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10.渡る光

 あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!


 ドカーンと爆発してズドーンと倒れた。

 な、何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった。

 頭がどうにかなりそうだった。

 byがんばれベアーズ好きのフランス人。


 よし、頭は正常だ。


 ちゃんと受け身は取った。

 激しくマット……地面を(はた)いたから、あたりは揺れたかもしれない。


 うーん、まともに空を見つめたのは初めてだ。空は青く澄んでいた。

 いやいやいや、なんだこの攻撃?


 右胸の着弾地点が抉れてる。

 抉れてると言っても大穴が開いたわけではない。

 直径五センチほどが凹面鏡的に凹んでいる。


 ……えーとね、人間のサイズで直径五センチ深さ一センチだから、リアルにはもっと大きいか。


 俺の装甲の厚みから判断して、たいしたダメージじゃない。

 ジンの雷の方が派手だ。最初にぶつかったゴーレムのパンチの方が、なんぼか強かった。

 ただ、何発も食らうわけにゃいかない。


 ここで問題は二つ。


 どこから飛んできたのか?

 正体は何なのか?


 第二弾が来ないところを見ると、一撃で俺を倒したと思われている模様。

 時代的に大砲などの重火器は存在しないはず。


 いずれにせよ、発射点を探さなきゃいけない! 

 怪しいのは櫓。


「おい、大丈夫か! すごい音がしたぞ!」

 ガルが柵を跳び越えてきた。こっちへ走ってくる。


「大丈夫だ! 死んだフリをしてるだけだ。何にやられたのかが解らない!」

「攻撃魔法だ! たぶん爆裂系の上位、S級の――どぅわーっ!」

 ガルが横っ飛びに飛んだ。


 今までガルが踏みしめていた地点で轟音と爆炎がおきた。

 爆風と石塊が周囲に巻き散らかされる。

 大地に池と見まごうばかりの大穴があいた。


 勢いに負けたガルが転がっていく。

 俺の巨体が少しだけ宙に浮いた。


「あ、あぶねー」

 ガルにダメージは無い模様。すぐに立ち上がった。


 発射直前に危機を察して避けたか?

 これは認識野の肥大化に伴う野生の勘か?

 やはりガル先輩、ただ者じゃなかったか!


「あり得ない! 聖教会と魔法使いが組むなんてあり得ない! しかもS級の魔法使いが!」


 狙いを付けられないようガル先輩は、パターンを高度に組み合わせた回避行動を取っている。

 俺を中心にして円を描くように回行動を取っているのが気になるが、ガル先輩ですら恐れる爆裂系上位魔法。


だが俺は見た。

 仕組みを見た。


 巨大な木気が火気に力を与えていた。

 火生木を具現化した気の弾丸。


 射手はやはり櫓の上。 

 俺は勢いよく立ち上がった。

 そして走る。


 走りながら水の気を立ち上げる。

 水気が木気に。

 木気が火気に。続いて土気へ。

 最後は金気へと気のバトンを回していく。


「やめろ! 魔法使いは詠唱に入っている。たどり着く前に一発食らうぞ!」

 ガルがジグザグに走りながらも付いてきてくれている。


 先輩が言うように、確かに一発食らうだろう。

 だが仕組みが解った以上、何の恐れもない。

 俺は走った。


 まもなく柵に取り付ける。

 そのとき、櫓の中が光った。


 赤い閃光。


 魔法の一撃が、正面から胸に直撃した。

 胸で展開する眩しい火の花。


 だがそれは小さい。


 なぜなら、五気五行波動ロータリー式機関(命名俺。ただし仮)全開により強化された金気を体表に溢れさせていたからだ。


 それは、敵魔法使いが発する爆裂の魔法に込められた木気を凌駕する金気だ。


 爆裂の魔法。それは火が対象物に着弾した瞬間、圧縮した大量の空気を送り込む。

 その時、音速を超える燃焼速度が派生する。

 それが衝撃波を生成し、破壊力を生む。


 どうやって音速を超えるまで燃焼させられるかが解らないが、そこが魔法のチート性だと割り切るしかない。


 材料が火と酸素である、ということが今回のポイント。だ!


 酸素、すなわち風、すなわち木気を断ってやればただの松明。

 仕組みさえ理解できれば対策は講じられる。


 そこで金気だ。 


 魔法の木気を相克して余りある金気。いわば金気のバリアー?

 魔法弾はただの火の玉と成り下がる。


 こうなれば、俺の装甲にとって破壊力など無いに等しい。

 しょぼい火の玉なんざ無視!

 俺のショルダーアタックは止められないぜ!


 魔法使いっぽい黒フードの中年男が慌てふためいている。

 勢いを削がれることなく、防護柵へ突っ込んだ。


 スピアー気味のショルダーアタックは、あっさり柵をぶち抜いた。

 勢い、櫓まで倒壊させた。


 あの高さから構造材諸共、地面へ叩き付けられたんだ。魔法使いが無事であるはずない。 念のため、櫓部分を足で踏みつけておく。


「すげぇ。何回言ったか忘れちまったが、すげぇぜレム君!」

 さすが俊足のガル。もう追いついた。


「さて先輩、蹂躙の時間がやって参りました」

「オイラ達をなめてもらっちゃ困るぜ!」



 俺たちは、敵の懐に飛びこんだのである。




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