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17.ディフェンス・火と風の幻獣

 息継ぎなしの炎のブレス。どこのボーカロイドだよ。


 俺はそれを受け入れ五行機関で巡回させているワケだが……。


 順当な手法として、水気から溢れた木気を体全体に流す。でもこれは、これは諸刃の剣。

 木気の性質の一つに「曲直」というのがある。


 木気とは成長と植物を象徴している。蔓や若木が成長する際、障害物を避けて上へと伸びる。それが「曲直」。つまり変形。

 俺がダンジョンでこの体を変形させたのも、木気のこの性質を利用したもの。


 あまり木気が元気ずくと体が変形、つまり柔らかくなりすぎる。それは熱により、より溶けやすくなるという事。 

 溶鉱炉の中に放り込まれた様相を展開する現状で、それは不利に働く。


 もう一つ木気が強くなって不利な点がある。


 水生木の理で、木気が強くなりすぎれば水気が木気に吸い取られ過ぎてしまう。

 木気から水気へチカラを渡すのは難しい。逆流だからな。

 水気のパワーダウンにつながる。


 コンデンサーに木気を溜め込むなど言語道断。火気で爆発してしまう。


 うわー! どうにかならないか?


 どうにか……たとえば金剋木、木気を金気が制するような……。

 いや、いやいや、それはない!


 それはパラドックス。

 火気を土気と金気が受けているんだ。

 木気を制するために金気を導入するなんてややこしい事できない。


 仮に回せたとしたら、水気の威力が減ってしまう。

 自らの首を絞める事になる。


 何か方法はないか?


 ……おや? 小指から滴が? 汗?

 違う? 体の先端部分が溶け出してきた?


 大ピンチじゃね?

 何か起死回生の一手はないのかよ、おろおろおろ!

 

 落ち着け俺! 必ずあるはずだ。それに思い至らないだけで方法は必ずある!

 何か方法があるはず!


 たとえば……。


 外付けハードディスクみたいな……。

 たとえば、本体以外の金気に木気を制させる様な……。

 ……。


 あ!

 あった!


 剣だ!

 アダマント製の剣だ!


 あれは堅い。熱に強い。俺の五行全力でも変形できなかった。

 そうだよ、そこに木気を流せばいい!

 アダマンタイトなら充分に金剋木の理を発揮してくれるだろう。


 金侮火って理もあるが、あれだけ堅かったら大丈夫だろう。なにせ伝説の超合金だからな。歴史上、二人しかアダマントを加工できなかったんだからな!


 よーし、木気をアダマント剣へ直接流す!

 だいぶ負担が軽くなった。

 体が溶け出すのも止まったようだ。


 これで打つ手が増えた。

 イフリートモドキのエネルギー切れを待つもよし。

 このまま進んで、コアである赤い宝石を攻撃するもよし。


 とは言うものの、エネルギーコアにたどり着くのは難しいな。

 炎の外縁部でこの温度だ。アダマント剣が余剰エネルギーを受けてくれているとはいえ、前進は骨が折れる。


 炎は内部へ近づけば近づくほど温度が高くなる。 

 ろうそくの炎や太陽と一緒で、……。


 嫌な予感がした。


 イフリートモドキのエネルギー源は……何だ?


 魔法使いといえど所詮は人間。人間にこれほどのチカラ、つまり魔力はない。


 俺は目をこらして……とーか、観念をこらして観た。俺の予想を否定するため、五行陰陽の流れを観測する。

 俺のボディにぶち当たっている炎の流れを観る。


 イフリートモドキに近づくほど火気は強くなる。モドキの口から火気が吹き出ている。

 火気はモドキの体内より。体の中心部にひときわ輝く火気の塊が見える。

 あれが赤い宝石だろう。

 その宝石がエネルギーの中心だ。


 こんな大きさからこの大出力。いくらなんでも無理すぎる。

 もっと丁寧に観察してみよう。


 意識を宝石に集中。すると観えてきた。

 

 上から風? が流れ込んでいる?

 エネルギーを変換してる?


