ライターの扱いには注意を払いましょう
この小説は決して、喫煙を推奨したり、タバコに関連する法案などを批判するものではないとあらかじめここに記載しておきます。
喫煙は喫煙者の健康、被喫煙者の健康に影響し、肺がんなどの原因の一つとなることがあります。
喫煙者はマナーを守って周囲の人の迷惑にならないように心がけ、自身の健康を損なわない程度の喫煙量に抑えましょう。
喫煙室、そこは追いやられた者達の最後の砦。辛うじて残された安住の地だ。
「ふぅー」
今日もそこで煙を吸い、吐き出す。
何のためにこんなことをしているのかと問われても、なんとなく、でしかない。
それに理由をつければ、ニコチン中毒になった体がニコチンを欲して煙草に火をつけさせている、のは言うまでも無い。だがそこに明確な”吸う意思”みたいなのがあるのかと言われるとそうでもない。惰性・・・という言葉が最もしっくりくるだろう。
ドアが開き、髪型がオールバックの20代半ばの男が緑色のパッケージの煙草を片手に喫煙室に入ってきた。
「おー、前田。今日もお疲れ」
「お、一之瀬か。お疲れ―」
オールバックの髪型の一之瀬と呼ばれた男はジッポライターで煙草に火をつけ、上に向けて煙を吐く。
「あぁ~」
「気の抜けた声だなぁ。見た目はともかく精神的に大分老けてきてるんじゃねーか?」
そう言いながら、前田は2本目の煙草にコンビニで売っているターボライターで火をつけた。
「仕事が終わってようやく一服つけるんだ。そんな声も出るさ。そういや前から思ってたんだが、前田っていつも使い捨てのターボライターだよな」
「まーな」
「お前この前の飲み会で、昔シルバーアクセとか集めてたって言ってたからこういうのは好きなんじゃないのか?」
「いや、まあ、ちゃんとしたライターも持ってはいたけどな」
「じゃあなんで使わないんだ?」
「……昔ライターのオイル入れ替えた時に、手に少しオイルがついたままで着火しちゃってな」
「…え」
「手に思いっきり火がついてパニック状態になってさぁ。知ってるか?あれって少々息を吹きかけたり、手を振り回したくらいじゃ消えないんだぜ?」
「うわぁ、それは焦るかもなぁ」
「その後咄嗟に水道で洗い流したのはよかったんだが、手に火がついた時にライター落としちまって、カーペットが軽く燃えてもう散々だったよ」
「それがトラウマになったから使ってないわけか…」
「まぁそれももちろんあるが、俺はターボライターが使いやすくて好きなんだよ。外で使う時でも風で火が消えたりしないしな」
「別に風が強くてもジッポライターとかでも火は消えないだろ?」
「それでもやっぱり火が風に揺れて煙草に火を付けにくかったりするじゃん?それに使い捨てのターボライターなら無くしたりしてもダメージ少ねーし」
「……つまりアレだな。おっちょこちょいだから使い捨てのターボライター使ってるんだな」
「うわぁ~、さっきの話の後だと否定できねーな」
「頼むから仕事でそのおっちょこちょいを発揮しないでくれよな」




