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18.アダマンタイト・火と風の幻獣

 既に、俺の体内に棲む五つの魔玉は膨れあがっている。


 地下で手に入れた五つの気。その一個一個が一回り大きくなっている。出力もそれに見合う物となっている。


 金気とは金属に代表される「硬い」性質と属性を表す気である。


 もともと、俺は金気の持ち主だった。

 ゲーム風に言うと、オリジナルユニークスキル「金気」だろうか?


 金気の扱いは意識下レベル。息を吸うように、物を見るように、女子の裸体を思い描くように、無意識に扱える。


 そのスキル=能力を全身全霊で使ったのだ。

 コンデンサーのエネルギーすら全て回したのだ。


 木気と水気の混合状態だった俺のボディは、ゼロ・フラットで金気化=硬化した。

 全身の8割以上(推測)がアダマントに置き換わったニューボディ。

 関節部分を一新。二次元関節を複数配備。

 そう――漢は黙って外骨格。

 聖教会! 俺は軟弱な内骨格を捨てたぞーっ!(*注:もともと外骨格。球体関節の間違い)

 

 誕生! ベヒモスッ・アダマンタイトォ!


 イフリートモドキより発する熱など、サウナほどにも感じない。

 俺は、モドキが、陽の気を取り入れてまで吐き出す熱に打ち勝つチカラを備えた。

 イフリートの吐き出す火気の出力により、五行ロータリー機関(エンジン)が強化された。


 俺はもういい。十分だ。イフリートモドキへのこだわりは消えた。


 だが、ガル先輩が受けたダメージの分のお返しをしなくてはいけない。

 英国紳士としてのエチケットである!


 朝食のテーブルに着くように、ごく自然にモドキの吐き出す熱フィールドの中を歩く。

 白い世界で唯一赤く輝く宝石を指先で軽くつまむ。


 パキャ!


 砕いてお終い。

 世界は色を取り戻した。


 大地から体に悪そうなガスを含んだ紫煙が上がっている。

 イフリートもどきはどこにもいない。


 俺の体は熱を帯びたままだ。

 構造材が変わったため、色がグレーになっている。

 乳白色より迫力が増してない?


 空を見上げれば、太陽が。戦う前とそう位置が変わっていない。思ったより短い時間の戦いだったようだ。


 いつもの魔法使いは姿を消していた。

 負けを悟って早めに逃げたのだろう。

 ハッハッハッ! いやが上にも慢心が高まろうというもの。


「バカヤロウ! デニス嬢ちゃんのカバーに回れ!」

 真っ黒けに焼けたガルが叫ぶ。


 その必死な声にただならぬ物を感じ、嬢ちゃんが隠れている木の陰に向き直る。

 結果、遅かった。


「アギャーッス!」

 第一印象は、首の長い猛禽類。


 巨大な鳥が飛び上がった後だった。

 足のかぎ爪には、それぞれデニス嬢とジム君が握られている。

 太い足には屈強そうな男が、それぞれ一人ずつ。


「人さらいー!」

 叫んだけど出るのはアンギャー系の咆吼。


 距離が離れすぎている。手は届かない。

 デニス嬢がなんか必死で叫んでいるが、距離が離れすぎで聞こえない。


「撃ち落とす!」

 両肩のパネルを跳ね上げる。ずらりと並んだ石筍ミサイルがスタンバイ。

 発射!


 あ、だめだ!

 まともに狙えば嬢ちゃん達に当たってしまう。

 だが、もう火が入った。止められない!


「くそっ!」

 体をエビぞり、怪鳥の頭上に狙いをそらす。

 

 ここでラッキーが起こった。

 一番隅っこを飛んだ弾丸が、怪鳥の顔面を直撃。


「ギャース!」

 む? 片目を潰したか?


 鳥は逃げるように、さらに高度をとった。嬢ちゃん達、耳痛くなってないかな?

「くそっ! 攻撃が前と同じで猿か? と訝しんでいたんだ。前の襲撃は本命のためのフリだったんだ畜生!」

 握った拳がギリギリと音を立てる。


「レムッー!! 追えーっ!」

 ガルがしゃがれた声で叫ぶ。首だけ持ち上げて目を剥いている。


 俺は、追わない。

 飛び去った方角だけを確認した。


 そして、ガルの側で膝をつく。

「大丈夫ですか? ガル先輩」


「オイラはほっとけ! 嬢ちゃんを追えーっ! 走れーっ!」

 血走った目。耳まで裂けた口から涎が飛んでいる。

 ガルは猛獣の顔で叫んでいた。


「速いとはいえ、俺の足じゃどうあがいても追いつけませんて」

 俺はガルに顔を近づけ、目視によって傷の程度を見極めようとした。


 ……まあ、見事に真っ黒けになったうえ、パーマ状態のガル先輩。見た目、傷の善し悪しが分からなかった。


 少しだけど、匂いが判るようになっていた。

 髪の毛が焼けた臭い匂いと、美味しそうな焼き肉の匂いがする。


 これは重傷だ!


「ガル先輩、俺一人じゃ限界があります。それにこの怪我じゃ……先輩を置いて一人で行けませんよ」

「うれしい事言ってくれるじゃねぇか。けどよ、この程度の傷なんざ一日ありゃ治る。それよりデニス嬢ちゃんを!」

 何とか動こうとするガルだが、芋虫のように蠢いただけだった。


「追いつけないのは判っているでしょ!」

俺は声を荒げた。


「敵は幻獣を二匹使ったんだ。それも一匹を犠牲にするような戦い方までして。用意周到ですよ! そんな連中なんだから、足止めの罠も仕掛けられてますよ!」  

「うっ」

 ガルは反論できないでいた。


 俺は声を和らげた。諭すような口調に切り替える。

「逃げた方向はわかっています。怪鳥は手傷を負っている。目的地までまっすぐ飛んだはずです。少しくらい遅れても追いつきますよ」


「しかし、嬢ちゃんの命が!」

 いつもらしくない。ガルは冷静さを失っている。


「大丈夫です。リデェリアル最後の生き残りです。聖教会は殺したり拷問に掛ける前に教化しようとするはずです。すぐに命に関わるような大事にはなりません」

「む、むう……」

 少し考えればわかる話だ。ましてやガルほどの頭脳の持ち主。すぐに理解できるはず。


「24時間で治るんなら、一緒に助けに行きましょう! 死んだと思っていたガル先輩がピンピンしてデニス嬢ちゃんの前に現れたら……」

「現れたら?」


「涙目で抱きついてきますよ」

「よし! それで行こう!」

 ガルの決断はいつも早い。


「じゃあ、ひとまず木陰へ移動しましょう」

「うぅ、すまねぇな」

「それは言いっこなしですよ、おとっつぁん!」

 俺は、ニューバディになった腕でガルを抱き上げた。


 じゅっ!


 あ、俺、全身焼き入ってたっけ!






 香ばしい匂いと共に 第4章・人外魔境の死闘  了


焼きの入った金属は危険です。

取り扱いは、ようzy……要注意です。

そんなこんなで、レム君がパワーアップしました。

パワーアップと言っても、より堅くなったのと出力が上昇しただけで、空を飛べるようになったとか、瞬間移動とかできるようになったわけではありません。

魔法だろうが陰謀だろうが全てを腕っ節でぶち壊す。それがレム品質!


さて、

これにて第4章終了です。

ちなみに、第5章のタイトルは「望むのは人間界」。


それでは皆様一足お先に、

よいお年をお迎えください。

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