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ある日超能力が突然使えました  作者: グリム
第一章 変化する日常
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第16話「いざ行かん!桃源郷!」

「さっそくだが、光の居場所を教えてくれないか」


そっぽを向いていた一条はこっちに視線を戻した。


「いいわ。でもとりあえず今日のところは寝ましょ。明日案内するわ」


時計を見ると1時を過ぎていた。

 そうだな。今日のところは眠って、明日から光のところに行くか。


「あれ…でも明日って学校じゃないか?」


明日は平日だから普通に学校があるはずだ。なのに、一条は汚物でも見たような目でこっちを見てくる。

 そんな目でこっち見んな。


「忘れたの?明日は学校創立記念日で休みよ」


「あ」


思い出した。今まで超能力の事でいっぱいだったもんで。

 そうか、月日が経つのは早いな。


覚えてないからって汚物でも見るような目で見るような事はないじゃないか、何かに目覚めたらどうしてくれる。


「私はお風呂に入ってから寝るわ。あんたは先に寝なさい」


なんでこんな上から目線なんだ…ってお、お風呂だって?


「あ、汗で気持ち悪いから入るのよ。悪い!?」


俺の視線に気づいた一条が慌てた様子で説明する。いや、別に責めるつもりはないんだが…。

 そうか、お風呂か。


お風呂と言えば俺も入ってないな。俺も汗が酷い。

 うん、これはお風呂に入らなければな。

今すぐ入らないと気持ち悪くて吐きそうだ。


これは断じて一条と一緒にお風呂に入りたいからというわけではない。

 今すぐ入らないと気持ち悪くて吐いちゃうからな。

日本は混浴という風呂もあるぐらいだからな。男女が一緒に入っても違和感はない。


うん、OFURO最高!!!


「一条!俺も一緒に風呂は―――――」


ギロッと一条が睨む。

 これはNGサインだろう。

だがここで引き下がる俺ではない!


「俺とお前は同盟を組んだ。と、言う事はだ…お互いに洗いっこするのも同盟関係を深めるいい行いだとは思わないか?」


一条は何言ってんだこいつって目で俺を睨む。

 おうおう、そんな目で見んなや。俺も自分で何言ってるかわからないんだから。

何言ってるかわからないが俺には一つだけわかる。


それは、一条と一緒に風呂が入りたい!(ドヤ顔


一条はやがて溜息をつくと、何も言わず風呂場へ直行する。


え?これはもしかしてOKサインかな?行っちゃうよ?やる時はやる男だよ?


気持ちを落ち着かせるために数回深呼吸をする。


「…………よし」


気持ちが落ち着いたところで俺も風呂場へ直行する。いざ行かん!桃源郷へ!!


