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11.戦闘開始 レム君対チシャさん


 やあ、レム君だよ。


 俺達は、後顧の憂いを無くすため魔族闘技場会館付近のジャイアントを一掃。

 次に各方面より、包囲を狭めながら白紙委任の森へと侵攻を開始した。

 俺とガルは、魔宮の回廊を使う侵攻ルートだ!


 一気に白紙委任の森へ乗り込み、深い穴を穿つという、電撃作戦もしくは降下作戦に相当する強襲作戦である。

 

 俺達は、木が疎らに生えた、森になりかけの草原を急ぐ。

「あそこっすね、先輩」

「ああ、あそこの二本の木の間だ」


 背の高さ、太さはもとより枝っぷりも全く同じ。双子の大木がにょっきり生えていた。

 ……本体は一本なのかもしれないが。


「よし、突入するぞ!」

 ガルが走り出す。

 俺は……なんか、戸惑っていた。


「どうしてぃ?」

 なんていうかね――


「今回、ちょいと回廊を多用しすぎな気がしたもんで――」

 それは嫌な予感。


「――敵に回った魔族もいることですし、今回ばかりは人間相手みたく勢いで突っ切っていいのかな? ……な~んて、フと思ったものでして」


 魔宮の回廊を使うのは魔族。ならば、白紙委任の森の魔族も回廊を使う。


「魔宮の回廊へは一人ずつしか入れません。先頭が入った瞬間に入り口を塞がれたら、俺たちは分断されます。そうなれば各個撃破の憂き目にあいますよ」


「おいおいおい、うちの魔族達はダンジョンモンスターとは訳が違うんだぜ! 第一、洞窟内を得意とする魔族なんかいねぇ。例え回廊内で待ち受けている魔族がいたとしてもだ。あっちもこっちも条件は同じ。怖がるこたーねぇぜ! 各個撃破だぁ? それはこっちのセリフだぜ!」


 うーん、それもそうだな。


「よーし、ここは勢い付けて、行っちゃいましょうか?」

「そうこなくっちゃいけねぇ! 我ら無謀神の名の下に!」

「無謀神と共にあれ! 回れよ五行ロータリーエンジン! 脚部スラスター全開!」


 突撃!

 腰を落とし、ホバー走法で魔宮の回廊へ先頭切って突入していった。


 暗闇の中を突っ切る。一瞬訪れる浮揚感。目の前に現れる壁。

「ストーップ! ブレーキ!」


 願いもむなしく、洞窟の壁にブチ当たった。

 狭い洞窟の中、猛スピードで突っ込むと壁にブチ当たる。当然である。


「あーくそ! またガルにのせられた! ワンパターンかよ!」

 壁を砕いて凹ませてしまった。

 これ、魔宮の回廊管理人に見つかったら怒られるな……管理人っているのかな?


「ガル先輩、勢いよく入ると――」

 振り向いて凍り付いた。

 入り口が塞がれてる。


「俗に言う、戦力の分断という戦術だにゃ」


 だれだ?


 背後から女性の声がした。

 一瞬、背後の視界に白い人影を捕らえ……。

 瞬時に振り返るも、だれもいない。


「回廊の管理人さんか? だったら、壁を壊したことを謝る!」

「……管理人さんじゃないにゃ」


 後頭部に衝撃。俺は前のめりに倒れ伏した。

 全天視野で捕らえきれない敵だと?


「くっそ!」

 がばりと立ち上がり、後ろを振り返る。メインの視野で敵を捕らえるためだ。

「あちしは、人間がチシャと呼ぶ魔族ニャ」

 背後で影が斜めに動く。


 また背後からの攻撃。倒れそうになるのをかろうじて踏ん張って耐える。

 予想位置へ裏拳を放つも、それは空を切る。

 当たらない。こちらの攻撃が当たらない!


 透明人間とかじゃない。非常に速い速度で移動しているのだ。

 それも足音一つ立てずに。


 全天視野を持っているのに捕らえきれない。

 なんつー移動速度だ! 昆虫の複眼でなきゃ捕らえきれない! 

 俺はダッシュで壁に背を叩き付けた。被弾方向を限定するためだ。


「正しい戦術だにゃ。だけど、ここまでは手が出ないにゃ」


 俺の左側。洞窟の曲がり角近くにたたずむ影。

 その姿は直立した巨大なネコ。全身を淡雪の毛並みが覆っている。

 各部のバランスは人間と同等で手足が長い。違うのは、足が猫足であることだけ。

 二つの胸のふくらみが、女性であることを主張している。

 前髪を7:3に分けたボーイッシュな顔。頭の上に三角形の尖った耳。


 かなりネコ寄りなネコ耳生物。より高位のマニア向けデザイン! 

 なんて高度な魔族なんだ!


「確かにそこまでは届かないな」

 早さはガルが一番だと思ってたんだが……。

 この猫、身長10メートル越えなのに、なんて身のこなしだ。


 と言いつつ――

「バニシング・ゲイザー!」

 右ストレートの延長。拳が空を飛ぶ。


 吸い込まれるように、猫の顔面に向かって……。

 猫はヒョイと体を角の向こうへと引っ込めさせた。

 空振りした右拳は、洞窟の一部を削るだけで戻ってきた。


「ええい! ちょこまかちょこまかと!」

 ダッシュで距離を詰めるものの、既に猫めは一つ向こうの曲がり角に待避済みだった。

「小よく大を制す。って言うにゃ」

 ああああああ腹立つわ!


 落ち着け俺!

 ……ちょい、まずいな。

 スピードが段違いに早い。軽量級(ジユニアヘビー)の強みか?


 破壊力は俺の方が上だろう。だが、こちらの攻撃が当たらなかったら、それも意味がない。

 手や足の届かない相手は、俺との相性が悪いんだって事に今気づいた。


「あんた、ネコ耳さんだろ?

 声をかけつつ、じりじりとにじり寄っていく。


「あちしの名前はチュシャ。人間がそう呼んでいるニャ」

 チュシャか。嫌らしいネコにピッタリの名前だ。


「なんで魔族を裏切った?」

「触手さんが言ってた言葉があるニャ」


 それは、おそらくネコ耳さんことチュシャを落とした、魔のワードであろう。

 だが、待ちたまえ。これは、攻撃の届かない敵に対し、チャンスとなろう。

 俺は、今でこそ大河原大先生デザインのゴツゴツボディだが、中身はもともと知的にして、何にでも反論してしまう習性を持つオタク予備軍だった男。

 イデオロギー論戦に持ち込めば――。これは勝ったな!


 俺は、チュシャの理論武装を論破するため、次の言葉を待ちかまえた。


「反体制って言葉がかっこよかったからだニャ!」



 ねえ、ちょっと()っていいコイツ?

 

 



レム君の新しい必殺技が火を噴いた!


次話「戦闘中 レム君対チシャさん」


お楽しみに!

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