赤い影
時にグロ等含みます。それほど激しくはありませんが、苦手な方は見ないほうが懸命です。
少女が言った。
目の赤い、かわいらしい服を着た、
人形のような少女が。
「その水を、のんでは、ダメ。」
一言一言区切りをつけて、ゆっくりと。
少女はとても苦しそうだった。
「どうして駄目なんだい?」
問い返すと、赤い目の少女は悲しそうに言った。
「理由は、言えないの。」
少女は息をするのが辛そうだった。
「こんなに綺麗な水なのに?」
俺は問いた。
だって、その水があまりにも綺麗で、
おいしそうで、飲みたかったから。
頭上に浮かぶ夜空は綺麗な藍色で、
星たちはキラキラと輝いていて、
浮かぶ満月はまんまるでとても綺麗だったから。
その水には綺麗な満月と月が写りこんでいて、
また、夜空も写りこみ、綺麗な藍色だった。
「見えないの?気づかないの?」
「だから、どうして駄目なんだよ。」
少女はじれったそうに言う。
「知らないよ?後悔してもしらないよ?
助かり、たいのなら、その水を、諦めて、どこかへ行って。」
その少女の言い方に少々むかついた。
だって、まるでこの水を自分の所有物みたいに言うから。
「私、今、とってもお腹がすいているのよ。」
話がつながらない。少女は何を言いたいんだ。
「意味が分からないな、俺は飲むぞ。」
俺は手にひとすくい水をすくって、
ゆっくりと口に含んだ。
甘い甘い水だった。
でも・・水とは違う、不思議な味がした。
「なんだ・・コレは・・。」
あたりを光が照らした。
少女の口が三日月のように曲がる。
「だから言ったのに。
まだ気づかないの?まだ気づかないの?
その水赤いよぉ。」
「え・・・・・?」
水を見た。赤かった。
・・・・・・・・この味は・・血だ・・・・。
「やぁっと気づいた。
本当は食べたくなかったんだけどなぁ・・・。
あなた、若くてまだ綺麗だし。
でもその水飲んじゃったし・・・。
忠告したのに、おろかだねぇ。」
少女はもうさっきのような口調ではない。
「それに、私お腹空いてるんだぁ。」
少女の影が広がった。
少女の影は赤かった。
目の前が赤くなった。
陰が目の前に広がった。
俺が世の中で最後に見たのは、
綺麗な綺麗な三日月と、赤い星たちだった。
綺麗な綺麗な満月の日に、
少女に会ったら急いで家に戻っておいで。
じゃないと、少女に食べられちゃうよ。
影にのまれちゃうよ。
END