第7話『先輩、加害者も被害者も泣いてます!』
その日の事故は、相馬にとって“初めての重さ”だった。
交差点での接触事故。
車は軽傷。
だが――
被害者は泣いていた。
加害者も泣いていた。
相馬はパニックになった。
相馬「先輩!!
加害者も被害者も泣いてます!!
どうしたらいいんですか!!」
先輩「落ち着け」
相馬「落ち着けるわけないでしょう!!
二人とも泣いてるんですよ!?
俺、どっちを慰めればいいんですか!?」
先輩「両方だ」
相馬「両方!?
俺、そんな器用じゃないです!!」
先輩は淡々と現場を確認しながら言う。
先輩「事故は“誰も幸せにならない”んだ。
加害者も被害者も、どっちも傷つく」
相馬「……そんなの、やるせなさすぎません?」
先輩「やるせないぞ」
相馬「即答!!」
被害者の女性が震える声で言う。
被害者「怖かったんです……本当に……」
相馬は慌てて駆け寄る。
相馬「だ、大丈夫です!救急車も呼んでますし、
順番に確認しますから!」
加害者の男性も泣きながら言う。
加害者「俺だって……避けたかったんだ……!
でも、気づいたら……!」
相馬はさらに混乱する。
相馬「先輩!!
こっちも泣いてます!!
俺、どうしたら!!」
先輩「泣かせておけ」
相馬「えっ!?」
先輩「涙は“心の整理”だ。
止めるな。
ただ、寄り添え」
相馬は息を呑んだ。
相馬「……寄り添う……」
先輩「事故は“悪”じゃない。
だが、“責任”は生まれる。
その責任の重さに、人は泣くんだ」
相馬「……深い」
先輩「深くない。事実だ」
相馬は二人の間に立ち、深呼吸した。
相馬「……大丈夫です。
順番に、全部説明します。
一緒に整理していきましょう」
被害者は少し落ち着き、加害者も涙を拭った。
先輩は小さくうなずく。
先輩「相馬。
お前、いい声してるな」
相馬「えっ、声ですか?」
先輩「落ち着く声だ。
現場では、それが一番効く」
相馬「……先輩、それ……褒めてます?」
先輩「寝不足じゃないから本気だ」
相馬「今日の先輩、素直すぎません!?」
先輩は続ける。
先輩「白バイに乗りたいなら覚えておけ。
事故現場で一番必要なのは、
スピードでも技術でもなく――
“人の心を落ち着かせる力”だ」
相馬は胸を打たれた。
相馬「……先輩。
俺、白バイに乗りたい気持ちは変わらないけど……
こういう“人の心”に触れる仕事も、悪くないですね」
先輩「悪くないどころか、
それが“警察官の本質”だ」
相馬はゆっくりとうなずいた。
白バイへの憧れは消えない。
だが、今日またひとつ――
**“事故は人の心を揺らす。だからこそ寄り添う”**
という現実が胸に刻まれた。
こうして相馬の7日目は、
涙と責任と優しさに満ちた、
確かな成長の一歩となった。




