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4.お告げ

激闘の末、多大な犠牲を払う事で、どうにか追撃の軍を振り切る事に成功したデニス達。


だがしかし、距離の問題は、未だ解決しておらず!



 あっという間に3日が過ぎた。残り2日。


 明後日、ゴルバリオンとランバルトの間で戦争が起こる。

 だのに、ランバルト公国まで、まだ11日の距離にいる。


 ゴドンは焦っていた。デオナは何も言わなくなっていた。

 敵は初日に襲ってきただけで、沈黙を守っている。

 これが敵の狙いだろうか? いつ襲われるか解らない恐怖に心が折れそうだ。

 西の空に夕日が沈む。今朝は日が昇る前にキャンプ地を後にした。それでも距離は埋まらない。


 夜の山道は危険だ。道は複雑で足下が危ない。道に迷ったりはぐれたりしたら、それこそ取り返しがつかない。


 ゴドンは断腸の思いで決断を下した。

「今日はここまで!」

 ライトニングボルトの足を止め、みんなに合図を出す。


「テントを設営する。……みんな休もう」

 その言葉を合図に、デニスとジムが大きく息を吐く。

 二人は緩慢な動きで、テントを設営し始めた。

 ゴドンも馬を下りる。


「リリス様、お疲れではありませんか?」

 愛するリリス姫ことデオナの手を取り、下馬を助ける。


「……いいえ。祖国の事を思えば、このくらい……」

 言葉の内容とは裏腹に、言葉と顔に疲労が溢れていた。


 デオナだけではない。デニスもジムも、連日の強行軍に疲労を滲ませている。




 そして疲労と無縁のグループの方々は……。 

『うわー、見てらんない。サリア姐さん! 姐さんの背中に人間達を乗せて飛んでやったらどうですか?』

 レムがお節介を焼き始めた。


『嫌よ。借りのあるデニスならともかく、なんでわたしが人間なんかの馬にならなきゃならないの?』

 長い首でそっぽを向くサリア。


『仕方ねぇな』

 ガルが話に割り込んできた。

 デニスを下ろしたガルは、レムの背後にいた。後ろ足で面倒くさそうに顎をかいている。


『あれ? 先輩、何か策あるんですか? そういえば、魔族的な奥の手があるとか無いとか言ってましたよね?』


 レムは振り向かずにガルと会話している。

 以前も自慢していたが、彼の視界は、ほぼ全天360度。足の裏と股の下以外は、視界に納まっている。普段は前面に焦点を合わせているが、こういった使い方も出来る。

 いわゆるゴーレム体質である。 


『あら、人間界への魔族の介入は禁止されてるんじゃありませんこと?』

 サリアは横目でガルを睨んでいた。


 それに対し、ガルが悪どい顔をして答えた。

『それがよ、魔王さんっつったらよ、前の聖教会編で出した人間界への介入許可を引っ込め忘れてんだよ。迂闊だよ。そこに付け入ろうってんだよ』


『……確かに撤回してないわね』

『なんかわかんないけど、それで行きましょう!』

 レムが勢い込んだ。


 サリアは腰を下ろし、嫌みなまでにくつろいでいる。その姿勢がちょっと可愛いかもしれない。関係ないかもしれないが、黒皇先生がこっちを見ている。


『で、犬さん、何をしようっての?』

『魔宮の回廊を使う』

『なるほど! 魔宮の回廊ですか!』

『レム君、キミ、魔宮の回廊って知ってるのかい?』

『すんません先輩。仲間はずれにされるのが怖くって』

『仕方ねぇな。まあいい。魔宮の回廊ってのはな、アレだよ。パーッとあっち行ったりこっち行ったりできる便利空間の事だよ』

『……わたしが説明するから犬はひっこんどいで!』

 たまらず、サリアが口を出した。さすが、魔族では貴重なツッコミ体質である。 


『大昔から存在する特殊な空間の事よ。この次元と別次元の狭間にそれはあるわ。その中は空間が圧縮されているみたいで、そこを使うと長距離を短時間で移動できるの。大地球の表面を網の目状に繋げているの。だから「魔宮の回廊」と呼ばれているのよ』  

『なるほど、よく解りました』

 レムは理解した。


『サリア姐さんは、その回廊を使って出張に行ってらしたんですね?』

『そうよ』

 丁寧語で持ち上げられて、まんざらでもないサリアである。


『ちなみに、魔宮の回廊は、いつ誰が何の目的で作ったんですか?』

『さあ?』

 サリアが首をかしげた。実にカワユイ仕草である。関係ないと思うが、黒皇先生がこっちを見ていた。


 レムは、答えを求め、ガルに顔を向けた。

『さてね?』

 ガルもそっぽを向いていた。……これは知ってる顔だ。


『オイラもそのことに関して全く気にも掛けなかった。なにせ生まれるずっと前から魔宮の回廊があったんだからよ。普通にあるモンだとしか思わなかったぜ。言われてみれば、誰が何のために作ったんだろう事ほど左様に?』

