第5話「ヴァーリ」
翌日の放課後。
俺達5人は屋上に集まっていた。
「みんな集まったな。じゃあ行くか。」
竜輝はあまり乗り気じゃないみたいだけどな。
楓と光は不安そうだし。
唯一楽しそうなのは相楽ぐらいだ。最初は超能力が使えることに対して怯えていたんだか、心境の変化でもあったのだろうか。
いろいろ不安要素はあったがショッピングモールに着いた。
「零、ショッピングモールに来たのはいいんだか、何するんだい?」
竜輝が気になるのか質問してきた。まぁそこんとこは考えてある。まだ秘密だけど。
「まぁ焦るなって。付いてくればわかる。」
ショッピングモールの中を歩くこと5分。
目的地に着いた。
「さぁ着いたぞ。」
「ここって…ぬいぐるみ屋さん?」
そう。ここはぬいぐるみ屋。中にはプーさんやミッキーやスティッチなどのぬいぐるみがある。どれも聞いたことあるキャラクターだ。
「正解だ楓。よし、じゃ入るぞー。」
中に入ってみるのは初めてだったが、想像以上に広かった。人気があるのかもしれない。広ければ広いほど都合がいいからちょうどよい。
「先輩、入ってみたのはいいんですけど何するんですか?…あ!まさか先輩の奢りで何か買ってくれるんですか!!」
「なわけあるかボケ。」
高校生に4人分のぬいぐるみを買う金はない。しかもこの店のぬいぐるみ高いぞ。ぬいぐるみってこんなに高いのか。
「零、いい加減何するのか教えてくれ。」
竜輝は超能力の特訓内容が気になってしょうがないという感じだ。
「口で説明するより見せた方が早い。…あそこにちょうどいいのがいるな。ちょっとみてくれ。」
俺はぬいぐるみをぺたぺた触って喜んでいる女の子を指さしながら言った。
俺は女の子の後ろにあったぬいぐるみ。ミッキーのぬいぐるみを超能力で動かし、女の子の目の前にもってきた。
すると女の子は「ママ!ミッキーがお空に浮いてる!ママー!」
と言って喜びどっかに行ってしまった。怖がるかと思ったんだが…。
俺はミッキーのぬいぐるみを元の位置に戻した。
「零、まさかこれが超能力の特訓?」
「あぁそうだ。他にもいくつか考えてるが。」
竜輝は苦虫をつぶしたような顔して言っていたが、ほかの3人はそうでもないみたいだ。
楓はわくわくした感じで、相楽は今にでもやりたそう。光は表情に変化がなかったが、やりたいんだろ?そうなんだろ?
俺達は1時間ぐらいぬいぐるみを浮かしてみて子供たちを驚かしてみたが、店員に浮いてるぬいぐるみを見られたので撤退した。店員1人ぐらいに見られても大丈夫だろう。
ぬいぐるみが浮いたなんて周りには言わないはずだ。言っても信じてくれる人はいない。
それから俺たちはアイスクリームを買って休憩していた。
「先輩、毎日こんなことするんですか?さすがに危ないんじゃ。」
相楽の言う通りである。さすがに毎日やっていたら怪しまれるし、買わないで毎日行くのも躊躇う。
他にも何か考えないとな。
「よしじゃあ次行くぞ。光、早く食べろよ。」
光は「う、うん」と返事したが楓は違うみたいだ。
「え!?まだやるの?今日はもうお終いしないの?」
「まだ夜まで時間あるだろ。今日は次で終わりだ。」
俺たちは駐車場に来た。
「光は周りに人いないか確認してくれ。」
光は頷くと周りに人がいないか確認した。
「いないよ」
よし、今ならできるな。
俺は一番端にある車に集中した。
車が超能力で動かせるか試してみたかったのだ。
しばらくするとタイヤが回転しながら車は動いた。
そのまま車を動かし駐車場を一周して元の位置に車を戻した。
これもう免許いらないな。
他の4人も俺と同じようにそのまま車を動かし駐車場を一周して元の位置に車を戻す作業をした。
これなら怪しまれることはない。
車が走ってても運転席に人がいない事がわからなければ怪しまれない。
運転席に人が乗ってないのに車が動いてるところなんて見たら驚くなんてもんじゃないだろうな。都市伝説もんだ。
帰り道、久しぶりに5人で帰ったような気がする。
「せんぱ~い!明日は何するんですか!?」
こいつは楽しそうだな。
「そうだなー…考えとくよ。」
相楽がキャッキャしてるのを楓と光が楽しそうに見てる中、1人だけしけた顔をしてるやつがいた。
「…何か気に入らないようだな。竜輝。」
竜輝は考える素振りを見せた後、口を開いた。
「やっぱり僕はこのやり方に賛成できない。」
こいつはほんと真面目君だな。
「じゃ何か他にいい案があるのか?」
俺が質問すると竜輝はしばらく腕組みをして考えていたようだが、しばらくしたら首を横に振った。
「なら今はこのやり方しかないだろ。他に考えがないんだから。」
竜輝は頷いてたが、納得はしてない顔だ。
それから別れて家に着いた。
家に帰ったら飯が既に出来ていた。
「あーご飯食いすぎたなー。」
ベッドの上でゴロゴロする。
もしや超能力を使うと体力が消費されてお腹がすくのだろうか。
「明日はどうすっかなー」
そんなことを考えながらベッドでゴロゴロしてたらどこからか声がした。
「やぁ。こっちだよこっち。」
俺の親こんな声してたかな、と思いながらベッドから出ようとしたとき、俺の机の上に猫が乗っていた。
「誰だよ俺の机に猫なんて乗せた奴…新手のいじめか!」
俺は猫を窓から放り投げてやろうと片手で猫を持ったそのとき。
「なにしてくれてるんだい君は。早くおろしてくれよ。」
ん…まさかこの方向から声するってことは…この猫喋ってんの!?