 魔力とか魔素とか呼ばれるエネルギー然たるモノじゃない。

 火気とか木気でもない。


 もっと、こう、……もっと……陽の気そのもの。

 上から降り注ぐ陽の気……太陽?

 ……。


 やべぇ!


 あいつ何らかの方法で太陽からエネルギーを汲み出している!

 今お昼だから太陽は頭の上。

 エネルギーは無限、もしくは大容量電池!


 短期決戦しかない!

 炎の内部へ入り込み、中心核たる赤い宝石をたたきつぶすしかない!


 意を決した俺は足を踏み出していた。


 周囲の光が赤っぽい色から黄色っぽい色に変わる。

 サラマンダーモドキから吹き出す炎による抵抗が増していく。


 炎の色が白の領域に入った。

 いきなり抵抗がなくなった。


 炎が吹き出す入り口を越えた。

 そこは熱量の世界。熱だけが支配する世界だった。

 圧力も何もない。無風の世界。ただ、熱だけの世界。


 イフリートモドキの体内へ入ってしまった模様。


「うっ!」

 余剰エネルギーを一手に引き受けているアダマント剣が白く発光しだした。

 マズイ兆候である。もう保たない。


 それでも、コアである宝石までもう少しの距離まで近づいた。

 手を伸ばすもののコアまで届かない。

 本当にもう少しなんだが……あれ?


 指先が再び熔けてきてませんか?


 うを! 頭部の尖ったパーツが丸みを帯びている!

 いや、肩も足も腹も、角張った部分から溶け出している!

 ぜ、全身が溶けるてことは、溶岩化して死んじゃうって事?


 どうしたんですか、アダマント剣先生!


 はっ!

 アダマントが熔けだしている!


 熱で溶けたか?


 いやいや、俺の体を構成する岩が熔けてないんだ。加工不可能金属であるアダマントが熱で溶けるはずない。


 ではなぜか?

 むっ! 理解した!


 木気だ!

 木気の性質「曲直」に因るものだ。


 それは、変化。すなわち、物の性質を風のように自由に曲げてしまうこと。


 イフリートモドキの巨大な火気により、あまりにも極大化した木気がアダマント金属すら液化しつつあるのだ。

 ということは、神以外に加工が不可能だったアダマントが俺の体内で液化しているということ。


 形状的に液化している!


 え、らいこっちゃ! えらいこっちゃ!


 いや、いやいや、まてまて!

 コレは起死回生の一発に繋がるかもしれない。


 現在のアダマントは液化しつつあるので水気の性質を持つ。

 だが、本来アダマントは金気である金属だ。


 五行の面白いところは、一つの物質が二つの性質を持つのを許しているところだ。

 アダマントは水気であり、金気である。


 さて、落ち着け。ここからが思いこみの勝負だ。

 魔法なんて思いこみの産物だ。


 アダマントは水気。アダマントは水気。強く思いこむ。強く思いこむ。

 副作用として、岩で構成された俺の体まで溶けていく。


 銀の水たまりっぽいイメージが湧いてきた。

 そこに余りある金気を全力で注入する。


 銀の水よ、増えろ増えろと強く妄想する。

 金生水の理である。


 銀の水よ増えろ、増やせよ――。


  思いこむ物である。銀の水が倍に増えた。


 コツがつかめた!

 さらに倍! 続いて増産! どんどん増える。


 俺の体から液化した岩が流れ落ちていく。手や足、頭といった先端部から解体されていく。


 急がなければならないが、焦りは禁物。

 なんせ一度死んだんだ。死んで当たり前なんだ。


 金気への注入はここでストップ。

 次は木気のチカラを使う。


 銀の水を自由に動かすのは木気の「曲直」


 増えに増えた銀の水を喪失した体の部位へ、銀の水をあてがっていく。

 順繰りで体のほとんどを銀の水で構成。


 程なく仕上がった。


 ここで仕上げ。

 切り替えのタイムラグが心配だ。

 

 現在の俺は液体の状態。木気が抜ければ一気に形を失い、流れて死亡である。

 タイムラグが大きければ、水になってお終い。まさに水死。


 そうならないよう精神を集中。雑念を払う。


 周りから音が消え、熱さが消えた。

 巨大なパワーを持った木気が循環しているだけ。


 俺の……いまだ!


