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21.ABAYO

 

 白紙委任の森より、魔族の大軍が出てきたのは、全世界に甚大な被害を及ぼした大雨が降り止んでからだった。


 悪鬼がごとき黒馬に跨がる魔獣使いデニスがその先頭であった。


 コア帝国軍並びに、周辺国連合軍が包囲する陣営のにむかって一直線に歩を進めていた。そのコースが、故郷へ帰る一番の近道に過ぎないのだが。


 魔族はその偉容を見せつけるようにして展開。

 規則正しく、十段階に分かれて、各個撤収していった。


 人間の軍隊の中央で、エルダー・ドラゴンのエティオラが、前に進み出て、レムに頭を下げた。


 人間達の目には、レムの前を進むデニスに礼をしたかのように見えたことだろう。

 古の竜は、大きな翼を広げ、ひと羽ばたき。空の彼方へを消えていった。


 ここまで護衛のように付き従ってきた、裏災害魔獣、並びに、影災害魔獣が、デニスに頭を下げて後ろに膝行り、そのまま離脱していった。


 人間達に詳しい事情が知れることはない。

 敵は触手の王だ。

 レジェンドハイマスターは、触手ノ王との戦いに勝ち、それを従え、凱旋しているとしか推測できない。


 残ったのは巨神と神を狩る狼、そして毒竜の三魔獣。


 人間の軍のど真ん中をしずしずと進んでいく。だれも手を出そうとはしない。

 むしろ道を空けていく。


 彼らの目には、全ての魔獣を従えるデニス・リデェリアルとして映っていたのだろう。

 その光景は、海を割るかのようだったと、参戦した戦士達は故郷の知人に語ったという。






 その後。


 暴れ足りない魔族の若いモンの中には、内乱戦争を続けようと画策した者も大勢(約1,200人)いた。

「内乱という言葉と戦争という言葉がかぶってないか? 内乱は内乱であり、戦争とは違う。この二つの言葉の違いは、過去、為政者によって使い分けられてきた実績がある。よって、『内乱戦争』とは言葉の矛盾であり、これを使うのは大変恥ずかしい事なのである」

 と、白面鬼さんに指摘されるに至り、戦いは急速に収束の方向へ向かうのであった。



 デニスは美しく育ち(胸は育たなかった)リデェリアル村を代表し、外交活動に励んだ。

 特に、ランバルト公国とは深い友好を結び、互いに補填し合う関係を続けたという。



 ジム君は、晴れて――リデェリアル村の村長となる。

 が、あまりぱっとした話は聞かない。

 俗に呼ばれる「ロックウエル領の一日反乱事件」において、アルトリッチ公とダンクタマール王の会談に、リデェリアル村を開放したくらいである。



 ランバルト公国の武烈女王、デオナは死の間際、「ランバルトの名を冠した国が続く限り、デニスとリデェリアル村、そして巨神を敵とすることはあいならぬ」との言葉を残す。



 聖教会は、反逆事件の後、始祖エフィシオスの子孫ゲペウ教皇の手により、その規模を維持していたが、ゲペウの死後、規模を極端に縮小。宗教団体の一つと呼ばれるまで没落するが、消滅はしなかった。


 


 人類は……相変わらず人類は、だまし討ちを好み、人の命を軽んじていた。

 それでも、ナメクジが這うようなスピードで、文化を発達させていった。



 魔族は……この大地球が爆発四散して消えるまで、相変わらず魔族だった。










 やあ、レム君だよ!


 俺のお話はこれで全部お終いだ。

 もちろん、俺の人生ドラマはこれからもずっと続いていく(予定)。

 でも、ここから先は俺だけのお話で、俺だけのモノなのだ。

 だから、人には話さないし、話したくない。そこは察してくれ。


 君達は、俺が話しているこの時間が内乱戦争のすぐ後だと思っているかい?