俺思わず猫を離してしまうとネコは綺麗にターンして着地した。
「まったく君は猫に対しての扱いが雑なようだね。せっかく教えてあげようと思ったのに。」
超能力の存在を知った時点で、もう何も驚くことはないと思っていたが…まさか喋る猫とは…。
しかもこの猫ドラえもんにちょっと似てる気がする。
ん…ドラえもん似の猫…あ!まさかこいつ!
「君の思っている通り、あの洞窟で出会った猫さ。」
この猫、俺の心が読めたのか!?ハイスペックな猫だな。洞窟で出会った時はただの石の塊だったんだか。
「洞窟で出会った時は石だったぞ。なんで今石じゃないんだ。」
「まぁそのことは置いといて、超能力について知りたくないかい?」
なッ…この猫…超能力のことについて知ってるのか!!
「教えてくれ!何だこの力は!どうなってんだ!」
「落ち着きなよ。それは僕の使える力と似ているんだよね。」
僕?この猫も超能力が使えんのか。
「僕も石になる前の記憶がなくてね。今記憶が戻るように努力しているんだけど、一つだけわかった事があるんだ。」
「それは何なんだ」
猫は言おうかどうか迷ったのか数秒の間があった。
「推測なんだけど、僕の体を触ったことで人間の中にある何かが干渉して超能力が使えるようになったかもしれない。」
「つまり、お前の体に俺達が触ったことで超能力が使えるようになったと?」
「そうゆうことになるね。」
ん~…いろいろ考えることはあるが。これは不安要素が増えたな。この猫に触る事によって超能力が使えるようになるって事は、俺達より先にこの猫を触ったやつがいるかもしれない。そしたら超能力について情報交換ができる。
だが友好的とも考えられない。考えたらきりがないな。
「あと僕は君のような力…超能力者の事をイディオムと言っている。」
「イディオム…。」
何かひっかかるな…前にどこかで聞いたような…。
まぁ今は他に聞きたいことがあるので後回しにしよう。
俺は今一番危険に感じていたことを聞いた。
「俺達がお前に触る前に、誰かお前を触った人物はいるのか?」
俺達以外にこいつに触ったやつがいるなら、俺達以外にも超能力者…イディオムがいる可能性があるのだ。
「僕が目覚めたのは君に触られた瞬間だからね。その前に誰に触られたかなんてまったくわからないよ。」
使えないな!俺に触れてから石化が解けてきたのか。
「じゃあお前はなんで石になってたんだよ。」
俺はとりあえずこの猫から情報を得ることに専念する。
「それは状況から察するに、自分の身を守るためだと思う。」
「自分の身を守るため?お前は誰かに襲われていたのか?」
「それは…記憶がないからわからないね。」
どうやらこいつに聞いてもあんまりわからないようだな。
「それに僕は猫じゃないよ。ちゃんと名前があるんだ。」
名前は覚えてんのかよ。
「ヴァーリ。今度からちゃんと名前で呼んでおくれよ。」
変な名前だな。
それよりこいつをどうするかな~。
俺はしばらく目を閉じて考え、どうするか決めた。
「そうだヴァー…って消えた…。」
目を開けたら既にヴァーリの姿はなかった。
窓は開いてない。どうやって出たんだ…これも超能力だとしたらますます興味が沸いてくるな。
俺は明日ヴァーリの事をみんなに話すか悩んでいたら、疲れていたのかすぐに寝ていた。