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5.ジン

主人公に名前付け忘れ(汗

面白いから(?)このまま進みます。



 よく目を見れば、知性の光が見える。

 この鳥、知能が高いぞ。


 なら、コミニュケーションを試みてみる。

 とにかくこの世界の情報が欲しい!

 

「すんません、声が知り合いによく似ていたもんで。あなたは誰ですか? お願いです、教えてください!」


『魔神像を外部より守るのが我の役目。魔神像を封じるのが我の役目』


 ガーディアンでありデストロイヤーである? ってか俺って何者?

  

 怪鳥がクリッとした目をさらにクリッとさせた。

『まさか、お前、いやお前達、合体したのか!』


 合体?

 三体が争った結果一つになった事を言っているのか?


 何と答えていいやら。

 ここで答えをミスるとこの鳥と戦う事になる予感がする。


 だが、俺の逡巡を怪鳥は肯定と取ってしまった。

『異常事態である!』

 怪鳥が鋭い声で鳴いた。まさに怪鳥(けちよう)がごとき叫び声。


 一つ羽ばたくだけで、一気に天井まで高度を上げた。

 何というスピード。

 前の部屋で手に入れたスピードは何だったんだ?


 一瞬で射程外へ行ってしまった。


 いやこれヒット・アンド・アウエイ戦法取られたら手も足も出ないんじゃないかい?  さっきの爆風攻撃も射程が長いぞ。


 怪鳥は俺の頭上でグルグルと円を描いて飛んでいる。


『我は風の聖獣ジンである。お前は土の属性。土が風に敵うとは、まさか思うまい?』

 ジン? ジンってどっかで聞いた。

 それより、土が風にってなんだ?

 

 俺は岩だぞ!

 軟弱な土気じゃないんだ、堅いんだぞ!

 金気が具体化した姿ではないか!


 そしてジンと名乗る怪鳥は風。風は木気だ。

 金克木で岩は風の天敵じゃないか。真逆だぞ!


 なに言ってんだ、こいつ?


『故に我は、お前を守る最後の砦にして、お前を押さえる最後の砦なのだ』

 一声、甲高く叫び声を上げ、急降下を仕掛けてきた。


 強風を浴びせて来る。

 こっちとしては対処済み。

 筍をヘシ折りながら地に伏せてやり過ごし、隙を見て走り出した。

 こういった戦いは止まっちゃ負けだ。


 鳥は、また俺の頭上をグルグルと回り出す。


 状況がマズイな。手が届かない。

 いっそ石筍を折って放り投げるか?

 

 ここで閃いた。


 手に馴染んで堅い物。ピッタリの投擲兵器があった。

 鉄のサーベル!


 おびき出すため、真っ直ぐ走りながら剣に意識を集中する。

 体の中で凶器を移動させる。

 何も知らない鳥頭は、俺の後を真っ直ぐ追いかけて……。


 この辺で良かろう。

 肩からサーベルを突き出し、振り向きざまに手をかけ……。


 雷がサーベルに落ちたーっ!


 もんどり打って転がりまくる俺。


 スゲー音がして、車に跳ねられたような衝撃を受けた。

 どえりゃートラウマ。


 それもあって派手にひっくり返った。

 正直、ダメージはあんまりない。精神的ダメージのみだ。


 手足を伸ばして仰向けに転がっていた。


 びっくりした!


 痛くも痒くも痺れも無かったのが不幸中の幸い。


 さすが金克木。

 木、つまり風や空気の攻撃は俺に効果がない。

 風が土の上位であるとジンは言っていたが、なんのこっちゃ?


 だけど、この雷は強力だ。


 このスーツ、格好いいだろ?

 耐電処理は完璧だからダイジョウブだよ! って言われて、耐電スーツの人体実験なんか誰が引き受ける?


 大丈夫なのが頭で判っていても、気持ちが拒否する。俺の人間の部分が折れる。


 で、その鳥は優雅に羽ばたきつつ、俺へ接近してきた。

 凶悪な鈎爪を装備した恐竜のような脚で俺を掴もうとしているのだろう。


 離れれば強風。なんかすれば落雷。接近戦は恐竜の足。


 対策が思いつかない!

 心よりの恐怖。


 俺は逃げた。


 直線じゃなくギザギザに。雷怖い!


 走り抜けたコースで、ドッカンドッカン雷が落ちる音がする。

 空気が震える。足場が揺れる。


 目の前に石筍の柱が三つ並んでいる。これはマズイ!

 逃げるコースが限られた。短い距離だけど直線を強要される。


 予想通り、雷が俺の足下に落ちた。俺の足がもつれる。

 ヘッドスライディングでズザー。


 四つん這いで起き上がる。

 目の前には地下水の水たまり。


 水と電気。ものすごい嫌な組み合わせ。


 ジンは、俺感覚でビル三階程度の高さまで降下してホバリング。俺を睨め付けている。


 落ち着け俺!

