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ある日超能力が突然使えました  作者: グリム
第一章 変化する日常
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第13話「超能力者同士の戦い」

一条時雨。


一回だけその姿を見たことがある。

 学校に1か月に1回しか来ないらしいが、今まで見たことがないのを察するにただ単に俺が興味がなかったので見ていないか、休んでる時に来ていたかのどっちかである。

 おそらく後者だろう。けっこう授業サボってたし。

1カ月に1回しか来ないのに単位はもらえるんだろうか。


いやいや、今はそんな事考えてる場合じゃない。


問題はなぜ一条時雨がいきなり襲ってきた。ということだ。

 見る感じ、一条も超能力者イディオムだ。


できれば超能力者イディオム同士仲よくしていきたいが、向こうは敵意丸出しだ。


よく見ると、一条は黒のレザースーツを着ていた。おかげで豊満な胸が…おっといけないキャラが。


「念能力者……やっかいね…」


ふと、一条が何か言った。

 考え事をしていてよく聞こえなかったが、なんとなく聞こえた。


「ね、念の…何?」


念脳がなんとかと言っていたが………さっぱりわからん。


「…」


そんな俺の様子はどうでもいいと言う態度で、一条はこっちの様子を見ている。

 俺から動くのを待ってるのだろうか。

生憎俺は戦う気がない。向こうが待ってくれるんならここは話し合いでもしてみるか。


「俺の名前は波多野零。あんたの名前は?」


本当は知ってるのだが、自己紹介は大事だ。


「…これから死ぬ人間に教える名前はないわ」


あ、それ俺が中学2年生の時に言ってみたかったセリフだ。

 一条ってお嬢様のくせにそうゆうところがあるのか。可愛らしいな。


「あ~…見る感じお前も超能力者イディオムだろ?なら超能力者イディオム同士仲よくしようや。俺は戦う気がない」


ひとしきり俺の思いを伝えた後、一条が口を開いた。


「…そんなの…関係ないわ!」


瞬間、一条が右手を伸ばし「真空刃かまいたち」を放ってくる。


予備動作をしてる暇はないので超能力を使い俺の体を横に投げ出す感じで念じる。


俺の体が右にふっとんだ後、さっきまで立っていた場所をズバババッ!と「真空刃かまいたち」が通り過ぎる。


あれをまともにくらったら体が裂けるチーズみたいに簡単に裂けそうだ。冗談じゃなく。


受け身をとり、すぐさま反撃するため状態を起こしたが一条が眼前にいた。


「ッ!」


飛んでくるパンチを紙一重でかわす。

 すぐさま次のパンチが飛んでくるので、超能力で砂を一条の目に目掛けてかける。


「うっ!」


一条が目を潰されて苦しそうな声を上げる。


好機!と、思った俺は一条の顔に目掛けて思いっ切り拳を振るう。

 女だからとかそんな事気にしてる場合じゃない。


一条は俺が拳を振り上げるのを感じたのか、右手を前に突き出してきた。

 やべ!この動きは!


真空刃かまいたち!」


瞬間、ズバババッ!という音と共に一条の右手から風の刃が飛び出した。


真空刃かまいたち』の予備動作を知っていた俺は間一髪、超能力で自分の体をふっとばして避ける。

 受け身をとっている暇はなく、勢いよく地面に転がった。


「ぐっ!」


地面に転がった衝撃で痛みが走る。

 しかし追撃のため痛がってる暇はないので、痛みを殺して即座に立ち上がる。


だが攻撃は来ない。

 よく一条の方を見ていると、息が荒い。目の焦点も合っていないようで、今にでも倒れそうだ。



どうする…戦うか逃げるか。


今の一条を倒すことはできそうだ。

 だが何か奥の手があるかもしれない。



やはり逃げるのが得策か。しかしここで一条を逃がすとまたいつ襲ってくるかわからない相手に一生怯えて過ごす事になる。それは嫌だ。体が持たん。



…不本意だが、戦うか。何も殺す必要はない。気絶させるだけだ。


そう決めた俺は一発で仕留めるためにダッシュで一条に肉薄した。

 超能力より物理攻撃の方がいいだろうと判断したからだ。だが、その選択は失敗だった。


さっきまでの状態が嘘だったかのように一条はしっかりとした足で立ち、右手を俺に向けて伸ばしている。



さっきのは演技かよ!

