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ある日超能力が突然使えました  作者: グリム
第二章 超能力者
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第25話「焦燥」

今日、俺は朝早く目が覚めた。

 寝ると光の夢を見るからか、深い眠りにつくことができなかったのだ。


「…ッ!?」


夢の中で妹の皐月が、紅炎柱プロミネンスで焼かれて跡形もない光景を思い出して急いで皐月の部屋へ行く。


ガチャリ、と勢いよくドアを開けるとすやすやと安らかな寝息を立てている皐月を見て安心した。


「………夢だとわかってても心配するよな」


皐月の安全を確認できたので部屋を出る。


「速いけど学校に行くか」


台所に行き適当なパンを手に取り口に入れ、制服に着替える。ちなみにそのパンはチョコクロワッサンだ。


「……行ってきます」


母と妹を起こさないように静かに家を出た。




手早く靴を脱ぎ上履きに履き替え教室に向かう。

まだ朝のホームルームまで一時間半以上あるせいか、生徒の姿は見当たらない。

校門は空いていたので誰かしら先生は来ているはずである。


教室に着くと俺以外に誰もいなかった。机の上に鞄が置いてあるわけでもない、朝一番だ。

自分の席に荷物を置いてから座る。


「……さて、と」


…調べるなら、今だな。

人の少ない今の時間帯が一番、調べやすいだろう。


だがこの3階建ての馬鹿デカい校舎を調べるのは少々辛い。

……ヴァーリのあの言葉を信じれば、職員室を重点的に調べればいいとの事だが……他のところも調べた方がいいだろう。


空いている教室全てを調べたが、『ヤバい事』を示す資料などはなかった。

 やはり鍵がかかっている化学実験室などが怪しいだろうか。しかしあそこは勝手に出入りできる場所ではない。調べるなら夜中こっそり忍び込まなければダメだ。


「はぁ~……」


溜息をつくと、朝のホームルーム15分前の予鈴が鳴った。


「これ以上調べるのは無理か…」


辺りを見回すと生徒がだいぶ増えてきている。これ以上調べると怪しまれるだろう。

 調べるのを中断して教室に向かう。


「………零!」


教室に着くと竜輝が俺の姿を見るなり血相を変えて迫ってきた。


「……ここじゃ話ずらい、場所を変えよう」


それを聞いた竜輝は真面目な顔で頷いた。



教室を出て少し離れると、竜輝は俺に問う。


「…みんなは?」


みんなとはおそらく相楽、楓、光の事だろう。

 ……なんて言おうか考えていたが、俺は包み隠さず話した。


「相楽は学校に来てはいるけど話してない。楓は家に引きこもったまま出てこないそうだ。光は……」


……光の事をなんて説明すればいいか悩んだ。

なんて話せばいいんだ?俺のせいで光は出て行ったと話せばいいのか?


「……零?」


竜輝が心配そうに顔を覗き込んでくる。

 竜輝に心配されてるなんて……情けないな、俺。


今までウジウジしていた俺が急に情けなくなり、頬を一回叩いて気合を入れる。

 そんな俺を行動を見て竜輝が驚いた顔をしていたが気合を入れた俺は構わず光の事を言った。


「……光は、出て行ったよ」

「……それって、天神市からって事?」

「……あぁ」


俺達の住んでいるここ、天神市は昔北海道と呼ばれていたそうだが、今は天神市と呼ばれている。北海道から天神市になった経緯は俺が知りたい。


「……零、その話本当かい?」

「…どうゆう事だ?」


光が出て行ったと話しても納得しないので理由を聞いてみる。

 すると竜輝は少し考え込んでから答える。


「…天神市から出る事はできないと思うんだけど…」

「…何!?」

「……天神市に来る船はあるけど、ここから出る船はない…と思うよ。それに、天神市から出るには許可が必要だったと思う」


…そんなの初めて聞いたぞ!?

天神市で生まれて天神市で育った俺が知らなかったなんて……。

……ここから出ようと思った事がないからしょうがないよな、うん。

しかもここから出るのに許可が必要なんて……その許可は誰から貰うんだよ…!


「でも…そうか。納得したよ」


俺が考えていると竜輝が納得していた顔をしていた。


「…何にだ?」

「光が出て行った事に、だよ。彼は零と話す時だけ楽しそうにしていたし、ここに居る事が苦痛のような顔もしていた」

「……そんな顔、してたか?」


俺には周りと人と話すのが苦手なだけだと思っていたんだが……。ただ単に俺が鈍いだけ…か?


「それに――――――」


竜輝が何か言おうとしたところで担任の先生が俺達に声を掛けてきた。


「あなた達~、ホームルーム始まるから中に入りなさーい」


時計を見ると、朝のホームルーム3分前だった。


「今行きます」


竜輝が一言そう言うと担任の先生は満足そうな顔をしながら教室に入って行った。


「……じゃ、また後で」


竜輝はまだ話足りなさそうな顔をしていたが、先生の後を追うように教室に入って行った。

 1人残された俺は考える。


ここから出る手段は……ない。

 という事は、光はまだ天神市のどこかに、いる……!