ガラッと勢いよく扉を開けた先には、スーツを脱いだ一条の姿が。

 おぉ…豊かな2つの山が今俺の目の前に。今からこの2つの山を揉~み揉みして洗うと思うと…グヘヘ―――おっと危ないキャラが崩れるところだった。


一条は拳を握ってプルプル震えている。心なしか赤面してる気もする。

 俺と一緒に風呂に入る事がそんなに嬉しいのだろうか。

いやー照れちゃうなー。


俺がズボンを脱ごうとベルトに手を掛けた瞬間、


「入ってくんなぁぁぁぁああああ!!!!」


渾身の右ストレートが俺の顎にクリティカルヒットし、俺の顔面は後方の壁にめり込んだ。


意識が遠のいて行く。


なぜだ…あれはOKサインじゃなかったのか…。

 消えそうな意識をフル稼働して、なぜ殴られたのか考える。


あ、そうか…。あれは俺に呆れて何も言えなくなったのか。今思うとため息もしていた。

 それで風呂場に直行したと。それをOKサインだと誤解した俺が風呂場に入り、殴られたと。


完全に俺が悪い。どうやら興奮すると冷静に考えられなくなるらしい。困ったもんだ。


謎を解決した事で安心したのか、意識がゆっくりとフェードアウトしていく。

 俺は意識がなくなる瞬間まで、脳裏に焼き付けた2つの山を凝視していた―――――




ーーー

チュンチュンチュン――――



小鳥の鳴き声が聞こえる。どうやらもう朝らしい。

 どうやら俺は壁に頭をめり込んだまま寝てたようだ。頭が痛い。


頭を壁から引っこ抜くいて辺りを見回す。一条の姿は見えなかった。

 俺より早く起きて、どっかに行ったらしい。ジョギングでも行ったんかな。


とりあえず風呂だ。体がベトベトして気持ち悪い。

 昨日は入れなかったが…一条がいない今がチャンス。


ガラッと勢いよく浴室の扉を開ける。


するとそこには…風呂から上がってきたばかりなのか、髪から水が滴っている一条がいた。


あ、何これ、デジャブを感じる。

 瞬間、俺の体は空を舞っていた。


ーーー



「…で、浴室の扉を開けたら私がいたと?」


現在、なぜいきなり浴室の扉を開けたのか必死で説明している。


「ジョギングにでも行ってるのかなって思いまして。はい、すいません」


ベッドに座っている一条に向かって必死に土下座している俺。


一条はジト目で俺の事を見ていたが、やがて「まぁいいわ」と言うとジト目から普通の目になった。


ちょっと残念……ってやばい…何かに目覚めてる気がする。


「それより前島光の居場所を知りたくはないの?」


「!?教えてくれ!」


バッ!と顔を上げ俺は鬼気迫る顔で一条に詰め寄る。


「ま、まぁ落ち着きなさいって!」


「ッ…!…あぁ、すまない……」


しばらくの間静寂が流れる。

 その静寂に耐えられなくなった俺は、口を開いた。


「あ~……そうだ!光の居場所はどこなんだ?」


「そ、そうね」


苦し紛れの逸らし方だったが、乗ってくれたようだ。一条がいい奴で助かる。


一条は数秒間顎に手を当てて、何やら考えていたようだがすぐさま口を開いた。


「この話をするのは私の家の方がいいわ。下に車を用意したら付いてきなさい」


さすがお嬢様…というかそんな素振りまったくなかったんだが。

 俺が気絶してる時にでも電話を掛けてたのだろうか。


そんな事を考えてる間に一条が部屋から出て行ってしまったので、慌てて部屋を出る。

 手早くチェックアウトし、外に出るとそこには一台のリムジンが止まっていた。


うぉ…これがリムジンか。初めて見るぜ。


リムジンをジロジロ見ながら感嘆していると、リムジンの窓から一条がヒョイッと出てきた。


「何してるの。早く乗りなさい」


迎えの車って……リムジンかよ!!


内心でツッコミつつ、恐る恐るリムジンに乗った。

 一条は「何もたもたしてんのよ」とか言ってるが、だってリムジンだよ?あのリムジンに乗るのに俺みたいな一般庶民が堂々と乗れるわけがない。


リムジンの中はいかにもザ・お金持ちだった。

 天井には小さなシャンデリアが付いていて、円形になっている後部座席。しかもこの後部座席がはんぱなく広い。運転席はタクシーの運転席ぐらいしかないのに、後部座席はタクシーの30倍ぐらいだ。


「すっごいな…」


思わず口に出してしまった。

 前を見ると一条はどっから出したのかオレンジジュースを飲んでいた。


「それ俺にも一杯くれないか」


「残念。コップが一つしかないの」


しれっと一条は言うが、嘘つけ。

 じゃあ冷蔵庫みたいなのに入ってるそのコップはなんだと言いたい。


「…あなたの口に触れた物なんて汚らしくて触れないわ」


あ、まだ風呂の事根に持ってるのか。

 たまに一条は俺の考えがわかるように答えてくる。


もしかしてコイツも超能力者なんじゃないの?

 本人は違うと言っているが、人の心を読む能力とか。ありそうで怖い。


そんな事を考えながら1時間ほどリムジンに乗っていると、一条の家に着いた。

 執事らしき人物がリムジンをドアを開けると、降りるようにうながしてきた。


「おぉ…」


リムジンを降り、前を見るとそこには一条の家があった。いや、家と呼べる大きさを超えている。

 例えるなら屋敷だ。もちろん田舎者の俺はこんな大きい家を見たことがないので、リアル屋敷の大きさに驚いて声を上げてしまった。


「こっちよ。付いてきなさい」


堂々と一条は当然のようにデカイ屋敷の中に入ってく。

 その後に俺も続く。


「お邪魔しま~す…」


礼儀としての挨拶はしたが、返ってくるのは反響した自分の声だけ。

 メイドが「お帰りなさいませ、お嬢様」というのを期待していたんだが、どうやら俺の想像とは違うらしい。


「ちょっと着替えてくるから、そこに掛けて待ってなさい」


わかった。と言う前に一条は行ってしまった。

 まったく…なんでそんなに上から目線なんだか…。


しばらくボケー、としていると後ろから声を掛けられた。


「こっちよ」


お前いつの間にそこに。という俺の疑問は何処に、一条がどんどん先に行ってしまうので、遅れまいと俺も付いてゆく。


「なぁ、お金持ちの家ってもっとこう、執事とかメイドがたくさんいるイメージなんだが」


歩いていてさっきからメイドや執事がまったく見当たらない。

 気になったので一条に聞いたみたが、すぐにそれは失態だったと気づく。それを聞いた時の一条の顔は悲しい顔をしていた…と思う。一瞬だったのでわからなかった。


「…私の両親は、小さい頃に死んで、その時ほとんどの執事やメイドはやめたちゃったわ」


なんでもないような顔で答えているが、内心そんな事ないはずだ。


「悪いな…」


「気にしなくていいわよ、それより着いたわ」


気が付くと厳重そうな扉の前に立っていた。


何やらカタカタと暗証番号を打った後、指紋認証をしていた。

 しばらくするとカチャリ、という音がして扉が開いた。


俺はテレビや漫画でしか見たことない光景に思わず唖然としていた。


「こっちよ」


中に入っていく一条に駆け足で付いてゆく。

 そこで見た光景に俺はまたしても驚かされた。

「な、なんだよ…これ!」


いろんなとこに設置されている端末。中央に大きく映し出されているモニター。

 そう、そこは軍が使用するような作戦室だった。


「ようこそ、対超能力者組織《BABEL》へ」

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