第24話「悪夢」
「お兄ちゃん!起きて!」
バサッと布団を剥がされる。
「ん~……あと5分寝かせてくれ……」
「ダメだよ!遅刻しちゃうよ?」
眠い目を擦り、目を開けるとそこには妹の皐月がいた。
「どうしたんだよ皐月……起こしに来るなんて」
いつもは俺が自分で起きている。誰かが起こしに来るなんて事は基本的にはない。
それに皐月のテンションがおかしい。こんなにハイテンションの皐月を見たのは初めてだ。
すると皐月は14歳とは思えない妖艶な笑みを浮かべた。
「それはね……お兄ちゃんに会うのが今日で最後だから」
「……え?」
俺は皐月の言っている意味がわからず、一瞬硬直した。
その瞬間――――
「紅炎柱」
ゴオッ!という音と共に熱風が襲い掛かってくる。
「…くっ……!」
熱風が襲い来る中、目を凝らすと、皐月の体が一瞬にして燃え……塵になった姿が見えた。
「え………」
塵になった皐月の後ろに立っていたのは………光だった。
光はニヤニヤとした笑みを浮かべながら俺を見下している。
「まさか………お前がやったのか…!」
「……そうだよ」
光はニヤニヤした笑みを崩さないまま答える。
「…ッ!」
気が付くと俺は光に向かって殴りかかっていた。
拳が光の鼻先を捕えた瞬間、まるでそこには何もなかったかのように光は……消えた。
殴った勢いを止める事ができず、床を転がる。
「君は……何もできない」
部屋に俺以外の誰もいないのに、光の声がする。
「…僕を救う?笑わせてくれるよ。妹さえ救えない君が……!」
……あぁ、俺は…俺は……!
「君は結局口だけで、何もできないんだよ」
「やめろ……やめろ……!」
俺は…熱いのか、苦しいのかわからないが、胸を掻き毟る。
「"力"があっても……君には人を救えるほどの"力"はないよ」
「やめろって言ってんだろうが……!」
壁を何回も何回も殴りつけるが、光は言い続ける。
「むしろ君が首を突っ込めば突っ込むほど……状況は悪化するんだよ」
そうだ……俺は、救うどころか何もできやしない……。
光の事だって……1人で突っ走って、このザマだ。
特殊能力の事だって……誰にも話ちゃいない。
なぜだ…?なぜ特殊能力の事を言わないんだ…?
俺は……怖いのか?
特殊能力を手に入れた竜輝や相楽達が……光のように人が変わり、離れて行ってしまうから。
「君は…友達友達と言っておきながら、まったく友達を信用していない」
「違う……!俺は…!」
「何が違うんだい。君は、自分の事しか考えてない……最低だよ」
「……ァァァァァァアアアアアア!」
頭を抱えて床を転がる。
違う…!違う…!
俺は――――――――――
◇ ◇ ◇
「………ハッ!」
ガバッ!とベットから起き上がる。胸に手を当てると、汗でぐっしょりとした感触がする。
「夢か………」
光がどこかへ行ってから……光が出てくる夢ばかりみる。
光がここを出て行ってしまったのは……俺の責任だ。
あそこで俺が気絶せずに、光を連れ戻していれば……毎回光の夢を見ずにすんだかもしれない。
汗でぐしょぐしょになったシャツを着替えようと引き出しを開けた。一番上に置いてあった黒のシャツを手に取り、着替える。
俺がこれからする事は……天神高等学校を調べ、《BABEL》本部から来ると言う『煙男』に俺が超能力者だと知られない事だ。
………楓と相楽の事も、気になるな…。
楓はテロリストの一件からすっかり塞ぎ込んでしまって学校へ来ていない。
相楽は俺の事を避けている。それが意図的かどうかはわからないが……いや、あれは意図的だな…。
クソッ!……こうなったのも全部、超能力を手に入れてからだ。
超能力を手に入れてから……狂い始めた…。
楓は閉じこもり、相楽は俺を避け、光は消えた……。
それもこれも全部…!あの猫地蔵……ヴァーリと出会ってからだ…!
「…ちくしょう!」
イラついていた気持ちを和らげるため壁を殴るが、何も変わらない。
「…………ずいぶん怒っているようだね」
唐突に机の方から声がした。
聞き覚えがあるこの声……忘れたくても忘れられないこの声は…!