 蚤などいないはずなのに、あざとく首筋を後ろ足で掻きむしるガルである。


『そーいえばそーね?』

 サリアも疑問符を付けた。どこか気もそぞろである。


『でもきっと、あのバカ……もとい、神様よ。訳わかんない施設は大抵あのバカ……もとい、神様が作ったものよ。だって、血液型がB型だって噂が流れてるくらいだから、あのバカ、もとい……神様は』

 サリアは「あの」神様崇拝派であった模様。


『前もって知っときたいんですが、魔宮の回廊に入る時……痛くないですか? サリアさん』

 ゴツイ体のくせに根が小心者のレムであった。


『いや、なんでオイラじゃなく毒竜さんに聞くかな?』

『条件が揃っていれば、どこからでも入れるわ♪ すぐそこにも好条件の場所があるしぃ!』

 黒皇先生が近寄ってきた。サリアは真っ先に背筋を伸ばす。


『中は普遍的な洞窟ね。所々、意味不明なオブジェが飾られているけど、趣味が悪い所から見て、あの神様が雰囲気を出すために設置したんだと思うの』

 黒皇先生とは関係ないかもしれないが、サリアは特に優しく丁寧な解説モードに入っている。


『初めて中に入る魔族には、テストが待っているわ。でも、テストは通過儀礼の様なもので、結果がどうあれ通行パスはもらえるのよ』

『俺はいいとして、人間はどうですかね? デニス嬢とかゴドンさんとか、通れるんですか?』


 サリアは言葉に詰まった。

『……サリア、やってみなきゃわっかんなーい♪』

 黒皇先生がサリアの隣に並んだ。実に以下略である。


『問題は、どうやってデニス君達に伝えるかであるな』

 黒皇先生が発言なされた。


『確かに。オイラ達魔族は知的生命体である事を隠している。だってそっちの方が面白いんだもの。だから手はねぇ……事もない。毒竜さん。ここは一つ夢のお告げって事で――』

『嫌よ!』

 間髪を入れずサリアは断った。


 黒皇先生が口を開いた。

『サリア、一肌脱いでくれるか?』

『喜んで!』

 こうして、魔族の優しい人類ポカン計画は、順調に進んでいくのであった。





 よい子は寝静まる丑三つ時。

 どこからか湧きだした夜目にも鮮やかな乳白色の濃霧が人間達を包む。


 ……どこかで一度見た光景だった。


 今回の被害者はレジェンドハイマスター・デニスただ一人である。


『起きなさいデニス。起きるのです』


 ここはデニスの夢の中。

 優しい女性の声が、デニスの耳朶に優しく染みこんでくる。


 デニスは目を開けた。

 そこは霧が立ちこめる白い空間。


 デニスは、全裸で立っていた。ヤバイ所は微妙に霧が隠している。

 ガルのたってない希望による演出である。

 夢の空間なので通報は無効である。


『リデェリアルのレジェンドハイマスター・デニス。あなたに伝える事があります』

 声はどこからか聞こえてくる。


「え? ここはどこ? わ、わたしはレジェンドハイマスターなんて代物では……」

 パニクるデニス。そこは織り込み済みである。どす黒い笑みを浮かべた魔族間で、何度もシミュレーションされている。


『結果として災害クラス魔獣を3つも従えているのです。魔獣を支配するとは、そんなものなのですよ。もっと自分に自信を持ちなさい』


 デニスは、声の方向へ視線を向けた。

 長い髪をした若い女性が立っていた。

 輪郭がぼやけ、顔の表情も見えない。だけど「なぜか」美人である事だけは伝わってくる。そこは譲れない所らしかった。


「あなたは一体誰なんです?」

『私はリデェリアルの始祖、魔獣使いのサリア』

「リデェリアル村の始祖にして、最強・最高の魔獣使いサリア様!」

 デニスは尊敬して止まない大先達の出現に、一も二も無く跪いた。


『デニス、あなたはいま困難に直面していますね?』

「な、なぜそれを!」

 素直なデニスは、疑うことなくサリアの指摘を受け入れた。


『私があなたを導きましょう。この先に、あなたの巨神が入れるほどの大きな岩の切れ目があります。その奥の闇に入るのです。恐れる事はありません。どのような試練があろうと、勇気があなたを目的の地に導いてくれるでしょう』

「はっ! ははぁーっ!」

 デニスは始祖サリアのお告げにひれ伏した。

 素直な子は話が早くて助かる。


『よいですね? 日の光が裂け目の影を消すまでに入るのですよ!』

「ははーっ!」

 ほぼ、五体投地状態でひれ伏すデニス。


『ゆめゆめ疑う事無かれ――』

 サリアの幻影はフェードアウトしていった。




 翌朝、日の出前の薄明かりの中、デニスはみんなより早く起きて食事の用意をしていた。


「さあ! みんな起きて起きて! ご飯をいっぱい食べたら出発よ!」

 ゴドン、デオナ、ジム。みな眠い目を擦り、何事かとデニスの元気な顔を見上げるのであった。


 残り1日。ランバルトまで、あと10日の距離である。



「巨神レム。準備は良いか?」

 声が指名したのはレムだった。


次話「魔宮の回廊」

毒竜さんが使ったとされる魔宮の回廊。ネタではなかったのか!


お楽しみに!


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