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ある日超能力が突然使えました  作者: グリム
第一章 変化する日常
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第15話「同盟関係」

「私、超能力者イディオムじゃないわよ」



……………………は?


いやいやいや、ちょ、え?

 だってさっきまで「真空刃かまいたち!」とか行って手から何か出してましたよね?

あれ何?もしかして手首に小型扇風機でも付けて突風出してんの?どうなってんの?


俺が慌てふためいてる様子を見て一条は軽く笑った。

 …笑ってる方が可愛いじゃねぇか。


「私が超能力を使えるのはね…このスーツのおかげなの」


「スーツって…今身に着けてるその?」


一条の黒いレザースーツを指さす。そのレザースーツは俺との戦闘でところどころ破れている。ハラショー。


「このスーツを着用することで一般人でも超能力が使えるようになるの。充分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない―――ってね」


なるほど…とうとう科学もここまで来てたのか。


驚きは少ない。

 いや、だってもう超能力は魔法ですもん。


…ん?


「そのスーツを着れば…誰でも超能力が使えるのか?」


少し緊張した声音で一条に問う。


「これを着れば誰でも…なんて美味い話じゃないけどね。訓練すればたぶん使えるわ」


一条は首を振りながら答える。


「その訓練ってどれくらいかかるんだ?」


一条は下を向いて数秒間黙っていたが、やがて意を決したように顔を上げた


「………………7年よ」


うげぇ!?7年!?途方もない時間だなぁ


「ちなみに言うと…このスーツも試作品なの。私以外誰も超能力は使えないわ。笑っちゃうわよね…このスーツを作成してから7年間…私以外誰も使えないなんて…」


一条は自嘲的な顔をして自分を卑下する。

 今もなお制作中というわけか。


だが引っかかる事が一つある。


別に一条の目的が超能力者イディオムになりたい事ならば、それでいい気がする。

 既に叶っているのだから。


だがそのスーツも数回超能力を使うだけで意識が飛ぶようだし、何回でも使えるようになりたいという事か。


だがそれが願いだとしてもここまで固執する必要はないと感じる。


俺は意を決して聞いてみる。


「一条………スーツを作った目的はなんだ」


一条はまた下を向いて黙り込んでしまったが、数秒後決意した顔ではっきりと言った。


「…超能力者イディオムの抹殺よ」


その目には確かに殺意が籠っていた。嘘じゃないとはっきりわかる眼だ。


おそらく一条はこの事を言うと自分が殺されるかもしれないと思って言うのを躊躇ったんだろう。

 だがはっきりと言った。俺に殺されようとしても刺し違える覚悟で。


これで襲ってきた理由がわかった。

 だがなんで俺だとわかったんだろうか。


誰にも超能力が使えるという事は見られてないはずだが…。


「ショッピングモールのテロ事件…あれは私が指示したわ。超能力者イディオムをあぶり出すために高い報酬を用意して雇ったのよ」


俺の考えを知っているように一条は答える。


こいつが…。

 だが自然と怒りは沸いてこない。


沸いてくるのは疑問だけだ。


「だけどなんで俺達…超能力者イディオムがショッピングモールにいるなんてわかったんだ?」


「噂が広まってたのよ。夕方、ショッピングモールに行くとぬいぐるみが浮いていたり、アイスが浮いていたり、車の運転席に人が乗っていないのに動き出す…とかね。

 それでピンときたのよ、もしかしたら超能力者イディオムがショッピングモールにいるんじゃないか…って」


 それで都市伝説的な感じで広まって言ったと…。

その噂を聞いた一条は超能力者の仕業ではないか。と考えたわけだ。


噂程度で実行に移すその行動力。相当超能力者に恨みがあるのか…?


