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10.レジェンド・ハイマスター、デニス・リデェリアル


 はっきり言おう。

 デニスに、魔獣を操るスキルはない。


 師である父と祖父は、事実、彼女の才能の無さに嘆いていた。


 世界を滅ぼす力を持つとされる六つの災害魔獣のうち、二つがデニスに付き従っている。

 番外の災害魔獣である、不滅の巨人レムもデニスに付き従っている。

 それも事実。


 では何が事実と違うのが?


 それは「付き従う」という概念。


 神を狩る狼ガルも、不滅の巨人レムも、毒竜サリアも、人間の小娘などに付き従ってなどいない。


 ある者は、自己的な欲望のため。

 ある者は、居心地の良さのため。

 ある者は、魂を救われたため。


 愛を求め、居場所を求め、救いを求めた者。その求めにデニスが答えた。

 それを絆と呼ぶ。

 友と書き換えても良かろう。


 デニスは知っている。

 肌で知った。

 魔族という存在を。

 魔族の本質を。

 

 それだから魔族は……魔族の王は、デニスに甘えた。

 人間の――魔獣を操る才能のない少女に、力を求めた。


 きっと、少女はそれに答えてくれるであろうと想い、重き責務を共に背負うことを願った。


 デニスと魔族の関係は、「友」であろうか? 「仲間」であろうか? 「同僚」であろうか?


 「戦友」

 それが、二者の関係を表現するに最も近い言葉ではなかろうか。


 魔族は文字を持たない。

 故に、契約は結ばない。

 魂が認めた相手を仲間とする。

 それが彼らの盟約に相当する。

 デニスとの間に、それはしっかりと結ばれたようだ。


 一度結んだ盟約である。

 何があっても反故にされる事はない。

 たとえ、デニスが魔族を裏切るようなことがあっても、魔族は盟約を守る。

 傷つく仲間がいれば、己の命を賭してでも友の元へ駆けつけるだろう。


 敵の兵士を殺さず、怪我をさせ、救助に来た仲間を狙撃する。そうやって戦力を削ぐ戦い方がある。


 効率的だと褒め称える人もいよう。

 洗練された戦法だと感心する者もいよう。

 確かに効率的だ。スマートだ。そのような戦いも有りと認めよう。

 だが、ここの魔族はそんな戦い方をしない。


 いや、言い方が悪かった。

 魔族は、そのような戦いをする必要はないのだ。


 彼らは、敵の罠と知恵と技術と工夫を、爪と牙とパワーで打ち砕くだろう。

 その力を彼らは持っているのだから。

 必要ないのだ。

 

 腕は黑鉄(くろがね)。度胸は真鉄(まがね)。打てば響く、男の胸に。男千両の音がする。

 それが魔族という生き方だ。


 傷ついた兵士をエサに敵を誘き寄せる戦法は、千両以上の価値があるのだろうか?

 それはお天道様に顔向けできる戦い方なのか?


 デニスは、前の戦いで、その生き方を魔族より感じ取った。

 その生き方に共感した。


 罠はいらない。技術も必要ない。知恵など無駄。工夫は有限。

 それを知った。

 それ故、魔族はデニスを仲間と認めた。

 よって、誰にもなしえなかった真の魔獣使いとなった。


 レジェンドハイマスター。この称号に辿り着けた者は、まだ一人しかいない。





『助けてくれー』

 弱々しく声を上げる巨人。血を流しているが、何とか立ってる状態。


『どうした? 大怪我じゃないか!』

 行方不明になった仲間を捜索に出た一人の巨人が走り寄ってきた。

 怪我をした巨人は、弱々しく首を振っている。近づいて見れば、喋れぬように猿ぐつわがかまされていた。


『助けてくれー』

 これは、この者の言葉ではない!

 気がついたが遅かった。


『ディオスパーダ!』

 レムが一弾を放つ。

 同時にガルが飛び出した。


 ディオスパーダが巨人に致命傷を与えた。

 ガルは、巨人の死体を引きずっていき近くの森に隠す。 


『賑やかなお人はんやこと。これでジャスト10匹目でありんすね』

 下半身が女郎蜘蛛。上半身が黒髪パッツン前髪妖艶系アラクネさんだ。

 金のキセルでタバコを燻らす姿が婀娜っぽい。


『アラクネ姉さんが張った蜘蛛の巣に(エサ)を貼り付けておいて、助けに来た敵巨人を仕留めていく。これは実に効率的ですね、先輩』

『おうよ』

 意気揚々と戻ってくるガル。


『戦争は効率と洗練さに尽きるんでぇ! いかにして味方の損害を減らし敵の損害を増やすか? 近代的な戦争は罠と知恵と技術と工夫を凝らすモンなんだよ。覚えときな!』

『勉強になります!』


『ちょっと、お二人はん。次の獲物がお越しやしたえ』

 アラクネ姉さんのはんなりした合図で、レムとガルが戦闘態勢に入った。


 二人の後ろ姿は、いろんなモノを台無しにした感に溢れていた。 

  





「無謀神と共にあれ! 回れよ五行ロータリーエンジン! 脚部スラスター全開!」


次話「戦闘開始 レム君対チシャさん」


おたのしみに!

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