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先輩、コロシです!ver.3 交通課編  作者: 双鶴


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9/11

第9話『先輩、俺…この仕事向いてないです』

その日の事故は、相馬にとって“心を折る一撃”だった。


夜の雨。

視界の悪い交差点。

車とバイクの接触事故。


バイクの男性は意識があり、命に別状はない。

だが、血の匂いと雨の音が混ざり合い、現場は重かった。


相馬は震える声で言った。


相馬「先輩……俺……ちょっと……無理かもしれません……」


先輩「無理か」


相馬「即答しないでください!!」


先輩は淡々とバイクの位置を確認しながら言う。


先輩「無理だと思うのは普通だ。

新人はみんな一度は折れる」


相馬「折れたくなかったです……

俺、白バイに乗りたくて……

かっこいい警察官になりたくて……

でも、現場って……こんなに……」


先輩「重いぞ」


相馬「また即答!!」


相馬は雨の中で膝に手をつき、うつむいた。


相馬「俺……向いてないですよね……

怖いし、焦るし、泣きそうになるし……

白バイなんて、夢のまた夢で……」


先輩は相馬の横にしゃがみ、静かに言った。


先輩「相馬。

向いてるかどうかなんて、どうでもいい」


相馬「どうでもよくないです!!」


先輩「向いてる奴なんていない。

“必要とされるかどうか”だけだ」


相馬は顔を上げた。


相馬「……必要……?」


先輩「お前、今日もちゃんと怖がった。

怖がるってことは、命を軽く見てないってことだ。

それだけで十分だ」


相馬「……でも俺、全然落ち着けないし……

先輩みたいに冷静じゃないし……」


先輩「俺だって昔は震えてた。

今でも震えることがある」


相馬「えっ、先輩が……?」


先輩「当たり前だ。

震えなくなったら終わりだ」


相馬は息を呑んだ。


先輩「相馬。

お前は“怖い”と言える。

“無理だ”と言える。

それは強さだ」


相馬「強さ……?」


先輩「強がる奴より、よっぽど強い」


相馬の目に、雨とは違う涙がにじんだ。


相馬「……先輩。

俺、本当に……この仕事、続けられますかね……」


先輩「続けられるさ。

お前は、ちゃんと“人の痛み”が見えてる」


相馬「……」


先輩「白バイに乗りたいなら、なおさらだ。

白バイは“人の人生の分岐点”に一番早く着く。

そこで震えずに立てる奴なんていない」


相馬はゆっくりと立ち上がった。


相馬「……先輩。

俺……まだ怖いですけど……

でも、逃げたくないです」


先輩「それでいい」


相馬「俺……もう少しだけ……頑張ってみます」


先輩は小さくうなずいた。


先輩「よし。

じゃあまず、三角コーン置け」


相馬「またそこからですか!!」


先輩「全部そこからだ」


相馬は雨の中、三角コーンを握りしめた。


白バイへの憧れは消えない。

だが、今日またひとつ――

**“向き不向きより、必要とされるかどうか”**

という現実が胸に刻まれた。


こうして相馬の9日目は、

挫折と向き合いながらも、

確かな成長の一歩となった。


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