 木気を消失。

 一気に金気を立ち上げる。


 金気が爆発した。俺の全身に、俺の本性たる金気が、光を伴って顕現した。









 デニスとジムは、木陰から顔を出していた。

 それだけで焦げてしまいそうだった。


 それでも顔を出さなきゃならなかったのは、ガルが倒れたからだ。

 真っ黒けになった体から数条の細い煙が立ち登っている。


「ガルちゃん!」

「ダメだよ姉ちゃん! ガルはあんな怪我で死んだりしない! レムに任せるんだ!」

 飛び出そうとするデニスをジムが押さえている。


 レムがものすごい速度で炎の魔物に突っ込んでいった。


「レム君、まさか怒って……」

 レムに感情が芽生えたのだろうか?

 デニスは戸惑っていた。


 そのレムは、魔物がはき出す炎の中にいた。

 ごうごうとものすごい音が巻き散らかされる。

 ゴーレムであるが故、ガルのように燃えたりはしない。

 だが、前進できず。その場で立ち往生している。


「レム君! 無理せずに一度下がったほうがいいわ!」

 デニスの声が届かないのだろうか? レムは下がろうとしない。

 必死で炎に耐えている。

 まるでガルの敵を討つかのようだ。 


「でも、でも、わたしにも何かできるかもしれない!」

 パニックを起こしたデニスをジムが必死に押さえる。

「できないよ! おとなしくしていようよ!」


「そう、おとなしくするんだ」

 男の声が後ろからかかった。


 同時に体へ手がかかる。

 デニスとジムは腕を取られ、背中に回された。


 あっという間の出来事だった。


 顔半分が地面に押しつけられている。狭い視界に聖教会の紋章が入った。

 感覚から鎧を付けていない軽装だという事だけわかった。何人いるのかは解らない。


「おまえら、聖教会の人間か!?」

「いかにも。我々は聖騎士だ!」

 頭に拳骨を食らう。


「離せこの野郎!」

 暴れるジム。しかし、男が体重を乗せると動けなくなった。

「痛っ、痛てっ!」

 ジムは、たまらず悲鳴を上げた。


「やめて!」

 デニスが叫ぶ。

「やめてほしけりゃおとなしくしろ!」


「いつから聖騎士は誘拐までするようになったの?」

「人質確保だ! 戦場ではよくある話だろ! ほら、立て!」


 人質? 誰を脅すの?

 デニスは混乱した頭で考えていた。


「命まで取ろうと思ってない。もっとも手間を掛けさせるというなら、二人も面倒見切れない。どちらか一人で結構だ」

 そう言われては黙らずを得ない。


 デニスとジムの抵抗が止んだ一瞬を狙ったかのように、あっという間に後ろ手に縛られた。

 手慣れた行動だ。


 森から開けた場所へ二人を引きずり出す。

「作戦完了だ」

 軽装の聖騎士が片手をあげて大きく左右に振る。


 黒い塊が森の奥から湧いて出てきた。

 太い足を持つ巨鳥が走ってきた。聖騎士達の前で止まる。


 鋭いくちばし。大きなかぎ爪。

 とても大きい。レムほどの大きさだ。


 巨鳥は翼を広げた。とても長くて大きい翼だ。

 軽く羽ばたくと、巨鳥の体が浮かんだ。

 ものすごい風が吹き荒れる。


 デニスは目を開けていられなかった。

 何をされるのかが理解できた。


 デニスは叫ぶ

「助けて! ガルちゃん! レム君!」 

   


今回の出来事をまとめると、


サウナで一人我慢大会。

もうダメ、限界、脱水状態、出る!

「よーし一番先に出たヤツが全員に一万円な!」

どやどやとヤクザさんが入ってきて、出入り口近くを占拠する。

……お、俺もですか?


こんな所ですかな。


びにゅ……日に日に寒くなっていく今日この頃、皆様お風邪を召しませぬ様お気を付けください。

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