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ある日超能力が突然使えました  作者: グリム
第二章 超能力者
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第27話「幼き頃の思い出 Ⅰ」

起きた時、人生初であろう空腹で目を覚ました。


「お腹すいたぁ……」


眠い目を擦り、寝ぼけた顔のままのっそりとベッドから起き上がり、食料が置いてあるだろう冷蔵庫へ向かう。


「あ…!」


扉を開け部屋から廊下へ出ようとしたとき、楓は気が付いた。

自分が、目を開けている事に。


「ひっ―――!」


寝ぼけた顔から急変し、恐怖で顔を歪める。

急いで目を閉じ、しゃがみ込む。

こうすれば辛い事や悲しい事を見なくて済む。


―――数分ほど目を閉じてしゃがみ込んでいると、たまらないほどの空腹が襲ってくる。


「うぅ……」


恐怖と空腹に戦い続ける楓だったが、やはり空腹には勝てず、思い切って目を開ける。


「……いない…」


目を開けると、頭から血を流す男の顔が目の前にいた―――という状況にはならなかった。

 やはり混乱しているときに見る幻覚なのか。それとも今まで見てきたものすべてが夢なのか。

しゃがみ込んだまま考える楓だったが、お腹の音が鳴ると急激に顔を赤くし、空腹状態だった事に気が付く。


きょろきょろと辺りを見渡すが、誰もいなかった事に安堵する。いないのが当然なのだが、今の楓にはそれすらわからない状態だった。


急いで立ち上がり、部屋を出る。1階に下り、冷蔵庫の中身を確認すると、おにぎりが3個とコンビニの弁当が置いてあった。他にも食材があったが、いますぐ食べられるおにぎりとコンビニ弁当を手に取り、レンジで温める。


レンジで温めている間、冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注いで一息に飲む。

 飲み終えたコップをゆっくりと机の上に置き、気分を落ち着かせたら、ある疑問に気付いた。


「人の気配が、ない……?」


部屋を出てきてから人の気配が一切しない。いつもならここで父が新聞を読んでいたり、母が料理をしているはずなのに……どこにもいない。

ドクン、と心臓が跳ね上がる。

私は……見捨てられた?

三日間誰とも顔を合わせず、部屋から出てきて来なかった楓に見限った両親が、私を……捨てた。


「ぁ……嫌ぁぁぁぁぁ!!」


冷静になった頭でそれを考えると、楓は耐えきれず発狂してしまう。

 机に置いてあったコップを薙ぎ払い、うずくまり、また一人の世界に入る。

直後、電子レンジが音を鳴らし弁当が温まった事を知らせるが、今の楓には聞こえていない。

何か重要な事を忘れている気がするが、思いだす気力が沸いてこない。


もう……何も考えたくない。


それとは無関係に、空腹は襲い掛かってくる。

三日間何も食べていないのだ、襲い掛かる空腹は並大抵のものではない。


「うぅ……」


涙目になりながら、立ち上がり電子レンジの弁当を取り出す。

 やはり、空腹には勝てなかった。


お弁当を食べたら今度こそもう自分は何もしないと言い訳をしつつ、割り箸を探す。

その時、家のインターホンが鳴った。


ビクッ、と一瞬驚いた楓だが、その音がインターホンの音だとわかると安堵の息を漏らす。

 いつもの癖で玄関先に行き、対応してしまいそうになる楓だが、ドアを開ける寸前で思いとどまる。


―――今の私が他人と顔を合わせても、迷惑なんじゃないだろうか。


今の楓は人の姿を見ると、その人の顔が頭から血を流し、驚愕に顔を歪めている男性に見える。という異常な状態だ。

なぜそんな幻覚が見えるかわからないが、今の楓には他人の顔を見る、という行為が恐怖以外の何ものでもなかった。


くるりと回転して、割り箸探しを再開しようと思ったが、このままではインターホンを押した人が外で待ちぼうけをしてしまう。


……音声だけなら、大丈夫だよね?


そう思った楓は玄関先の様子が見えるカメラに向かい、その人に申し訳ないが帰ってもらおうと決意する。


変なリズムで鼓動を刻む心臓を胸の上から手で押さえつける。

 ……カメラ越しなら、大丈夫だよね?