「お前、念脳がなんとかって言ってたよな?それはなんだ?」


「念能力者の事?」


念能力者か。漢字が違ったみたいだな。

 一条の問いに頷く。


「念能力者は、動作なしで物質・物体を動かせる超能力者イディオムの事よ」


つまり念じるだけで物体が動かせる人の事を言うのだろう。

 俺だけじゃなく竜輝や光達も使えるのだが…。


「お前は…念能力者ではないのか?」


「私は…『真空刃かまいたち』以外超能力的なものは使えないから…」


一条の場合、超能力者イディオムですらないのだから使えなくて当然か。『真空刃かまいたち』が使えるだけでもすごい。


「なるほどな…。で、お前はこれから俺を殺すのか?」


そう言った瞬間、ギロッと一条が睨んでくる。

 おぉ怖い怖い。


ま、襲ってきたら超能力で体の骨を何ヵ所か折るけどね。これは立派な正当防衛だ。断じて折ってから抵抗できないところをしっぽりと楽しみたいなどとエロい考えはない。


「……殺せないわよ。今の私じゃ、あんたに襲い掛かっても返り討ちだから」


よくわかってるじゃないか。物分りのいい奴は嫌いじゃない。


「だけど…氷室竜輝、前島光、佐倉楓、相楽夢は抹殺させてもらう」


ギロッと一条を睨むが、怯むどころか睨み返してくる。物分り悪いじゃん。

 いや…もしかするとこれは。


「もしかして……光の居場所がわかるのか?」


ただの推測で何の根拠もなかったが、一条家は金持ちだ。情報網も俺の比じゃないだろう。


一条はゆっくりと頷く。やはりか…。

 だがおそらく一条は絶対に居場所を吐かないだろう。どれだけ残酷な拷問をしても。それだけ覚悟のある眼をしている。いや、やらないけどね。


自力で探しても居場所を知っている一条の方が早く見つけるだろう。

 光なら返り討ちにするだろうが、今の光なら殺しかねない。返り討ちにされた一条を想像するのは…ちょっと考えたくない。

たぶん一条は俺より超能力の事について詳しい。勝手に死ぬのは惜しい存在だ。


光に出会えてなおかつ一条を危険に合わせない方法…。


あるわけな―――――いや、あるな…一つだけ。


「一条」


自分でも驚くほど低い声が出た。これからいう事に緊張しているんだろうか。俺らしくない。


「…何よ」


一条は今だ殺意の籠った目で俺を見ている。

 ここで変な事を言えば、間違いなく一条は俺を殺そうとするだろう。

勝てないとわかっていても、自分の邪魔をするなら。

 …なら答えは一つだ。


「お前の願い、手伝ってやるよ」


一条は口を開けてポカーンとしている。正しいリアクションだろう。

 なんせ一条の願いを手伝うという事は、俺が死ぬと言っているようなもんだ。

だがしかし、世の中そんな甘くないぜ。


「ただし、条件が3つある」


「…条件?」


放心状態の一条が元に戻ったのを見て口を開く。


「あぁ。まず1つ、光の居場所を教えろ」


一条はそれぐらいなら。と、首を縦に振る。


「2つ、波多野零、氷室竜輝、前島光、佐倉楓、相楽夢。この5名を殺すのは一番最後にしろ」


一条は2つ目の条件を聞くとすぐさま「え!?」と言い不満そうな顔をしてきた。


「お前の目的は超能力者イディオムの抹殺だろ?なら俺達以外のイディオムを先に探し出して、俺に戦わせればいい。今のお前じゃ歯が立たない事もわかってるはずだ」


相手が好戦的じゃなかったら、戦わないけどね。

 まぁそこは一条の目的とは違うがこっちも話の通じる超能力者イディオムをいきなり殴りかかる事はできない。


一条は渋々頷いた。


「3つ、嘘を付くな」


一条はわけがわからない。という顔をして俺に説明を求めている。

 同盟関係に必要なのは信頼だ。

これがダメだったら全部崩れる。


信頼が一番だ。


「お前はイディオムを見つけて俺に報告する。報告を受けた俺がそこに行き抹殺する。心配ならお前も付いてくればいい。悪くない提案だろ?」


一条は数秒間腕を組んで考えた後、頷いた。


「よろしくな」


俺は右手を出して、一条に握手を求めた。


「……ふん!」


しかし一条はそっぽを向いて握手を拒んだ。

 まったく…先が思いやられるぜ。



こうして、一条と同盟関係が結ばれた。

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