「ヴァーリ……!」
机の方を向くと、いつの間に居たのか、ヴァーリが居た。
「……お前のせいだろうが」
「…やれやれ、ほんとに人間の感情とやらは理解できないよ。責任を誰かに押し付けて何がいいんだい?」
俺が……責任を押し付けてる、だって…?
「確かに僕がきっかけで超能力が使えたかもしれない。だけど、それだけだ。テロリストが君たちを襲ったのだって、佐倉楓の心が傷ついたのだって…僕は関係ない」
もちろん……前島光が君達から離れた事も」
「そんなの……!お前が嘘を付いている可能性だって―――――――」
「可能性じゃないか。君は僕が嘘を付いていて欲しいと思っているだけで、現実は違う」
「……ッ!」
テロリストの件だって……ヴァーリのせいではなく一条のせいだと言うのはわかっている。
光の事だって、光が望んだ事だ。ヴァーリは………関係ない。
「……クソッ!」
モヤモヤした気持ちを吹き飛ばすために壁を殴る。
「……納得したかい?本当はこんな話じゃなく、君がどうやって特殊能力を発動させたのか知りたくてね」
「……俺がどうやって特殊能力を発動させたか、だって?」
「そうだよ」
「……そんな事教えて俺に何のメリットがあるってんだ」
生憎俺はどっかの誰かさんみたいにお人好しじゃない。
それなりの交換条件でないと……な。
それに…ヴァーリは気に喰わない。
「そうだね……天神高等学校の秘密のヒントを教える、じゃダメかな?」
「なん…だと…!?」
天神高等学校って言ったら今一番俺が欲しい情報だ…。
だけど何でこいつは俺が欲しい情報を知っているんだ…。
「……なんで、天神高等学校の秘密なんだ?」
「君が今一番欲しがっている情報だろう?あれ…違ったかい?」
ヴァーリがおどけた表情を見せる。
……実際には表情は変わってないので、俺の中にいるヴァーリが見せている表情だけど。
なるほど……見られているわけか、こいつに。
……天神高等学校の情報は喉から手が出るほど欲しい。光が怪しいと言ったからかもしれないが……俺も天神高等学校には何かあるのではないかと思う。
3階建ての馬鹿デカい校舎に、生徒が50人弱しかいないのはおかしい。
田舎だから敷地が無駄に余っていて、田舎だから生徒数が少ないのかと思ったが……何かあると言われれば確かに何かありそうだ。
「……わかった、その条件でいい」
ヴァーリは何も言わない。早く話せと言う事だろうか……まったく、せっかちだなぁ。
「…俺の特殊能力『再生世界』は過去に戻す力だ。『再生世界』をする対象に手を当てて、『戻したい』と考えると手が蒼く輝いて『再生世界』が発動する」
するとヴァーリは数秒ほど何も言わないでいると、ボソッと呟いた。
「………なるほど、感情か」
「……どうゆう事だよ」
「…おそらく、特殊能力は感情のたかぶりによって発動するんじゃないかな。一度発動させるとあとは感覚を掴んで二回目からは自然にできるようになる…とか。
僕達には『感情』がないから理解できないけどね」
……感情のたかぶりで特殊能力が使えたなら納得できる。
紅炎柱に貫かれる瞬間、俺は「戻りたい」と願い、頭の中に流れ込んでくる何かにしたがい『再生世界』を発動した。
……いや、今は『再生世界』の事よりも……。
「教えたぜ……さぁ、次はヴァーリ、お前の番だ」
「職員室を調べてごらん。これがヒントさ」
職員室…?重大な資料か何かが職員室に隠されているって事か?確かにあそこなら重要な書類は置いてある気がするが……『ヤバい事』とは関係がない気がする。
「おいヴァーリ………ってまたかよ」
下を向いて考えていたらこれだ。
気が付くとヴァーリはいなくなっていた。
「……あぁ!もう考えるのは後だ!後!」
これ以上考えると頭痛になりそうだったので、俺はまたベッドに潜り眠りについた。
夏休みに入りました。一週間に1本を目標にして現在も頑張っております、グリムです。
今日がバージョン1.2ex稼働日ということで!実は私コードオブジョーカーというSEGAさんのTCGゲームをやっています!現在SS2です。
マッチングした時はお手柔らかにお願いします。