「……でもな」


どこにいるかわからない光を探すのはきつい……というか無理だ。

 どっかの先生が言っていた気がするが、天神市の面積は83000平方キロメートルだったはずだ。

それに地形も山ばかりでデコボコしている。

とてもじゃないが一生かけたって見つからない。


「早くも詰みか…」


頭を抱えて唸っていると、朝のホームルーム開始を告げるチャイムが鳴った。


「やっば…!」


俺は考えるのをやめ、急いで教室へ入り席に着いた。



◇ ◇ ◇


放課後


人に聞かれたくない話をするならやはり屋上だろうと言う事で俺と竜輝は屋上に来ていた。

 楓は今日も学校を休んでおり、屋上に行く際相楽にも声をかけようとしたが、気が付いたら教室にいなかった。


「……僕がいない間、何があったんだい」


竜輝は屋上の手すりに寄りかかりながら俺に説明を求める。

 竜輝の零を見る目はどこか試すような色を感じ、同時に信頼の色を感じる。


「…まず、楓はあれから家に引きこもって学校に出てきてない。相楽はあれから俺を避けるようになった」


あれから、と言うのはテロリスト達に襲われてから、という事だ。


「……夢が零を避けている?」


竜輝は意外だな、と言う顔で聞いてきた。楓の事に関して質問しなかったのは薄々わかっていたんだろう。

「あぁ…理由はわからないけどな」

「そうか……」


……しばらくの間静寂が流れる。腕を組んで唸っているところを見ると、竜輝なりに何か考えている真っ最中なのだろう。


「……光はその頃どうしてたんだい?」

「光は―――――――――」


竜輝に光の事を言おうとした時、なぜか伊豆鳥島で光と戦った様子がフラッシュバックして言うのを躊躇ってしまった。


一瞬立ちくらみに似たような感覚が零を襲い、足元がふらつく。

 そんな零の様子をどこか変に感じたのか竜輝が声をかけてきた。


「零、大丈夫かい?」


目の前がぐるぐる回り、軽い嘔吐感が襲いかかる。全然大丈夫じゃない。最悪だ。

 ―――けれど、零は言わなければならない。


光はどこかへ行方をくらまし、その責任は全部自分であると。

 覚悟もなしに他人の心に踏み込み、立ちすくんで何もできなかったと。


……いざそれを口にしようとするが、口先が震え上手く言葉にできない。

 零がやっとの思いで口にできたのはいい訳じみた説明だった。




「……伊豆鳥島で、日本の火山を一斉に噴火させる準備をしていた」


竜輝はなるほど、という顔をして大きく頷く。


「なるほどね……それで零が止めに行ったのか」

「正確には光の居場所を突き止めた俺が、光に会いに行ったらそんな悪だくみをしていた、という話だけどな」

「あれ……どうやって伊豆鳥島に居た光を見つける事ができたんだい?」

「………」


的確なツッコミをされてしまい思わず固まってしまう零。

 この説明をするにはどうしても《BABEL》の話をする必要がある。しかし時雨から《BABEL》の事は言うなとあらかじめ釘をさされており竜輝に言う事ができない。


「――――――」


何も言わない零をどう受け取ったかはわからないが、竜輝はいつも通りの口調で話した。


「……まぁ、大体の事情はわかったからいいよ」


俺が言いづらいと感じたのかこれ以上説明はしなくていいと言う竜輝。今はその心遣いがありがたい。

 コイツ、前から思ってたけどだいぶイケメンだよな。

俺だったら好奇心を抑えきれずに聞いていた…かもしれない。

それにしても、


……思った以上に責められない。

 光がいなくなった事に対して罵詈雑言を浴びせられる事を覚悟していた。

しかし…予想に反して返ってきた言葉はいつも通りの口調であり、そこに零への憎悪は感じられない。

竜輝は光がいなくなってもいいと思っていたのか?

いや……竜輝に限ってそれはない。竜輝と光が仲良さそうに話している姿は見なかったはずだが、それでも名前で呼んでいたぐらいだ。


「…竜輝、もっと俺を責めないのか?」

「……生憎僕にそっちの趣味はないよ」

「違う!俺が言いたいのはそっちじゃない!!」


竜輝が白い目で見てくるのを慌てて身振り手振りで否定する。

 …そっち系の趣味とはやはり鞭とか縄を使ったプレイだろうか。それとも――――


「いやいや!光がいなくなった事に対してあまり責めて来なかっただろ?それで、どうしてかな、って」

「どうしてって…零は光を連れ戻すのに最善を尽くしてくれたんだろ?零が最善を尽くしても光を連れ戻せないのに、僕なんかが連れ戻せるわけないじゃないか。それに――――――」