 俺の身体は電気を通さない。俺の心が怯えているだけだ。

 踏ん張れ、俺の心!


 腰砕け状態で膝行り下がってしまった。やっぱこわい。

 だってさっきまで弱い人間だったんだ。


 手が水の感覚を捉えた。これ以上下がっちゃ駄目だ。

 でも怖い。水たまりが深ければ、潜るのも一手か?


 俺は水面を見つめた。水面には俺の顔が映っていた。

 初めて見る俺の顔。


 口が ω だった……。

 ……。


 いっやーっ! 嫌ーっ! 


 俺の何かが吹き飛んだ。

 要はジンを撃ち落とせば良いんだろ?

 手さえ届けば力で何とかなるんだろ?


 ジャキジャキジャキーン!


 俺の胸から二ダースばかりの土筆が生えた。

 石の土筆だ。


 鳥ゆえにジンの目はいい。その変化を視認した。だがもう遅い。

 無限ミサイル発射!


 石の散弾がジンの体に吸い込まれていく。

 回避するも半分以上が命中した。

 三式散弾をなめんじゃねぇ!

 

 ジンは体勢を崩してさらに降下。なんとか高度を稼ごうと翼を大きく動かす。


 逆転は今しかない!


 ガバと跳ね起きた俺。対空気味に右ハンマーパンチを放つ。


 当然、ジンとの間には空間が横たわっていて届くはずはない。

 だが、肘から先を分離すると……。


 即席ロケットパンチ! 


 見事右腕はジンの細長い首を掴んだ。

 よくやった、俺の右腕!


 そして帰属。

 右腕は何物にも代え難い法則によって元の位置へと戻り始める。

 こもままラリーアートか、アックスボンバーをかましてやるぜ!


 ジンの方も抵抗するが、右腕は離さない。

 上空にて踏ん張るが、それだと反作用で俺の体が浮かび上がる。


 相対的に双方近づいてくるわけだが、スピードが足りない。

 ウエスタン・ラリアットかアックス・ボンバーで、あの長い首をへし折ってやろうかと思ったが、このスピードでは無理だ。


 見てる間に右手が肘と合体し……困ったときの地獄突き。

 左手の指を抜き手に揃え、ジンの胸に向けて繰り出した!


 狙い違わずズッポシと突き刺さる。

 ニュルっとした感覚に続いて堅い物を折り貫く感触。


 ごぼり。


 音と共に、ジンの嘴から赤い泡がこぼれ落ちた。 


 羽ばたきを停止したジンと、重りにしかならない俺は、二人かさなって墜落した。


『……禁断の扉は開かれた……』

 蚊の泣くような声が聞こえた。虫の息となったジンだ。


『我の……魔玉を……受け取るがよい……』

 それきりおとなしくなった。


 回りにはジンの羽が散らばっていた。

 赤い血に染まった羽だ。


 血まみれになった腕を引き抜いた。

 大きな穴が空いた胸。

 そこには黄色の光が漏れていた。


 ゴーレムと同じか? これが魔玉か?


 俺はジンの遺言通り、肉の間から魔玉を千切り取った。


 握りつぶす。


 広大な空間中に広がる黄色い光。


 腕を通してジンの物だった力が俺の心臓部へと流れ込んでいく。たちまち体力が回復していった。


 ファンタジー世界を支配する四大元素説、だったっけ? たしか風、水、土、火だったと思う。

 風は電気に弱くて、草は水に強くて……これはポケモソか。


 たしか火は水に弱くて、火は風に強くて……火中心でしか憶えてない。

 五行思想だとそうとも限らない。

 少ない水は火によって蒸発させられる。小さな火は風によって吹き消される。

 ましてや風が属する木気は俺の金気によって克される。


 ややこしくなってきた。



 ちょいと現状を整理しておこう。


 風のジンを含め、今まで三体の魔物を俺は倒した。

 倒した敵の魔玉を強奪することで、俺の力が増していくことが解った。


 俺が元々持っていた特性は頑丈さ。

 初回のパワーファイターを倒し、パワーを手にれた。

 いわゆる2レベに上がったって事だ。


 二つめのゴーレムを倒してスピードを手に入れた。

 これで3レベ。


 そして風の聖獣ジンを倒して体力を回復したが、特にこれといった能力はない。


 スカだったのか、何かが足りないのか、気づいてないのか、どれかだろうと思う。


 なんにせよ敵を倒した以上、勝ち鬨を上げねばならない。それがプロレスラーによる観客へのサービスでもあるっ!


 拳を天に突き上げ、雄叫びを上げる。

「アンギャーォン!」

 ……。


 ω形状の口で、発声能力を手に入れたらしい。


次話「イフリート」


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