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『もしかして失恋?やっぱり私はお子ちゃまですか?』



 父さまと母さまの魔力の凄さを目の当たりにして、私は少し、あれから自分の魔力についても、真面目に勉強するようになっていた。私の中には父さまと母さまの両方の魔力が眠っていると、魔法使いの先生は資料をたくさん広げながら、詳しく説明をしてくれていた。そこで、私が初めて知ったことなんだけど。母さまの中の魔力が、もともと父さまの魔力で、父さまが失ってしまった半分の魔力というのが誰の力によるものなのか? 未だにわからないらしいけど。それが母さまの中にあって、父さまの自由には出来ないということだった。オースティンの話によると、これは天界の神にしか出来ないことだとこっそり教えてくれていた。


「でも、このことは魔王には内密にお願いします。さすがに魔王が怒りを抑えきれなくなって、天界に乗り込むようなことになったら大変なことになりますからね!」

「もちろん、言わないわ。父さまが世界を壊してしまえるくらいの力があるということは、この前のことで私もよーくわかったから、絶対に言わない。あ。そうだ。オースティン! 絶対にこっちを向かないでね」


 以前よりも、長い時間。少しは普通に話せるようになったとはいうものの。やはり、こんなに綺麗な顔立ちをして、腰まで真っ直ぐに伸びた見事な銀髪が目の前でさらさらと揺れる度に。私には眩しすぎて、すぐに胸のドキドキが始まってゆでダコのようになってしまうものだから……。長く会話を続けたい時には、オースティンに後ろを向いていてもらうことにしたのだ。


「フフフ♪ 私はサラ様のお顔をずっと眺めていたのですがね。それでもサラ様とこうやってお話が出来るのですから、我慢しなくてはいけませんね」

「どうしてだか……。子供の頃からあなたのことを前にすると、胸がドキドキしちゃって顔が熱く火照ってきちゃっうのよね。それに、こんなゆでダコみたいになった顔はやっぱり恥ずかしいから見てほしくないの! だから、ごめんね」


私が一生懸命額の汗を拭きながら言い訳をしていると、横にいた母さまがクスクス声を出して笑い出してしまった。


「サラったら~~! それじゃ~オースティンに。サラが胸がドキドキするほど恋してるって告白しちゃってるようなものでしょ? 自分では気付いていないようだけど?(笑)」

「嘘~~!? えーーー! うああああああ。キャーーーーーーーー!!」


 母さまに言われて、私は状況を理解してパニックを起こして恥ずかしくって。その場にいても立ってもいられなくなってしまって、大声で叫び声を上げてそのまま自分の部屋へ全速力で走って戻って内側から鍵を締めた。そして、鍵を閉めた後で私は一人で部屋の中をクルクル回って慌てふためいていた。


気付かれた。絶対に気付かれた~~~。(涙)


どうしよう。母さまのバカァーーーー!!

ひどいよぉー! あんな言い方しなくても……(怒)


でも。私が一番バカなんだけど。(涙)


もう隠せないよね。バレちゃったよね? 優しいオースティンなら動じずに母さまに「ご冗談が過ぎるようで……」なぁんて言って笑っててくれないかな?


あれこれ考えながら、ベッドへ倒れこんで枕に顔を埋めて私は暫く項垂れていた。


「このままだと私。失恋しちゃうかも?」


 結局。その日は食事も食べる気になれなくて、部屋に引きこもってあれこれ妄想し過ぎてグダグダだった。もちろん何度か母さまが様子を伺いに来たけれど、寝ているふりをして私はドアを開けてやらなかった。


**************************


そして翌朝___。

これは私の多分長所の一つなんだけど。一晩寝ると、どれだけ気に病むことがあってもケロッと元気のスイッチが入る。昨日あれだけ悩んでグダグダだったのに

私はもう朝からモリモリ朝食を食べていた。


「フフフ♪ 一晩寝たらスッキリしちゃうのは小さい頃から変わらないのね」

「多分。これは父さまの気性なんだろうね。父さまも寝て起きたらケロッとしてるもの♪」


食事をしながら、私は母さまと夫婦ゲンカをした時の父さまのことを思い出していた。


「サラはどうしたいと思ってるの? オースティンのこと」

「どうって!? 側にいてもっとたくさん普通に楽しく話すことが出来たらなぁーっていつも思ってるけど……」


母さまはジーっと私を見つめて何かに納得したように笑っていた。


「やっぱり、外見は十分大人の女性に見えるんだけど。中身は小学生レベルなのね」

「ちょ! 今のどういう意味? ショウガクセイ? なんかバカにされたような気がする!」


私が立ち上がって母さまに詰め寄ると、ヘラヘラと母さまは笑いながら私を椅子に座らせてゆっくり話を始めた。


「だからね。大人の女性なら誰かを好きになると、好きな人に触れたり触れられたりしたくなるものでね。サラの気持ちはどちらかというと、小さな子供が初めて誰かを好きになった場合の気持ちに近いのよね。もっと一緒に遊びたいとか話したいとか出来れば自分に好意を持っていて欲しいとか?」

「あううう。本当だ。あ!? でも、ハグされるのはすごく嬉しいよ♪」


母さまは急に立ち上がって私をギュぅっとハグして頭を何度も優しく撫でてケラケラと笑っていた。


「もう~~~~!! サラはほんっとに可愛い。私なんて魔王に恋したかどうかも未だによくわかんないのに。サラはちゃ~んと恋しちゃってるんだよね~♪」

「えーーー!? 母さまは父さまに恋したんじゃなかったの? そうなの?」


 突然の母さまの爆弾発言に私はとても驚いて、自分のことは忘れて母さまにどうして父さまと結婚することになったのかを根掘り葉掘り聞いてしまった。


「そうだったんだ~~~! 父さまはずっとあんな感じなんだね~。母さまも痩せるために悪魔を召喚するなんて、よく思いついたよね。フフフ」

「えへへ。もう~魂売ってでもあの巨体から開放されたかったからね。まさか魔王の妻になるなんて、思ってもいなかったけど。フフフ♪」


私と母さまは暫く話題を父さまに変えて、キャッキャと騒ぎながら楽しい時間を過ごしていた。




そしてあの日から二週間が過ぎたというのに。パッタリとオースティンは私に姿を見せなくなってしまった。私はもしかしたら、あの日のことが原因なのかと心配になったので、朝早く母さまにオースティンのことを聞きに部屋まで行くと中から父さまと母さまの話し声が聞こえて来た。


「どうしてもオースティンじゃ駄目なの? サラはすごく慕っているのに」

「まだそんなことを決める歳じゃねえだろ? どうなるかもわかんねえし!」


私とオースティンのことを何か相談してるのかな? なんだろう?


「でも……。オースティンもあなたに遠慮してサラに近付かなくなったのかも知れないじゃない? せっかくその気になっていてくれたのに」

「オレ様は絶対にダメッつったわけじゃねえからな。まだサラはガキだ! って奴に言っただけだ。まだ結婚とか決める歳じゃねえだろ!」


なんか。話が勝手にぶっ飛んでる気がする。結婚って? 私のことよね。


そっか~。オースティンは父さまに反対されて来なくなっちゃったんだ。

やっぱ、私ってまだまだお子ちゃまだしね。仕方ないよね。(涙)


 結局。私はそのまま自分の部屋へ帰って、出かける支度をして、黙って魔王城の直ぐ側の街へこっそり気晴らしに遊びに行くことにした。


そしてこのことが私の運命を左右することになるなんて……。この時は思いもしなかった。













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