にしてもさっきのが演技となると一条は相当すごい役者だな。うん、ドラマ出れるよ。


殴る体制に入っていた俺はもう一条の目の前にいるので、中断することができない。今ここで「真空刃かまいたち」を使われたらなすすべもなくズタズタになるだろう。ボロ雑巾のように。


死を覚悟して「真空刃かまいたち」が繰り出させるのを待つ。


が、殴るために至近距離に近づいたおかげで気付いた。



―――気絶していた。


なんと一条は立ったまま白目を向いて意識を失っていた。

 おそらく最後の力を振り絞って「真空刃」を使おうとしたのだろう。

が、力を使い果たして気絶した…と。弁慶かよ。


既に意識がないなら殴るのをやめようと思ったが、今更殴る勢いを止められるはずもなく、俺の拳は綺麗に一条の顎を捕えた。


ゴッ!という音と共に一条は地面に倒れた。


「…やっちまった」


立ったまま気絶してる相手に顎ストレート。下手したら下を噛んでるかもしれない。噛んでない事を祈ります。




…さて、どうすっかな。



このまま一条を放置するのはよくない気がする。

 回復してまた襲ってこられても困るし。


とすると、俺の家に運び込むか。

 いやいや、家には母さんや妹がいる。もし見つかったらどうなることやら…。


ーーー


「ただいま」


「あらおかえ………零、その子…」


俺の背中には峰不二子が着てるようなエロいレザースーツの女の子。しかもレザースーツはところどころ破れている。


「零……警察に行きましょう」


「ち、違うんだ母さん!これには訳があって―――」


「あ、もしもし警察ですか?実はウチの息子が――――――――」


ーーー



…………想像したら鳥肌が立った。

 うん、家に入れるのはやめよう。


となると…ホテルか。


ここから30分ほど歩けばビジネスホテルがある。そこならば問題ないだろう。

 問題は、金だ!


ズボンにある財布をサッと取り出し、中身を確認する。


ある…。


そこには福沢諭吉が一枚、存在を主張するかのように輝きを放っていた。

 だがこれは今月のお小遣い。次のお小遣いまで10日以上ある。

ここで使うには…。


待つんだ、女の子を放置していいのかい?

 

脳内に天使の俺が囁きかけてくる。

 

そうだよな…女の子をこんな山道にポイっしちゃいけないよな…。


おいおい、本気でそんな事思ってんのか?放置しちゃえよ。背負って行ったら1時間ぐらい掛かるぜ?楽したいんじゃないのか?


すかさず悪魔の俺が囁いてくる。

 

よく考えてみればそうだよな。こいつなんて助ける義理ないし。このまま放置すれば勝手に死んでもう襲ってこないかもしれない。


そんな事したらなんで襲ってきたかもわからなくなっちゃうよ!きっと理由があるんだよ!


天使の俺が抵抗する。


確かにな…襲ってきたのには理由がある気がする。一条の様子を見れば一目瞭然だった。


おいおい、そんなの放置して野垂れ死にしたら2度と襲ってこないんだから関係ないだろ?


悪魔の俺が放置しろと囁く。


そうだな…生憎俺は正義の味方じゃない。運が悪かったな一条よ。恨むなら運の悪い自分を恨め。


クルッと自分の家に向けて俺は一条に背後を向ける。



……ホテル代より高く取れるかもしれないよ?


天使の俺が渾身の一撃を言い放った


前言撤回。助けます。

 よくよく考えたら、助けたお礼として謝礼金がいっぱいもらえるじゃないか。一条の家お金持ちらしいし。


放置して死んだなんてわかったら、目覚めが悪いからな。うん、安眠は大事だ。


一条の体を背負う。思ってたより軽い。これなら1時間もかからないだろう。


それに…豊満な胸が背中に当たって……デュフフ!――――おっといけないキャラが。



暗闇の中、おぼつかない足取りでホテルに向けて歩き出した。

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