第6話『先輩、現場検証って鑑識の仕事じゃ?』
その日の事故は、少し様子が違っていた。
車同士の衝突。
ブレーキ痕。
破片の散乱。
そして――
先輩「……鑑識呼ぶか」
相馬「えっ、鑑識!?
鑑識って、あの“白いスーツのプロ集団”ですよね!?
俺、警察学校で動画見ました!!」
先輩「落ち着け。
お前が思ってるほど派手じゃない」
相馬「派手じゃないんですか!?」
先輩「地味だ」
相馬「地味なんですか!?」
先輩「地味だ」
相馬「二回言いましたね!?」
先輩は無線で鑑識を呼ぶと、数分後――
白いワゴン車が到着した。
降りてきたのは、無表情で淡々とした男。
白い手袋。
無駄のない動き。
そして、どこか“悟り”を開いたような雰囲気。
相馬は思わずつぶやいた。
相馬「……先輩。
なんか、あの人……“プロの地味”って感じがします」
先輩「お前、よくわかってるじゃないか」
相馬「褒められました!?」
先輩「寝不足じゃないから本気だ」
相馬「今日は寝たんですね!!」
鑑識の男が近づいてきた。
鑑識「久しぶりだな、交通課の哲学者」
先輩「お前も相変わらずだな、地味の化身」
相馬「え、先輩、知り合いなんですか?」
先輩「昔、一緒に現場を回ってた」
鑑識「お前が新人か?」
相馬「は、はい!相馬隼人です!」
鑑識は相馬をじっと見つめた。
鑑識「……白バイ志望だな?」
相馬「なんでわかったんですか!?」
鑑識「顔に書いてある」
相馬「そんなにわかりやすいですか俺!?」
先輩「お前は“夢が顔に出るタイプ”だ」
相馬「褒めてます!?」
先輩「寝不足じゃないから本気だ」
相馬「今日の先輩、素直すぎません!?」
鑑識は現場を淡々と調べ始めた。
破片の位置、タイヤ痕、車体の角度――
そのすべてを、まるで“読む”ように確認していく。
相馬は感動していた。
相馬「すごい……
なんか、現場が“言葉”みたいに見えてる……」
先輩「鑑識は“痕跡の通訳者”だ」
相馬「名言出た!!」
先輩「名言じゃない。事実だ」
鑑識が静かに言う。
鑑識「……原因は、こっちの車の“わき見”だな」
相馬「えっ、なんでわかるんですか!?」
鑑識「ブレーキ痕が遅い。
視線が外れていたときの反応だ」
相馬「視線までわかるんですか!?」
鑑識「痕跡は嘘をつかない」
相馬「かっこいい!!」
先輩「お前、すぐ感動するな」
相馬「だって、鑑識って……
なんか“静かなヒーロー”って感じがして……!」
鑑識「ヒーローじゃない。
ただの地味な仕事だ」
相馬「地味って言わないでください!!」
鑑識は淡々と続ける。
鑑識「だが、地味な仕事ほど“真実”に近い」
相馬は息を呑んだ。
相馬「……先輩。
俺、白バイに乗りたいけど……
こういう“地味なプロ”も、すごく尊敬します」
先輩「尊敬するだけじゃなく、学べ。
白バイはスピードのプロだが、
事故処理は“人間のプロ”だ。
鑑識は“痕跡のプロ”だ。
全部つながってる」
相馬「……全部、つながってる……」
鑑識は片付けを終えると、相馬に言った。
鑑識「お前、悪くない目をしてる。
地味な現場をちゃんと見てる目だ」
相馬「ほ、本当ですか!?」
鑑識「白バイに乗りたいなら、
まず“地味”を理解しろ」
相馬「地味……!」
先輩「地味は強いぞ」
相馬「地味の説得力がすごい!!」
白バイへの憧れは消えない。
だが、今日またひとつ――
**“地味の中に真実がある”**
という現実が胸に刻まれた。
こうして相馬の6日目は、
鑑識との出会いによって、
さらに深い“現場の世界”へ踏み込む一歩となった。