……竜輝の俺に対する過大評価はこれが初めてではない。

 竜輝は一点だけ、俺に対し過大評価している部分がある。


それは――――――口がうまい事だ。


……もちろん口が美味しいという意味じゃない。


口が巧み、と表現すればいいだろうか。

 俺と竜輝は考え方が違うのか、意見が合わずに口喧嘩……とまでいかないものの、それに近い状況に良くなる。


俺が挑発をし、それに乗っかった竜輝の揚げ足を取る、という戦法なのだが、どうにもそのやり方に竜輝は憤怒を通り越して称賛を感じたらしい。


「交渉」や「説得」の部分に関しては竜輝は完全に自分より零の方が上回っている、と思っているらしい。


最近は挑発しても何の反応も示さないので面白みがないが。


「……ぃ……零!」


気が付くと耳元で竜輝が俺の名前を叫んでいた。


「…どうしたんだ?」


すると竜輝は額に手を当てて、参ったなーポーズを取る。


「悪い、話の途中だったな」

「まったく……。どこまで聞いていたんだい?」

「そうだな……俺の口がうまい事をべた褒めしてたとこまで?」


腕を組み真面目な顔をして竜輝の問いに答える。

 それを聞いた竜輝はジトッとした目を俺に向け、「べた褒めはしてないけどね」と言うと、話の続きに戻った。


「それに―――――――光はまだ天神市の中にいると思うんだ」


…その可能性は俺も考えていた。


何の返答もなく表情の変化もない俺を見て、竜輝はやっぱりかという顔をした。


「零もそう考えてたんだね」

「……まぁな」


天神市を出る船がないとすれば考えられる可能性は一つ。

天神市にまだ光が居る、という事だ。


それに…光はここから離れると言っていたが、光が示した『ここ』が天神高等学校なのか天神市なのか示していない。


「……もちろん、探すんだろう?」


竜輝がこちらを試すような目で見てくる。

 それに対して俺は――――――


「いや、探さない」


竜輝は眉をひそめ、明らかに不満そうな顔をする。


「…まぁ聞け、俺が光を探さない理由はいくつかある」

「………聞こうか」


竜輝は不満そうなまま俺を見る。


「一つ、光が言うには天神高等学校で『ヤバい事』が行われているらしい」

「ヤバい事……?」


竜輝は眉をひそめたままオウム返しに聞いてくる。


「あぁ、その『ヤバい事』が何かはわからないが、それが解決しないと光は帰って来ない。」


光がここを離れる原因がこの『ヤバい事』だ。これを解決しない限り俺が何を言っても光は帰っては来ないだろう。


断言する俺に竜輝は「なるほど」といい首を縦に振る。


「二つ、フードを被った男……その男をとっ捕まえる。光に変な事を吹き込んだのはコイツらしい」


光がもっとも畏怖していた人物…それがこの、フードの男だった。

 ならばそのフードの男を捕まえ、もう安心だ、と証明する事が大事だ。

『ヤバい事』とフードの男の件を解決しないと光は俺達の元へ戻ってこない可能性が高い……いや、戻ってこない。


この男に関しては情報がフードを被っている、しかわからないので後回しになるが。


「それに……楓と相楽の様子が気になる」


テロリスト襲撃事件から家から顔を出さない楓。同じくテロリスト襲撃事件からあからさまに零を避けるようになった相楽。


以上の理由で光を探しに行けない。

 今の零は失った友情よりも今ある友情が壊れてしまう事の方が怖かった。


「…そうだね、零の言う通りだ」


竜輝は真剣な眼差しで零を射抜く。


「今は光を探す事よりも、楓と夢の方を優先すべきだね」


……そのあまりのあっけなさに零は一瞬唖然とした。

 あの正義マンの竜輝が…あまりにも呆気なく光を見捨てたのである。見捨てたと言う言い方は違うかもしれないが、それに近い感覚を零肌で感じた。


そんな零の様子を感じとったのか竜輝がピシャリ、と言い放つ。


「もちろん、光も探すよ」

「あ、あぁ」


竜輝は光の捜索を後回しにすると言っただけで光を捜索しないとは言っていない。

 だが……なぜだろうか。

零には竜輝の言葉が酷く冷たく、無機質に感じられたのである。


「さて」


竜輝の声に反応して顔を上げると、そこには緊張した面持ちはなく、零の知っている竜輝に戻っていた。


「これからどうするんだい?」

「そうだな……楓と相楽の方を先に何とかしたいんだが、俺はどっちの家も知らん」

「え――――?」


俺の家知らない発言を聞いて竜輝が不思議そうな顔をした。


「零……楓の家知らないの?」


竜輝が驚いた顔で零を見る。

その反応、まさか。


「楓の家…知ってるのか?」

「もちろん」


竜輝は最高のスマイルで、悪びれる様子もなく言った。

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