ほんと魔王はサラのことになると、ほんっとに心配しすぎよ! 超~過保護なんだから~~!」


 母さまはケラケラと声を上げて笑いながら、父さまに嫌味をたっぷり込めて私とルークのことを否定してくれていた。そして、儀式も無事に終わり自分の部屋へ戻って私が休んでいると、スーっとルークが姿を現して私の前にいた。


「ずっと逢いたかった。この日をどれだけ夢見たことか」

「私もよ……ルーク」


やっと私とルークはしっかりと抱き合ってお互いの温もりを確かめ合っていた。


「父さまには気をつけてね。すっごく過保護でバカ親だから」

「わかってるよ。バカ親なんて言ったらいけないよ。魔王さまはサラ様がとても大切なのですよ!」


 私は立ち上がってルークに顔を近づけながら、両手をしっかりとルークの首に絡ませてルークと目線を合わせてからルークの耳元で言葉をささやいていた。


「サラ様はやめて……。二人っきりの時はサラって呼んで欲しいの。いいでしょ?」

「わかったよ。サラ」

ルークは私の名前を口にしてから、そのまま力強く私を抱き寄せて私の唇に唇をそっと重ねていた。こうして……。私とルークの恋は父さまという障害があることによって、燃え上がってしまった。


*****************


儀式が終って二週間が過ぎたころだった。父さまに見つかることも無く私とルークはどんどん愛を育んでいた。何事も無く誰にもこのことはばれていないだろうと私が油断していると、ある時、突然……。母さまの部屋へ私は呼ばれていた。

私が母さまの部屋へ行くと、そこにはオースティンとルークも呼ばれて来ていた。

「サラ~! どうして呼ばれたかはわかっているでしょ? そろそろ、私には教えてくれないかしら?」

「え!? どうして? 母さま。あの……。どうして? 知っていたの?」


私が驚いてオロオロしていると、母さまはクスクスとオースティンを見て笑って頷いていた。


「儀式の日にね。どうしても、二人の様子が変だったから、オースティンを私が問い詰めたの」

「美乃里様には敵いませんからね。きっと、サラ様のお味方になって頂けると信じて全てをお話致しました」


オースティンは私に深く頭を下げて黙って話してしまったことを謝罪していた。


「私とルークは真剣よ!! 本当に本当に心から愛し合ってるの!」

「うんうん。わかってる。わかってるから、大丈夫よ。ルークからもさっき同じことを聞かされちゃったわ(笑)」


母さまは立ち上がって私を抱きしめてから、ルークの手を取ってルークの顔を真剣な眼差しで見つめていた。


「障害は大きいわよ!! なんといっても魔王だからね。一筋縄じゃ行かないわよ! でしょ? オースティン!」

「そうでしょうね~。クククク。魔王はサラ様の恋に関しては頑なでございますからね~」


母さまもオースティンも、父さまが一番の障害で私とルークにはそれなりの覚悟が必要だと話してくれていた。


「覚悟は出来ております。サラ様とお会いしたあの日から、魔王さまの大事な姫君を奪うことになるのだということが、どういうことかを理解してここまで参りました」

「それじゃ~! これから作戦会議よ! どうやって、魔王を説得するのかを考えるのよ! フフフ♪」


こうして、私とルークは母さまを味方に付けることで、魔王である父さまにどうやって自分たちの恋を認めてもらうのかということを。作戦会議を開いて母さまとオースティンと一緒に考えることになった。










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