カメラ越しや鏡越しにもあの男性が見えてしまいそうな気がするが、今のところはまだ見ていないので大丈夫なはず。


ゆっくりと顔を近づけ、恐る恐る玄関先の映像を確認するとそこには、楓が一番求めつつ、今の自分の姿を一番見られたくないと思っていた人物がいた。


「なんで―――零が……」


その人物を見た瞬間、頭の中が真っ白になり、息をするのも忘れてしまう。

何秒思考が真っ白になっていたかはわからないが、徐々に回復してきた思考で今目の前の状況を考える。


なんで…零私の家に……。

無意識にそう考え、今まで楓が廃人のように過ごしてきたこの3日間を振り返ってみる。


「もしかして……私を心配して?」


あの少年なら、この3日間学校に来ない楓を心配して家まで様子を見に来てくれたという事は十分に考えられる。その行動が楓には嬉しかった。

―――でも、今の姿は見られたくない。


零に会いたいが会えないジレンマに陥っている楓が目にしたのは、零の後ろで清々しく立っていた少年だった。


「竜、輝……?」


零の後ろに立っていたのは、真剣な顔つきでゆるやかに立っていた竜輝だった。

なぜ一瞬竜輝が家の前にいるのか考えたが、考えるまでもなかった。


思えば零は私の家を知らない。幼い頃たくさん遊んだ覚えはあるが、家に招いたことがない。

竜輝は何回か家で遊んだ覚えがある。何して遊んだかは……覚えてない。


その事にちょっと申し訳なく感じつつ、昔の事を思い出していくと口元がほころび、くすりという笑が起きた。

 

昔は……たくさん遊んだなぁ。



◇ ◇ ◇




楓は幼い頃、病弱だった。そのせいで外に出て遊んだ経験がない。

楓が満足に外で遊べるようになったのは、天神市に来てからだ。

天神市に来て、楓の体調はどんどん良くなっていき、外で満足に遊べるようになる。

初めて外を走り回った光景を今でも覚えている。

辺り一面広がる芝を前に、胸が高鳴り、息が切れるまで走り回ったあの光景を―――


しかし、幼い子供の欲求はそれだけでは収まらなかった。


1人でいろいろな事をして遊んでいる内に、遊び相手が欲しい、と思ったのだ。

父さんや母さんと遊んでいても、すぐに休憩してしまうし、1人で遊んでいるのにも限界がある。


…幼い頃はよく自分と同い年の子はいないのか父と母に行ったものだ。


その頃の光景を思い出すと、自然と口元が緩むのを感じる。


だが、不思議な事に天神市は大人が多く、楓のような子供がいるのは極まれだと言われたときハンマーで頭部を思いっ切り殴られたような衝撃を今でも楓は覚えている。


―――ずっと1人で遊ぶしかない……。


そう感じた私は、今のようにどんよりした空気をしていたかもしれない。


その事実から立ち直れず、1人でブランコに座っていた時にその少年は現れた。


「―――君、1人?」


突然掛けられた声に驚き、反射的に顔を上げ、声の人物を見る。

 茶色の髪にぱっちりとした二重。髪はボサボサで、背丈は…楓と同じぐらいだった。


「……だ、れ…?」

「あ! ごめんまだ名前言ってないね」


少年は恥ずかしそうに頬をぽりぽりとかき、照れくさそうにする。

 すると少年は真っ直ぐな瞳で楓を捕え、はっきりと自分の名前を口にした。


「―――俺の名前は零、波多野零」

「れ……い?」

「そう、レイでいいよ。君の名前は?」


零はその二つの双眼で楓の目をしっかりと見つめた。

自然とその瞳に吸い込まれそうな感覚に陥るが、自分の名前を聞かれた事に戸惑ってしまい、数秒ほど目を泳がせる。

しかし少年はそんな楓の様子など気にせず、真っ直ぐと楓の目を射抜き、ワクワクしながらまっているのが楓にもわかる。


―――逃げられない


たかが同い年で大げさではないかと思うかもしれないが、そう感じた。

まるで蛇に睨まれた蛙……とまではいかないが、それに近い感覚だった。


「か…えで…」


意を決したはずの楓の出した声は、弱弱しく、相手に聞こえるか聞こえないかの音量だった。

それもそのはず。

家族以外で満足に話した経験がない楓にとって、これが初めてのコミュニケーションだった。


その決死の発言に少年は大きく頷き、楓に笑いかける。

よかった、伝わって――――


「…よろしくな!かえる!」


……伝わってなかった。





これが、波多野零と佐倉楓のファーストコンタクトである。


 

実は昔楓は性転換手術を……とか思ったけど悲しくなったので没

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