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6.追撃戦

「先輩、休息という時間など無いことを聖騎士の皆様に教えて差し上げねば……クックックックッ!……ならないようですね」

「クックックックッ! ぼちぼち仕掛けるかね?」

 もろ悪投の笑い声を上げる俺たち。


 騎士達が再集結した場所をガルに探り出させ、逆襲を掛けた。

 この時代、街灯なんてありゃしない。そして深い山と森の中。星明かりだけでは目が利かぬ。


 そんな暗闇の中、青白く目を光らせた巨大狼と、これまた赤く目を光らせた巨大ロボが、どこからともなくやってきて攻撃を仕掛けてくる。

 逃げても隠れても探し出され、しらみつぶしにやっつけられる。

 被害率は二百%。最初に襲撃され、帰り道にもう一度襲撃されるからだ。


 騎士達は恐慌を起こしていた。まして指揮系統を喪失している。立場が違えば俺でも怖い。


 フハハハハ! まるで「なんでこんな事になっちまったんだ!」とか、「俺たちは勝つ戦をしていたはずだ!」とか、「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」とか言う声が聞こえてくるようだ。


 分散された聖騎士の集団を探す最中、ガルから詳しい経緯(いきさつ)を聞いた。


 一方からの言い分、アンド、獣からの意見を差っ引いてもひどい行為だ。

 奇襲と大軍投入による有無を言わさぬ大量虐殺。

 ちょっとマジで腹立った。日本人としての矜持がこれを見逃せない!

 聖騎士と聖教会に対する攻撃が、熾烈になってしまうのも仕方ないこと。


 暗い森と険しい岩場。つまり神々が作りたもうた大自然が、聖騎士たちの敵に回った。

 俺が暴れると、重い鎧を着た騎士達が、坂道を転がり落ちていく。落馬して亀のように藻掻きだす。


 俺は血など見るつもりはない。ただ、連中を転がすだけだった。

 さんざん追いかけ回し、転がせまくった。

 まるで面クリアゲームみたいに、意地になって転がしていった。


 騎士ってアレだよ。着てる鎧が重いから、一度転けると二度と起きあがれないんだよ。

 面白かったかい? と聞かれれば肯定しよう。大人げなかったと反省している。反省しているが、助け起こそうという気は起こらなかった。


 あまりに広範囲すぎて、全ての戦場を再び巡るのがめんどくさかったのだ。


 だがまあ、聖騎士達のお道具だけは気になる。

 敵とか味方とか関係なく、男のロマンとして鎧甲・武器・装備に興味ないかね?

 この時代?の人たちは、どのような装備で戦いに挑むのだろう?


 そんな知的好奇心と、探求心が求めるまま、追い剥ぎ……もとい、調査とサンプリングを開始した。


 とはいうものの、このゴツイ手だ。細かい動作は望めない。

 木気と水気を使い、指先から聖騎士達の装備を吸い上げ、体の奥底へ移動させる。

 目で見るのではなく、五行の力で観る。


 なるほど、なるほど。

 うんふんすん。

 こうなっているのか。


 それじゃ、今度は取捨択一して……。

 あちらこちらの聖騎士達の装備をある法則に基づいて剥いていった。


「おい、そろそろ帰ぇーるぞ。嬢ちゃんが心配だ!」

 しばらくすると、ガル先輩から撤退命令が出た。

「もはやすべてが静かに、まるで死んだように見える」

 ガルが感慨深げに呟いていた。


 後輩である俺は先輩に大して口答えしてはいけない。体育会系じゃ先輩は、無理辺に兄弟子と書くと聞く。

 あらかた収集を終えたところだし、さして拒否する理由も見あたらないし、俺はガルの後について走り出した。


「デニス嬢ちゃん、目を覚ましてないかな? 一人ぼっちで怖がってないかな?」

「オイラがいないと何にもできない子だけど、ああ見えて芯の強い子だ。なに大丈夫さ。さ、帰ろ帰ろ!」


 東の空が白みかけた頃。夜の眷属たちは、戦場を後にしていたのだった。



 隠れ家に戻ってくる頃には夜が明けていた。


 案の定、デニス嬢は起きていた。泣きそうになっていた。

 ついでに、ちっちゃい子が一人増えていた。


 だれ? という俺の質問に――。

「ああ、ありゃデニス嬢ちゃん家の近所に住むハナタレ小僧のジム君だ」

 同じ村に住んでいたガルが説明してくれた。


「今年10歳。デニス嬢ちゃんが14になるかならないかだったから、4つ差かな? 同郷の生き残りがいたんだ。よきかなよきかな」

 俺を見上げる目に怯えがあった。膝から下が微振動している。


 デニス嬢が盛んに声をかけている。怖くなんかないんだよ。レム君は友達さ♪ ってところだろうか。


「来ないと思っていた朝が来た」

 ガルは眩しそうに、昇る朝日を眺めながらお座りしている。


 昨日は余程だったんだろうな……。

 そんなガルにデニス嬢が抱きついていた。う、うらやましくなんかないんだからね!

 俺のストライクゾーンは、大人のお姉さんなんだからね!


 こんな情景を見ていると、ふと思う。

 人間になれねぇかな?

「なれないこともない。……オイラには心当たりがある」

 ガルが大変なことをのたまった。


「姿を変えるシェイプチェンジって魔法(スペル)があると聞く。それと、魔族の中には人間に変身する変態もいるらしい。だったら、ゴーレムが人間みたいな何かになっても不思議ではない。とオイラ思うよ」


 なるほど。完璧は期待しない。せめて人間モドキに変身する技術を学べればいい。最低ムスコが帰ってくればそれでいい。


「是非探求させてください」

「デニス嬢ちゃんに支配されたフリしてくれるなら――」

「イエス・デニス・マイマスター!」


 話は大筋でまとまった。



明日から中国出張につき、更新を中止させていただきます。

次話更新は早くて17日かな?


ネット条件、その他条件がそろえば途中更新するかも?

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