 あれから何十年、何百年先の未来から語りかけているのかもしれないんだぜ!

 今、俺がどこの時間にいるのか、それも隠しておくつもりだ。


 今、俺の隣にいるのは、ガルかもしれない。美しく成長したデニス嬢かもしれない。

 ヨボヨボになった魔王さんかも、あるいは、意外な所で勇者かもしれない。


 今、立っている場所はリデェリアル村かもしれないし、とある大陸かもしれないし、宇宙空間かもしれない。 


 改めて言おう。ここから先は、俺のプライベートタイムだ。

 誰にも言うつもりはないんで、想像してもらうしかないが……。

 それも味気ないんで、一言いうとしたら――。


 俺は、相変わらず無謀神を信仰しているッ!



 ってなわけで、ABAYO! FRY BY!








 転生神誤(ゴーレムに生まれ変わったって、どうだろう?)

    ――完――



































 旧神は目を覚ました。

 見慣れない天井だった。


 暗くて湿っぽくて、檻が並んでいる。


 ……どう見ても地下牢だった。


 噂に聞く、神々の牢獄(コキユートス)であろう。


 世界に害をなすと判断された神は、より高位の、より強力な神々の合議によって、閉じ込められる牢獄があると聞いている。

 神の持つ個人的な波動に対応した反波動により、封じられる。事実上抜け出すのは不可能だ。


 旧神は己の体を観た。

 赤い光の球体だった。

 効率がよい球体の形しか取れなくなっていた。

 情けないほど小さく、貧弱になっていた。


「おい、そこのお前」


 声は牢屋の一つから聞こえてきた。


 フラフラと漂い、柵の隙間から牢の小部屋へと入った。

 そこには、変な髪型をした長身の男が座っていた。

 何やら人形のような物を弄っているようだが……この者は神だ。それも相当な力を持っている。


 自分を負かした巨神や渡来神など、足元にも及ばぬほどのパワーを感じる。


「おめぇ、負けたな?」

 厳しいことをずばりと言ってくる。


「いまのおめぇは低級神のレベルだ。程度の良い動物霊とさして変わらんぞ」

 情けない。


「ちょいと気の利いた巫女さんどころか、犬にだって消滅させられそうだな」

「……何が言いたい?」


 その反抗的な言葉に、変な神は黒く笑った。


「まだ心は折れていないか?」

「折れてるよ。折れてるけど、……何とかしたいものは何とかしたい」


 勘だ。この変な神は、交渉を持ちかけているような気がした。


「ここを抜け出す気はねぇか?」


 抜け出す?

 その諦めの悪い考え方に、思わず笑ってしまった。


「ここを抜け出せないのは、お前が一番よく知っているだろう? お前ほどの実力者が抜け出せないのだ。こんなしょぼくれた我に、ここを抜け出すのは不可能だ。」


 変な神は、さらに嬉しそうになった。

「抜け出す方法があるとしたら?」


「無理だと言っている。もうすぐ、我を捕まえに番神がやってくるだろう。我は牢に入ってないのに、ここを抜け出す力が無い。もう終わりだ」


 変な神は、すっと手を伸ばして、旧神の肩を(肩に相当する神部分を)バンバンと叩いた。


「良い方法があるんだ。それは俺と、この人形と、おめぇの三つが必要だ。どうだ? 乗ってみないか?」


 この変な神は、諦めという言葉を知らないらしい。それはそれで面白そうだ。

 どうやら、この変な神を気に入ってしまったようだ。


「くくく、よし、その話乗った!」

「よしよし、そうこなくっちゃ。じゃ早速だがよ、耳貸せ、耳」


 悪神と旧神の悪巧みは、別の異世界で事件を起こすきっかけとなるのだが、それはまた別のお話である。


最終回です。

グランド最終回です。

もはやレム君とガル先輩のお話が、語られる事はありません。

……閑話くらいならあり得ますが……


無謀神よ、永遠に!




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